気鋭の若手アーティスト週間! NHK・
    BSプレミアム『クラシック倶楽部』サ
    ックス奏者のエイミー・ディクソンの
    リサイタルを放送

    NHK・BSプレミアム『クラシック倶楽部』(17日~21日、午前5時~5時55分)では、注目の若手演奏家の室内楽演奏会やリサイタルのライヴ収録を5日連続放送する。
    17日はフランスの女性弦楽四重奏団のアキロン・クァルエット、18日は オーボエ奏者のラモン・オルテガ・ケロ、19日はピアニストのボリス・ギルトブルグ、20日はサクソフォーン奏者のエイミー・ディクソン、21日はウィーン・フィル首席ファゴット奏者のソフィー・ダルティガロング…と、充実のラインナップ。
    この中から、20日のディクソンのリサイタルを、楽器にまつわる話しなども含めご紹介する。
    サクソフォーン(以下サックス)は今や音楽教室でも人気の楽器だが、耳にする曲の多くはジャズや吹奏楽などで、クラシック曲は限られる。サックスは、1840年頃、パリで活躍していたベルギー人の楽器製作者、アドルフ・サックスが発明した近代楽器なので、それ以前の管弦楽には登場しないからだ。
    エイミー・ディクソンは、そんなサックスのクラシックにおけるステータスアップに尽力している。オーストラリアのシドニー生まれで、ソプラノ・サックスとアルト・サックスを自在に操り、現代作品を積極的に演奏。品の良さと美的ムードが絶妙に溶け合って華のあるサウンドがストレートに心に届く感じがする。イギリスを拠点に世界で活動しており、すでにグラミー賞に2回もノミネートされている。
    20日の放送は、2015年の初来日リサイタルから。リチャード・ロドニー・ベネット(1936~2012)をはじめ、ダウリス・ミヨー(1892~1974)アストル・ピアソラ(1921~92)ら、ディクソンに似合いの現代作曲家の演奏曲をピックアップしてある。
    前半の『4つのカントリーダンス』のベネット、『2つの悲歌に挟まれた叫び』のマーク=アンソニー・タネジ(1960~)、『ゲート』のグレアム・フィトキン(1963~)の3人はイギリスの作曲家で、サックス協奏曲も作っていて、それぞれの活動にもオリジナリティーがある。ベネットは、映画『オリエント急行殺人事件』(1974)、『フォー・ウェディング』(1994)をはじめ、多くの映画音楽で知られ、後半生はアメリカで活躍したが、オペラや器楽曲なども多く残している。タネジも管弦楽、オペラ、ジャズなど幅広い作曲で知られ、フィトキンに至っては、カゴメやユニクロのCMで楽曲が使われたり、例えば2台ピアノとソプラノサックスのための『Hard Fairy』のような、楽器編成のユニークな曲も複数ある。
    これら3人の作品を、ディクソンがソプラノ・サックスで演奏、ピアノ伴奏は小柳美奈子である。小柳は、サックス奏者の夫・須川展也とのデュオやトルヴェール・クヮルテットとの息の合ったアンサンブルなどで、サックスやブラスファンにはおなじみ。だが、新星ディクソンとの独創的な楽曲演奏は、とても新鮮に聴こえるのではなかろうか。
    例えば、タネジの『2つの悲歌に挟まれた叫び』は、もてあます思いを一人語りするかのようなサックスにピアノが言い返したり、意見するように絡みながら進む。前半はピアノの沈黙も多い。後半になると、双方が静かに言葉を交わす場面も出てくるが、答えの出ない話に似て、黙り込んだりも。日常よく耳にするムーディーなサックス音楽とは、全く別世界である。
    また、フィトキンの『ゲート』はミニマルな曲で、サックスとピアノがそれぞれ独自の短い旋律やリズムを反復しながら展開。後半に進むにつれ、勢いに乗って二人三脚で駆けぬける感じで、サックスのパッセージは音数も増え、ブレスともに難易度が増していく。ディクソンのテクニックだけでなく、チャレンジ精神も感じとれるのではなかろうか。
    後半は、アルト・サックスに持ち替え、曲調も一転する。
    ミヨーの『スカラムーシュ』は、親しみやすく活気に満ちた楽しい音楽だ。もともと2台ピアノ用の3楽章からなる曲で、第1楽章と第3楽章はモリエールの喜劇『空飛ぶ医者』の劇伴に基づく。好みは分かれるだろうが、第1楽章の小気味よい快速パッセージ、第2楽章のゆったりまろやかなサウンド、そしてピアノのラテンのリズムと明るいサックスの旋律が仲良く盛り上がるノリノリの第3楽章……と、いずれも繰り返し聴きたくなってくる。美しく華のある音色で歌うサックスをたっぷりと味わい、ピアソラの『アヴェ・マリア』で心地よくクールダウンすれば、一日を気持ちよくスタートできそうだ。
    ちなみにディクソンは、アメリカの現代音楽家、フィリップ・グラス(1937~)の『ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲』が好きで、サックス用に編曲したものを愛奏している。輸入盤CDで聴けるが、分散和音が連続する音楽でブレスも難しく、録音前は周囲から「腱鞘炎に悩まされるよ」とまで言われたそうだ。しかし驚異的なテクニックで、あたかも原曲がソプラノ・サックスの作品であるかのような吹きっぷり。こういったチャレンジでサックスの新たな扉を着実に開き、海外ではすでに高評価されているのだ。ポップスの歌姫に置きかえると、レディー・ガガやビヨンセのようなアグレッシブな活動に思える。グラス作品の日本公演が待ち遠しい。
    文=原納暢子
    番組情報

    NHK-BSプレミアム『クラシック倶楽部』
    新進気鋭の若手アーティストたち
    7月17日(月)~21日(金)

    ・7月17日 (月) アキロン・クァルエット
    (2016年ボルドー国際弦楽四重奏コンクール優勝)
    ・7月18日 (火) ラモン・オルテガ・ケロ
    (オーボエ、2007年ARDミュンヘン国際コンクール優勝)
    ・7月19日 (水) ボリス・ギルトブルグ
    (ピアノ、2013年エリザベート王妃国際コンクール優勝)
    ・7月20日 (木) エイミー・ディクソン
    (サクソフォーン、グラミー賞に2度ノミネート、新星サックス奏者)
    ・7月21日 (金) ソフィー・ダルティガロング
    (ファゴット、2015年24歳でウィーン・フィル首席に就任)

    エイミー・ディクソン・サキソフォーン・リサイタル(7月20日放送)
    ■放送日時:7月20日(木) 午前5時~5時55分
    ■出演:エイミー・ディクソン(アルト&ソプラノサクソフォーン)、小柳美奈子(ピアノ)
    ■演奏曲:
    ベネット「4つのカントリー・ダンス」
    タネジ「2つの悲歌に挟まれた叫び」
    フィトキン「ゲート」
    ミヨー「スカラムーシュ」
    ピアソラ「アヴェ・マリア」
    ■収録:2015年6月29日(月) 武蔵野市民文化会館 小ホール
    ■公式サイト:http://www4.nhk.or.jp/c-club/

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