古田新太+小池徹平+河原雅彦が新生『
ロッキー・ホラー・ショー』を語り合
った~ 「なんでもあり」の開放感。

カルト・ミュージカルの傑作として、熱く支持されるロック・ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』。いのうえひでのり演出、古田新太主演による2011年版が記憶に新しいが、今年、演出のバトンを渡されたのが河原雅彦。河原と、前回同様フランク・フルター役の古田、新たにキャストとして加わった小池徹平が、作品への思いを語り合った。

--今回、演出が河原さんになった経緯は?
河原 いのうえひでのりさんからご指名いただきました。
古田 前回はいのうえさんがピクチャーショー(映画)寄りに作ったから、違う形でやるならリーダー(河原)がいいんじゃない?という話になって。
河原 お話をいただいた時は、いのうえさんと古田さんの完璧な『ロッキー~』を見ていますから、どうしたらいいんだろうなぁと思いました。でも好きな作品ですから、ワクワクが勝りましたね。最高のおもちゃだ!と。
--今の演出の構想をお聞かせください。
河原 僕、『ロッキー~』はお客さんが育てた作品だと思うんです。作り手が意図していないところで、水鉄砲で雨を降らせたり、新聞紙を傘の代わりにしたり、結婚式の場面ではお米を投げたりと、お客さんが楽しみ方をどんどん発展させていった。僕にとっての『ロッキー~』はそういうものなので、何かお客さんが参加できる形にしたいと考えています。
古田 前回はピクチャーショーへのオマージュだったんだけど、舞台だからある程度は決めておかないといけない。最後、プールに飛び込みたいと言ったけど、ダメでした。
河原 椅子がシミになるから水は難しい。米粒は小さいから機構に挟まっちゃうとか、ハードルはありますよね。でも、それに近いことは考えていきたいと思います。
古田 昔、小劇場でやっている時、二本立てで、昼間は少年王者舘、夜は劇団☆新感線。すると、少年王者館が撒いた米が舞台の隙間に挟まっていて、おいらたちの仕込みはそれをとる作業だった(笑)。
古田新太 (撮影=中田智章)
河原 でも、やりたいですよね。日常と違う世界への参加感が新たな楽しみを提示できると思います。そもそも今回は、パーティのりの人たちを集めようとしたら、自然といびつな人だらけになっていて。今、両脇にいる方々(古田と小池)は、確かな人たちです(笑)。確かな人たちがいてくれるから、いびつな人たちを集めてやっちゃえ!というところが、今回のオリジナリティや色になるのかな。癖が強くて、稽古場で苦労しそうですけど(笑)、作品が強烈ですからね。誰よりもバカにならないとダメな作品なので、みんな真面目にバカになってくれるはず。またこういう演目は、歌のクオリティは高い方がより面白くわかりやすくなるので、その意味でも良い作品になるメンツに集まってもらえて嬉しいです。
--小池さんは初参加ですが、『ロッキー~』は見たことがありますか。
小池 舞台は見ていなくて、最初見たのが映画。映像では海外の舞台を見ました。キャスティングしていただいた理由が一瞬わからなかったです(笑)。僕にはないイメージで。
古田 そう? おいら、かなり前から「徹平がいい」って言ってたよ。ナイーヴに見えるところが(笑)。中身が本当にナイーヴならできないけど。
小池 嬉しいです。ナイーヴに見せることはできます! でも、僕、本当にこの作品を好きだと思ったんですよ。ホラーって書いてあるけど、エンターテインメント感が強くて。河原さんがおっしゃるように、お客さんが作っていく作品というのは、すごくわかる気がします。踊ったり、歓声をあげたり、一体感があるところも好き。世界観がテーマパークみたいで、お客さんのリアクションがすごく楽しい。僕、なぜ前回の公演を見なかったんだろうと後悔しました。だから今回の出演をめちゃくちゃ楽しみにしていて。結構前にお話いただいてから、ずっとそわそわしていました。待ちに待って、ようやく始まるんだなぁと。
小池徹平 (撮影=中田智章)
古田 『ロッキー~』はホラーでもSFでもないから。サイエンスフィクションと銘打っているけど、全然違う。
小池 ストーリーがよくわからないし、頭に入ってこないですよね。
河原 忘年会みたいだよね(笑)。日本人のお客さんがどう反応するのか、ちょっと不安もあるかな。
古田 前回、都心部はコスプレーヤーのお客様も多かった。コスプレしてきたら、100円キャッシュバックとか、いいんじゃない?
