【レポート】和楽器バンド、唯一無二
の“和ロック”ショー

和楽器バンドが7月21日(金)、東京国際フォーラム ホールAにて<和楽器バンド HALL TOUR 2017 四季ノ彩>ファイナル公演を行った。
3月に発売されたアルバム『四季彩-shikisai-』を掲げて全国18カ所で開催された本ツアーは、初のホールツアーにも関わらず全会場ソールドアウトの快挙。ツアー中もっとも広い会場となるファイナルの東京国際フォーラム ホールAにも5000人のファンが詰めかけた。
和楽器バンドを漢字一文字で表すなら“彩”の言葉が合うと思う。それは、艶やかな和装姿の8人がそれぞれの個性で和楽器と洋楽器の音色を融合させ、楽曲を華やかに彩るからだ。その“彩”の字がタイトルに入ったアルバム『四季彩-shikisai-』を、鈴華ゆう子(Vo)は「より個性が出た色彩豊かな1枚。アルバムを通して日本の美しい四季と共に移り変わる、個性豊かな楽曲たちの物語を感じてもらいたい」と表現している。その言葉通り、このアルバムを掲げて行われた本ツアーのファイナル公演も和楽器バンドにしかない表現できない豊かな色彩の一夜となった。
ライブはいぶくろ聖志(箏)が奏でる箏の音が美しい、「鳥のように」からスタート。ホール全体に詩吟で鍛えられたのびやかな鈴華ゆう子のボーカルが響き渡り、一気に和楽器バンドの世界へ引きずり込まれる。和楽器バンドはギター、ベース、ドラムという洋楽器に加え、箏、尺八、津軽三味線、和太鼓という日本の伝統楽器も含まれた構成のバンドだが、ただ和風な曲を演しているだけではない。その証拠に「鳥のように」から一転、続けて披露された「浮世heavy life」「Howling」では激しいバンドサウンドを展開する。
「いよいよツアーファイナル、みんな来てくれてありがとう。ここから見える景色、圧巻ですね。1年半ぶりに全国を渡り歩いてきまして、あっという間の3ヶ月でした」という鈴華ゆう子のMCに、ファンは大きな声で応える。和楽器バンドには老若男女のファンがいること、海外から見に来るファンが多いことも特徴。中国出身の山葵(Dr)が中国語でファンに声をかけるとすぐさま「我愛你(中国語で“愛してる”の意)」と返答がくるなど、世界を視野に活動している和楽器バンドらしい場面も。
ライブ中盤では和楽器バンドではお馴染みのセッションが行われる。「遠野物語五五」では町屋(G)が高度なテクニックを持って哭くようなフレーズを優雅に奏でたと思うと、いぶくろ聖志が箏をまるでギターのように手に持ち町屋のギターに音を重ねていく。箏の意外な弾き方に、和楽器の可能性を感じさせるワンシーンだ。続いて亜沙(B)、山葵、能面をつけた町屋の3人が「知恵の果実」を、黒流(和太鼓)、蜷川べに(津軽三味線)、神永大輔(尺八)の3人が「什麼生説破」を披露。各々の楽器の魅力を最大限に魅せた。
再び8人がステージに揃って情感たっぷりに「MOON SHINE」など3曲が演奏されたあとは、ファンクラブ会員から寄せられた「結成時と印象が変わったメンバーは?」という質問に答えるトークコーナー。1人ずつ回答を述べ、複数メンバーに“最初は怖かった”と言われた町屋と蜷川べには苦笑。蜷川べには人見知りだっただけ、町屋は今ではメンバーに“親しみやすい田舎のおじさん”と呼ばれるほどに印象が変わったなど、出会ったころの思い出を軸にメンバーの仲睦まじいトークが行われた。なお、毎回ライブごとに筋骨隆々の背中に描かれた墨書きの文字を披露する山葵は、この日「楽しかった」という言葉を書いていた。
「明日のことは忘れて、盛り上がっていこうぜ」という鈴華ゆう子の声から始まった後半戦では、一発目に「千本桜」を披露。彼らを有名にした一曲だけあって、ファンとの間に今日一番の盛り上がりが生まれる。一方、アルバム表題曲の「オキノタユウ」では聴いているうちに本当に鳥になって空を浮遊しているような気持ちになるほどの、見事な情景が目の前に広がった。
和楽器とバンドを組みあわせる彼らのスタイルは、目新しさから多くの人に注目されている。だが、日本の伝統である和楽器を取り入れることについては賛否両論もあると言う。黒流は「僕たちが和楽器とバンドを組み合わせて良くないものを生み出してしまうと、次世代の音楽奏者にとても悪い影響を与える。でも大きなステージに行くことができたら確実に次の世代への道を作れる。」と、自分たちの活動に大きな責任があることを述べる。世界的にも日本の伝統文化が注目されている今、彼らは覚悟のステージに挑んでいるのだ。黒流がファンに誓った「世界から日本がどうみられるか、そういう使命を持って活動していきます。」という言葉にも、強い意志が現れている。
