【インタビュー】上白石萌音、『and
...』が生む繋がりの数々「曲が届く
度に感動しきりでした」

女優として活躍する傍ら、2016年に歌手デビューした上白石萌音が7月12日に初のオリジナルアルバム『and...』をリリースした。秦 基博世武裕子藤原さくら、名嘉 俊(HY) 、内澤崇仁(androp) など錚々たるアーティスト陣から提供された珠玉の8曲は、“演じるように歌う”とされる彼女の様々な表情を照らしている。初めて“自分の曲”を手にした彼女は、それらとどう向き合ったのか。
■音楽の現場に行くとワクワクします。
──前作『chouchou』を取材させて頂いた時に、「小さい頃から常に歌っていて、歌が私の原点なんです」とおっしゃっていましたが、歌手としての活動を始めてから歌に対する気持ちの変化みたいなものはありましたか?
上白石萌音(以下、上白石):あります。ただ好きなだけじゃダメなんだって。『舞妓はレディ』で初めて人前で歌って色々な人に聴いてもらった時から、「ちゃんと聴いてもらえる歌にしないといけないな」「趣味で終わらせちゃいけないんだな」っていうことを凄く思っていて、それが歌手デビューしてからはさらに強まりました。その気持ちが先走っちゃって、「上手く歌わなきゃ」とか「音を外しちゃいけない」とか、ちょっと神経質になっていた時期もあったんです。でもその時に、結局一番大事なのは歌が好きで好きでしょうがなかった小さい時の気持ちで、それは今の自分の中になくてはならないものだから、仕事になろうが誰の前で歌おうが失くしてはいけないと思ったんです。だから今は、歌を楽しんで「好きなんです」って思いだけで歌うためにも、色々ストイックな練習も必要なんだって考えるようになりました。
──歌うことが大好きな上白石さんでもそんな時期があったんですね。
上白石:はい。その時は辛かったですね。お家で歌う時にもいろんなことを気にしちゃったり、本番みたいな気持ちになって歌いたくないって思ったりとか。その間は私の人生の中で異質な時間でした。私じゃない時間(笑)。でもそういう時期があったおかげで、歌がさらに好きになりました。
──ワンマンライブや大きなフェスでのステージも経験されましたが、そこでの刺激みたいなものはありました?
上白石:レコーディングで繊細な所まで突き詰めて作るっていうことも楽しくて大好きなんですけど、やっぱり生ものって楽しいなって(笑)。ライブに来て聴いてくださった方のリアクションに何かをもらって、さらに「よし、もっと行こう」って気持ちになったりとかするんですよ。なので、ステージを経験するごとに緊張は増しています。歌い始めると大丈夫なんですけど、歌うまでの緊張が日に日に大きくなっていて、ライブの時は早く歌い始めたいって思いますね。
──昨年末(2016年)の<COUNTDOWN JAPAN>のステージとかはどうでした?
上白石:あの空間は他のアーティストさんを見に来て「ちょっと見てみるか」って方が多かったと思うんです。だから「どうしよう」って凄く緊張してしまいました。でもステージに上がっちゃうとやっぱり楽しいんですよね。
──逆に全然知らないお客さんに歌う楽しさみたいなのはなかったですか?
