7月8日(土)@青山CAY

7月8日(土)@青山CAY

マキタスポーツ、“芸能界の女帝”水
谷千重子と共演

マキタスポーツが青山CAYにおいて3か月に1度開催している『LIVE@マキタスポーツ』が7月8日(土)に行なわれた。第11回目となる今回は、楽しき歌謡曲の宵というべき内容だった。というのもこの日のゲストに招かれたのは、演歌ひとすじ50年の大御所シンガー、水谷千恵子。芸能界の女帝がよっこいしょと重い腰をあげ、いよいよ名物ライヴ・シリーズに登場するということもあって、開始前から会場の熱気が半端ない。

まずはマキタのソロ・ステージからスタート。曲の幕開け、<ズンズンズン>という何やら得体の知れないフレーズが静かに響き渡る。いったいこれは何だ?と不思議がっていると、やがて正体が判明。小林旭や氷川きよしの歌でおなじみの“ズンドコ節”だった。ブルージー仕立てとなった真夏の夜のズンドコ。<ズンドコ、セイ!>というコールもやけにオシャレ。続けて披露されたのが、まさかのSuchmos「STAY TUNE」のカバー。いっぽうこちらはリズムが<チャチャンガチャン>と盆踊り調となっており、“すていちゅ~ん音頭”といった趣。変幻自在な発想力を駆使したこの2曲でもって観客は一気にマキタ・ワールドへ引き込まれてしまう。

前半のセットリストは、マキタが長年出囃子に使っているTheピーズのカバー「生きのばし」、寄る年波の話からつなげられた「ガラスの十代」ならぬ「ガラスの四十代」(光GENJIカバー)、涙なしでは聴けない応援歌「がんばれ海老蔵」、星野源がCMに起用されたことへの愚痴も添えての「10分どん兵衛のうた」など。締めには、ピアノを務める相棒のジミー岩崎が9月にリリースするオリジナル・アルバムから、むせかえるような80s臭を放つ「シグナル」(マーチン度98%の和風ブラコン・ナンバー)が披露される。近況報告として、腰痛のせいで杖生活を余儀なくされ、”ひとりやすらぎの郷”状態だったこと、友近ママの番組(NB 南海放送『友近ママの魔法の引出し』)に出演して手相を見てもらいピリリとする話をされたこと、ひと頃ワイドショーをにぎわせたタイガー・ウッズの写真がかなり似ていると発見したことなどが語られた。

そして第2部、水谷千重子のオンステージへ突入。さすがこの道50年の大ベテラン、十八番である倖田來未の「キューティーハニー」や松田聖子の「夏の扉」など、華麗な節回しを畳みかけて会場の爆笑をさらっていく。波乱万丈の歌手人生を振り返るMCを耳にする頃には、青山CAYのオシャレ空間は昭和を代表するレジャー施設、船橋ヘルスセンターへと様変わり。瞬時にして場の空気を一変させてしまう彼女のパワーに脱帽させられた。

「千重子さんって本当にいたんですね!」というマキタのひと言と共にトーク・コーナーへ。「『ヤヌスの鏡』の椎名恵の類いだよね」とすぐさま彼女からレスポンスが返ってくる絶妙な呼吸がとにかく心地いい。“スポ根ちゃん”“千重子先生”と呼び合う親しい間柄のふたりだが、なにかにつけて80sネタにつなげてしまうあたりも一心同体少女隊的と言えるかも。中森明菜ネタをマニアックに展開したりして(友近から習ったというモノマネも披露)、同世代ならではの目線であの時代を切り取っていくやり取りはアットホーム感満点だった。なかでも大いに盛り上がったのは、五社英雄作品ネタ。傑作「吉原炎上」における西川峰子(仁支川峰子)の型破りな演技を絶賛したり、かたせ梨乃が劇中で歌う添田唖蝉坊作“あきらめ節"を完コピしてみせるなど、話が止まらなくなってしまうご両人。なお千重子さんには、五社監督作品へのオマージュを込めた「さみだれ道中」なる未発表の新曲があることも判明。一節聴かせてくれたが、これがなかなかディープな味わいの演歌でして、日の目を見るのが待ち遠しい。

後半戦は、「上京物語」の別バージョン<就職編>からはじまり。昨年の『FNS歌謡祭』における長渕剛の超絶パフォーマンスに感化された本作、長渕がわが道を邁進し続ける限り、物語のゴールはまだまだ遠いんだってことを改めて知る。その後、「ヴァージンマリー~聖母マリア」の元ウタとなる「おかあさん」、そしてFLY OR DIEの名曲「矛と盾」が歌われて本編が終了。

アンコールでは、台湾生まれのMr.レディー演歌歌手、春零とデュエットした最新曲「抱いてフラ・フラ」に乗って、千重子先生が再登場。せっかくだからデュエットを1曲ということで選ばれたのが、ふたりがこよなく愛する80s歌謡の代表的ナンバー、荻野目洋子の「ダンシングヒーロー」。途中発生したちょっとしたハプニングも含めて、ステージ上に立ち込めるムードは場末のスナックそのもの。マキタもコブシをクルクルと回しまくって、千重子ノリにバッチリ呼応してみせる。

まさに笑いの絶えないキーポンシャイニングな宴となった今回の『LIVE@マキタスポーツ』。独自の世界観と変幻自在なパフォーマンスで聴き手を魅了する水谷千重子の魅力を堪能できたイベントだったが、そんな彼女の類稀なる観察眼、そして緻密な人物描写と高い再現性にマキタがどれほどリスペクトを抱いているのかがよくわかるライヴでもあった。「今度は友近も呼びたい」と漏らしていたが、ぜひ実現してほしいものだ。

text by 桑原吏朗

7月8日(土)@青山CAY

OKMusic編集部

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