河原 それ、できたらいいですよね。ほんの100円だけど(笑)。
河原雅彦 (撮影=中田智章)
--古田さんと小池さん、舞台でのご共演は?
小池 舞台での共演は初めてです。
古田 でも徹平の舞台はかなり見ているから。
小池 ありがたいですね。まずは古田さんと一緒にできる時間を大事にしたいです。
古田 最近、おいら“名人”って呼ばれるようになって。
河原 結構前から名人の域って思っていたよ。
古田 これまでは貪欲に笑いをとってきたんだけど、最近、拍手をもらうことが多いの(笑)。面白いことやっている時に、パチパチパチ! もしかしたらおいらが舞台で寝ても、みんな拍手するんじゃないか。『髑髏城の七人』“Season花”の贋鉄斎のシーンも出て来るだけで拍手がもらえて。
河原 みんな名人が持っていっちゃうから。その前にめちゃめちゃカッコつけて、一生懸命立ち回りをやっている人たちがいるのに、名人が出てくるとウワァーって湧いて、どうかなぁと思いますよ。
古田 ネットが荒れてますよ。古田邪魔(笑)。
小池 ほんとずるいですよ。でも今回、古田さんが真ん中ですし、思う存分持っていっていただけたら。
古田 『ロッキー~』は約1時間45分とすごく短い。その分、忙しいし、場面も短くて、おいらの理想なの。すごい密度が高いから、いい汗がかけるよ。
小池 最高ですね。
(左から)小池徹平、河原雅彦、古田新太 (撮影=中田智章)
--古田さんはフランク・フルター役でも名人の域に達するのでしょうか。
古田 いやいや、あそこまで自己愛には浸れないなぁ。
河原 結構喋っていますしね。
古田 役としては楽しいですよ。ただのエゴの強い人だけど、舞台上で問答無用に振る舞える役は珍しい。問答無用で振る舞う人はいるけど、振る舞える役というのはそんなにないから、面白いです。おいらは本来、オリジナルでこういう作品を作りたいと思っていて。歌ったり踊ったり、みんなでワーワー言うバカみたいなお芝居作りを目指しているのね。だから『ロッキー~』をやると、原点回帰じゃないけど「やっぱ正しいわ、これ!」ってなる。こういうのを作るには、よっぽどクレイジーじゃないと無理なんだろうなぁ、リチャード・オブライエンってバカなんだろうなぁ、とも。
河原 わかります!『ロッキー~』は僕の性格に合っているというか、劇場で見たい作品そのものなんですよ。見世物小屋的な、客席に入った途端ワクワクできる劇場体験が好きだし、それがしたくて劇場やライブハウスに通っていた。その意味では、初期衝動に非常に近い性質の作品ですね。
古田 初めて知ったのが40年前と、もはや古典なのにね。
河原 時代を越えて、じわじわ広がってきたでしょ。何か根元に訴えるものがあるんでしょうね。どの時代もバカは絶えない、見る方もやる方もはしゃぎたい。
小池 今の時代の若者も、みんなそうだと思いますよ。
河原 コンプライアンス全盛の時代に「こんなのやっていいんだ!」って、自分を開放してもらえたら。若い人たちにどう映るのかわからないけど、いろんな楽しみ方をしてもらえたら嬉しいです。
(左から)小池徹平、河原雅彦、古田新太 (撮影=中田智章)
取材・文=三浦真紀  写真撮影=中田智章
公演情報

ロッキー・ホラー・ショー
■会場:Zeppブルーシアター六本木(東京)、サンシャイン劇場(東京)、北九州芸術劇場 大ホール(北九州)、仙台サンプラザホール(仙台)、まつもと市民芸術館 主ホール(松本)、森ノ宮ピロティホール(大阪)
■日程:11/7(火)~11/12(土) 東京・Zeppブルーシアター六本木、11/16(木)~12/3日(日) 東京・サンシャイン劇場、12/9(土)・10(日) 北九州、12/16(土)・17(日) 仙台、12/23(土)・24(日) 松本、12/29(金)~31日(日) 大阪

■脚本・作詞・作曲:リチャード・オブライエン
■演出:河原雅彦
■翻訳:高橋ヨシキ
■訳詞・音楽監督:ROLLY
■振付:牧宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)
■出演:
古田新太 / 小池徹平、ISSAソニン / 上木彩矢、アヴちゃん(女王蜂)、吉田メタル、東京ゲゲゲイ(BOW、MARIE、YUYU、MIKU) / ROLLY、武田真治 ほか

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着