上白石:会場がどんどんあたたまって、見ている方がどんどん入り込んで来てくださっているのも伝わって来たので、快感でしたね(笑)。一息一息ごとに距離が縮まるような気もしました。
▲『and...』ジャケット
──音楽活動を始めたことで、女優の時とは違った出会いも沢山あったみたいですが。
上白石:はい。お芝居の作品は2、3か月時間を共にしてちょっとずつ人間関係を築いていって、撮り終わった所で「さようなら」って感じなんですけど、音楽の現場ってイベントや収録でその日に「初めまして」をして、終わって「じゃあまた」っていう一日単位の出会いが多いので、出会いが一気に広がる世界なんだなって思いましたね。大好きなアーティストさんが目の前で歌っていたり、私の歌を聴いて話しかけてくださったり「これは夢かな?」と思う瞬間がいっぱいあって、今回アルバムで曲を共作してくださったさくらちゃん(藤原さくら)も音楽番組やCOUNTDOWN JAPANで同じ日だったりとか、女優として出会った時とは違う質感があって、音楽の現場に行くとワクワクします。
■人前で歌ったら「これは自分の曲なんだな」って感じがして、
■そこで一つ自由になった気がしました。
──藤原さんの名前が出たので、彼女が提供した曲に上白石さんが書いた詞をのせた楽曲「きみに」からアルバム『and...』の話を始めましょうか。
上白石:さくらちゃんとは年末に仲良くなって、二人でご飯に行った時なんかに曲作りの話とかもしていて、私は彼女の曲が大好きだから、いつかは一緒に曲が作れたら楽しそうだなって思っていたんです。そうしたらそのことを言えない私の気持ちをマネージャーさんが代弁してくれたみたいで(笑)。さくらちゃんも快く「はい」って言ってくれて、楽曲提供っていうのは初めてだったらしいんですけど、その後すぐに「ラララ」で歌ったデモを作ってくれたんです。弾き語りで全然色の違う4曲が入っていて、「どれか選んでください」って。
──4曲から選ぶって凄く贅沢な話ですね。
上白石:本当に! 歌詞はデモを聴いてすぐ電話した時にさくらちゃんが、今まで私が歌った曲を聴いたり、私のことを思ったらいっぱい曲が出来たよって凄く嬉しいことを言ってくれたので、今度は私が彼女に向けて書こうと思ってお返事の手紙を書くみたいな感覚でつけたんですけど、本人に向けたものだから、出来上がったものを自分からさくらちゃんに送る時に恥ずかしくなっちゃって(笑)。なので、人づてに経由して歌詞を送ってもらったんですけど、凄くいいって言ってくれたので安心しました。この曲はさくらちゃんがコーラスも歌ってくれていて、二人で一緒の日に録ったんです。
──友達の藤原さんと一緒にレコーディングするというのはどんな感じでした?
上白石:すっごく楽しかったです! さくらちゃんの声が凄く好きなので、その声に私の声が重なる瞬間とかは鳥肌ものでした。それぞれで歌ってから合わせたんですけど、さくらちゃんが歌う時は私がディレクターみたいに卓に座って「いいよー」とか、お互いに「OK頂きました」って指示し合ったりして(笑)。普段二人でお喋りしている時の延長線上みたいに自然な感じで出来ましたし、それが大切な友達に送る曲になったから、幸せな時間だったなって思いますね。さくらちゃんとはいつか生でセッションしたいです。
──藤原さんとの出会いもそうですが、『and...』というタイトルは音楽での繋がりという意味を込めてご自身でつけられたと聞きましたが。
上白石:これまでの色々なご縁がここに再び集結して手を差し伸べて支えてくださったアルバムで、そういう方達と一緒に作ったという面もあるし、私と聴いてくださる方達を新しく繋げてくれる作品でもあるなって思ったので『and...』ってつけました。「...」という所はこれからっていう広がりの意味を持たせかったので。
──制作に入る前のミーティングで、こんなアルバムが作れたらいいなという考えとかはありました?
上白石:こういう曲をお願いしますというのではなく、大好きで尊敬信頼する方々が作ってくださった曲に寄り添って全力で歌って出来上がったものが完成で、だからいろんなものが詰まったアルバムになるんだと思っていましたね。前作でバラードのイメージがあったと思うのですが、多保さんの「Sunny」(ステップを踏むような明るいナンバー)は、そうじゃない私にも気づいて下さって、「そういう曲が来ましたか」って嬉しい気持ちになったり、曲が届く度に感動しきりでした。
▲『and...』ジャケット
──作家陣それぞれが思う上白石さん像の違いというのが曲ごとに出ていますよね。
上白石:面白いですよね。自分を外側から見ている感じがしました。秦さんや、河野さん、内澤さんの曲は今までの私にちょっと違うグルーヴ感が加わったものだし、さくらちゃんは「こういう萌音が私は見たいよ」っていうのを書いてくれたそうなんです。
──そんなアルバムの中から先日イベントで秦 基博さんが作られた「告白」を歌われたそうですが。
上白石:大阪城ホールで初めて歌わせて頂いたんですけど、気持ちよかったです。広がりとストーリーのある曲なので、歌っていると情景が浮かぶんですよ。それを大阪城ホールっていう大きな空間で歌って、包まれている感じがありました。
──今まではカバー曲でのライブだったので、オリジナルを歌ったのはそれが初めてですよね?