黒流と山葵によるファン参加型の打楽器セッション「打撃叫宴」を挟み、ラスト三曲は未来を想像させるような明るい楽曲が披露され、「流星」でライブ本編が締めくくられた。メンバーが幕間に消えるとすぐにファンから「暁ノ糸」の大合唱。和楽器バンドのライブではお馴染みの、アンコールの光景だ。再びステージに現れたメンバーを代表して、鈴華ゆう子は応援してくれるファンに感謝を述べる。続けて「田舎育ちの普通の女の子だった自分が、神話を信じて伝説を夢見て歌って来て、このステージにみなさんのおかげで立たせてもらった…そんな思いを曲にしました」と、新曲「雨のち感情論」を初披露。和楽器バンドらしい美しいメロディに明日を夢見る前向きな思いがのった、明るいナンバーだ。このサプライズにファンからは大きな歓声が上がる。
そしてアンコールラストは「CLEAN」。 “ありがとう、ついてきてくれて ありがとう、側にいてくれて ありがとう、本当に、本当にありがとう”という歌詞には、今日ホールツアー<和楽器バンド HALL TOUR 2017 四季ノ彩>を完遂できた彼らの気持ちがすべて込められている。ファンもその思いをしかと受け止め、全22曲、約2時間30分に渡るツアーファイナル公演が終了した。和楽器ならではの古風で美しい楽曲、洋楽器陣の激しいロックサウンド、楽器ひとつひとつの魅力を伝えてくれるセッション、この一夜だけで様々に彩られた景色を見せてくれた和楽器バンド。このライブは絶対的に和楽器バンドにしかできないもの。今日また彼らが“和楽器バンド”という唯一無二の存在であることを実感させられた。
和楽器バンドは9月6日(水)にこの日初披露された「雨のち感情論」をシングルリリース。そして今夏には平安神宮での単独奉納ライブ2daysやフェスへの出演が決まっており、来年2018年1月27日(土)には毎年恒例の<和楽器バンド 大新年会>ライブを横浜アリーナで行うことも決定している。
取材・文◎Yoko Hattori(BARKS)
セットリスト
1.鳥のように
2.浮世heavy life
3.Howling
4.雪よ舞い散れ其方に向けて
5.蛍火
6.遠野物語五五
7.知恵の果実
8.什麼生説破
9.MOON SHINE
10.戦 -ikusa-
11.望月
12.千本桜
13.ワタシ・至上主義
14.ミ・ラ・イ
15.オキノタユウ
16.打撃叫宴
17.起死回生
18.空の極みへ
19.流星
en
1.雨のち感情論
2.暁ノ糸
3.CLEAN
<和楽器バンド 平安神宮単独奉納ライブ in 和楽器サミット2017>
【日程】
2017年8月5日(土)
2017年8月6日(日)
【時間】
開場18:30(予定)/開演19:00(予定) ※両公演共通
【会場】
京都 平安神宮 〒606-8341 京都府京都市左京区岡崎西天王町
【チケット料金】
6,800円(税込)
■チケット
チケットぴあ:http://w.pia.jp/t/wagakkisummit/ 
イープラス:http://eplus.jp/wagakkiband
ローソンチケット:http://l-tike.com/ (Lコード52377)
楽天チケット:http://r-t.jp/wagakki-s
[電話受付] ※2017年7月15日(土) 18:00~
チケットぴあ:0570-02-9999(Pコード337-349)
ローソンチケット:0570-084-005(Lコード52377)
【公演に関するお問い合わせ】
キョードーインフォメーション 0570-200-888 (10:00~18:00)

1st Single「雨のち感情論」

2017年9月6日(水)発売
■CD+DVD(MUSIC VIDEO盤)
「雨のち感情論」のMUSIC VIDEOとメイキング映像を収録
■CD+DVD(LIVE映像盤)
今年の4月から7月にかけて開催された全国ホールツアーの最終公演、2017年7月21日の東京国際フォーラム公演より、「雨のち感情論」と「ワタシ・至上主義」のライブ映像を収録
■CD ONLY
ぱちんこ「CR吉宗4 天昇飛躍の極」テーマ曲として話題沸騰中の「そこにあるかもしれない(和楽器バンドversion)」を収録
■CD+VR(mu-moショップ・FC八重流専売数量限定盤)
和楽器バントとしては初となるVR盤。ビューアー(専用メガネ)を用いてスマートフォンアプリで楽しめる、バーチャルリアリティ映像コンテンツを収録

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