上白石:そうなんです。全然違いましたね。カバーは私の名前で歌っているとはいえ歌わせて頂いている気持ちがあるんです。オリジナルは、人前で歌ったら「あぁ自分で好きなように歌っていいんだな」「これは自分の曲なんだな」って感じがしたので、そこで一つ自由になった気がしました。
■こんな私もいたんだなって周りから教えてもらえて、
■新しい私に出会わせてくれたような作品だと思います。
──「きみに」を含め、今作では3曲作詞をされています。前回の取材の時に鼻歌で作った曲をレコーダーで録っているという話をお聞きしましたが、詞も普段から書きためたりとかしているのですか?
上白石:いつか作詞作曲してみたいなという夢があったので、ちょっとずつ書いていました。でも今回は曲先行だったので、一つも役に立たなかったですけど(笑)。
──書きためていた中からのワードみたいなものも使わずに?
上白石:はい。曲にインスパイアされて書いた感じでしたね。曲を流して聴きながら思い浮かんだ景色や単語をA4の紙一枚にぎっしり書き出して、サビから書き始めました。言葉にするとサラサラ書けたように聞こえますけど、途中本当に行き詰まって家の中で膝を抱えていたんですよ。
──「Sunny」とか明るくて軽やかな歌詞なのに(笑)。
上白石:この詞はそんなドン詰まっていた自分に向けて書いたんです。「どっかに逃げ出したい!海に行きたい!」って気持ちで書いたのが「Sunny」です(笑)。
──なるほど。「String」の詞は普段心の中にしまっているご自身の思いだったりするのかな?と思ったのですが。
上白石:そうですね。この曲も最初は全然浮かばなくて、「どうしようどうしよう」って思っていたら、心の奥深くに眠っていたようなものがポロポロ出てきて。軸になっているのは、去年のオリンピックに出た部活の先輩なんですよ。大会前だけたまに陸上部員だったんですけど(笑)、その時に仲良くしてもらっていた上原美幸さんという先輩がオリンピックに出場したんです。その先輩が走っている姿を見て感化された時の気持ちを引っ張り出して書きました。走っている足の動きがずっと頭の中にあって、それと共に自分が吐き出したくても吐き出せなかった思いも一緒に書いていって、書き終わってから「私こんなこと思っていたんだな」って思ったので、なんか不思議な体験でした。私が書いた詞はどれも手紙みたいに誰かに向けて書いているものなんですよね。
▲『and...』ジャケット
──収録されている8曲を聴かせて頂いて、世武裕子さん作曲の「パズル」が異色で印象に残ったのですが、世武さんがピアノでギターが黒猫チェルシーの澤さん、□□□村田さんのベースにドラムはHi-STANDARDの恒岡さんというスペシャルバンドでのロックサウンドを歌ってみた感想を聞かせて頂けますか?
上白石:これは私にとっても一番チャレンジングな曲でした。デモを頂いた時はどうしようって思いましたね。自分の中の少年みたいな所をちょっと引っ張り出してきて歌った感じで、後から聴いた時に「私こんな声でも歌えるんだ」って思いました。難しい曲なので冷静にならないと歌えない曲でもあり、でも入り込んで歌いたいっていう葛藤があったりした曲です。
──他に今回歌ってみて難しかった曲はありましたか?
上白石:「String」ですかね。音域が高くて、でもガツンと行きたい曲だったので、そこはアドレナリンをフルに出して歌いました。自分の中でサビの所にひずみみたいな感じを入れたかったので、そういうのにも挑戦してみた曲です。歌詞で新しい自分が書けたので、歌でも出していこうと思って歌いました。
──曲ごとに歌声が違いますが、歌詞で歌い方が変わったりする人?
上白石:歌詞はセリフのような感じなので、それを口に出すのにふさわしい声っていうのがあると思うんです。それによって自分の声が変わればという思いから、8曲全部違う声の表情が少しでも出ればと思ってレコーディングしました。
──上白石萌音の歌声はこれというのではなく、曲の世界観で聴こえ方を変えたい?
上白石:そうです。自分を通すっていうよりは曲が主体って感覚ですね。それはお芝居にも通じるのかなとも思います。自分じゃなくて役だし、映画は監督のものっていう前提があって、曲も曲が主体で、私ではないっていう思いはどこかにあります。その曲にとって一番いい声で歌うっていう。だからアルバムは色んな歌い方を試して、探りながらレコーディングしました。
──その方法だと歌録りとか大変ではなかったですか?
上白石:録り始めるまでが大変でした。テストで歌ってみて、「ちょっとニュアンスを変えて歌ってみます」って3パターンぐらい試した後にみんなで聴いて、「じゃあこの方向で行きましょう」って決めてからレコーディングしたんです。アニメのアフレコの時に声のトーン決めっていう作業が最初にあったんですけど、「あ、同じことやってる!」って思いました。
──ここまでお話して頂いたように、『and...』は上白石さんの色々な歌声が楽しめるアルバムになっていますが、ご自身ではどんな作品に仕上がったと思っていますか?
上白石:こんな私もいたんだなって周りから教えてもらえて、新しい私に出会わせてくれたような作品だと思います。こういう声も出せたんだとか、こういう歌も歌えたんだっていうことを楽曲提供して頂いた方達から気づかせてもらえた一枚で、録っている時は、それぞれカラーの強い曲だから本当に一枚にまとまるのかなって思っていたんですけど、出来上がったら曲ごとに照明の色がパッて変わるみたいな感じがして、自分のアルバムを聴きたくなるんです。
──自分で歌った曲はあまり聴かない人?
上白石:今までは恥ずかしくてあまり聴きたくなかったんです。でもこのアルバムは聴きたくなるんですよね。そこも大きな進歩だと思います(笑)。それは一緒に作ってくださった方達の楽曲のおかげなんですけど。
──詞や曲も書きためているし、自分で作詞作曲した作品を出すのが夢だと話していらっしゃったので、アルバムが完成したばかりとは言え、次作のリリースも期待してしまうのですが。
上白石:次というか、いつかは自分で曲も作ってみたいです。(周りのスタッフを見ながら)でもどうなるんですかね? 次は全くわからないです(笑)。だから私も楽しみですね。その時はまた生みの苦しみを楽しみます(笑)。
取材・文◎山村哲也
上白石萌音 1stオリジナルアルバム『and...』
2017年7月12日発売
PCCA-04544 / ¥2,593+税
収録曲
M1. 告白※秦 基博 楽曲提供&プロデュース
(フジテレビ系「めざましテレビ アクア」テーマソング)
M2. Sunny※上白石萌音 作詞
M3. パズル※世武裕子 楽曲提供
(NHK E-テレ TVアニメ「境界のRINNE」第3シリーズ エンディングテーマ)

M4. きみに ※藤原さくら 楽曲提供&上白石萌音 作詞
M5. カセットテープ  ※名嘉 俊(HY) 楽曲提供
M6. String  ※上白石萌音 作詞
M7. The Voice of Hope
M8. ストーリーボード ※内澤崇仁(androp) 提供楽曲
[封入特典]
メモリアルチケット
※詳細は上白石萌音 オフィシャルHPをご確認ください。(kamishiraishimone.com)
■ライブ・イベント情報
<コカ・コーラ SUMMER STATION 音楽LIVE>
2017年7月22日(土) OPEN 17:00/START 17:30
SUMMER STATION LIVEアリーナ(六本木ヒルズアリーナ)
入場無料(整理券による優先入場あり)
お問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 (weekday 12:00~18:00)
<第45回 MBC夏まつり>
日時:2017年7月27日(木) 18:30~21:30
※上白石萌音は27日(木)19時台に出演予定。
会場:MBCグラウンド (鹿児島市与次郎)
<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017>
2017年8月5日(土)
会場:国営ひたち海浜公園
開場 8:00/開演 10:30
お問い合わせ:ROCK IN JAPAN FESTIVAL事務局 0180-993-611 (24時間音声対応)
イベントHP:http://rijfes.jp/
<Rakuten GirlsAward 2017 AUTUMN/WINTER>
2017年9月16日(土)
会場:幕張メッセ9~11ホール
イベントHP:http://girls-award.com
<Lovefes2017>
2017年10月14日(土)・10月15日(日)
会場:長崎県・長崎市水辺の森公園一帯
チケット料金:入場無料
■レギュラーラジオ番組情報
ニッポン放送『上白石萌音 good-night letter』
放送日時: 毎週金曜24:40〜25:00
番組メールアドレス: mone@allnightnippon.co.jp
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