日本の音楽シーンに革命を起こす『A
FTER HOURS』

4月9日(日)に、渋谷にある4つのライブハウス(TSUTAYA O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest)にて新たなミュージックフェスティバル『AFTER HOURS』が開催された。
この新たな音楽フェスティバル『AFTER HOURS』は、単なる新規の音楽フェスではない。MONO、envydowny といった海外で精力的に活動し、高く評価されている日本の3バンドが中心となって生み出されたもので、2016年の『SYNCHRONICITY』内でのコラボレーション形式でのプレ開催を経て、今年2017年4月に東京で初開催された。『AFTER HOURS』の特徴は、ミュージシャン発の、ミュージシャンによる、ミュージシャンとオーディエンスのためのフェスであることだ。そのイベント主旨全文をぜひ読んでいただきたいのでここに紹介しよう。
2017年4月9日、『AFTER HOURS』の記念すべき第一回が開催された。渋谷の一角は活きた人々で溢れ、交差し、彼らが流れつく先々の空間では音楽が力強く芽吹き、途切れることなく生まれ、放たれていた。人と文化によって活性化されたその一帯は、まるでドクドクと脈打つ鼓動が聞こえてくるような非日常的で刺激的な空間と化していた。
最大キャパシティの会場である TSUTAYA O-EAST ではMONO が先陣を切った。フェスの幕開けにヘッドライナー級のバンドが登場したことで、会場は隙間なくオーディエンスで埋めつくされ、真っ昼間から異次元へと早々にトリップさせていた。
MONO 撮影=Yoko Hiramatsu
今回、会場となった O-EAST を含む4つのライブハウスでは、全31組の出演アーティストが戦いに挑む武士さながらに、音楽とオーディエンス、そして己に向き合い、確かな音を紡いでいた。その有名、無名、ジャンルなどの無用なカテゴリー分けのない非常に自由な4つの音楽空間を、オーディエンスは心と身体が向かうままに行き交っていた。
envy 撮影=Eisuke Asaoka
downy 撮影=Eisuke Asaoka
どの出演者も圧倒的な存在感でステージ上に君臨し、彼らの信じるものを表現し、全身全霊で放出していた。陳腐な言い方になってしまうが、目にしたアクトすべてがエネルギーに満ちあふれていて、表現者としてのその姿はひどく美しかった。
出演者名を見ての通り、出音は爆音轟音だった。Lostageの MC では「音のデカいバンドばかりだろうから、音小さくするか?」の問いに対し、オーディエンスからは「もっとあげろ!」という頼もしい声がレスポンスされていた。客も負けていない。
LOSTAGE 撮影=Yoko Hiramatsu
toe 撮影=Kana Tarumi
LITE 撮影=Yoko Hiramatsu
躍動する音楽が、これでもかこれでもかと言わんばかりに繰り返されたこの日を振り返ってみると、「日本の音楽シーンは死んでない、大丈夫だ」と知らしめてくれた、非常に力強くて感度の高いフェスティバルだったと言える。
今回が初開催であるにもかかわらず、『AFTER HOURS』の全チケット2500枚は開催前にソールドアウトした。これはアーティストの放つ音楽に惹かれた結果であるのは勿論のことだが、ミュージシャンたちの掲げたイベント・サブタイトルにもある「表現の自由を奪うものへの闘争」というイベント主旨をあの日オーディエンスとなった一人一人が真摯に受け止め、支持した証しでもある。2500人という数字をどう受け止め、どう考えるかはそれぞれ異なるだろう。しかし、この事実を音楽・芸能関係者は重く受け止める必要があることは確かなはずだ。
People In The Box 撮影=Eisuke Asaoka
THA BLUE HERB 撮影=Yoshiharu Ota
なぜ日本ではこのようなフェスティバルをミュージシャン自身が興さなければならない音楽シーンになってしまったのかはわからない。しかし、見えない壁や力に抗ってでも、自分を表現する場所のひとつである母国の音楽シーンを神聖で純粋なものに変えたいと、海外実績を伴って凱旋し、行動に移したミュージシャンの存在は大きい。彼らは、世界の音楽シーンを代表する音楽メディアや各国のプロモーターなどから高く評価され、世界に点在するその土地に根付いたビジネスパートナーらと手を組み、世界規模のツアー実施や、名だたるフェスティバルへのオファーを受けての出演など、海外活動実績と海外に多くのファンを持つが、日本ではそのことをあまり知られていない。
THE NOVEMBERS 撮影=Yosuke Torii
tricot 撮影=Eisuke Asaoka
MONO、envy、downyらが、世界の音楽シーンと比較して特異体質を持つ母国・日本を諦めず、こうしたイベントを興し、ミュージシャン自らの力で体現したことを高く評価すべきである。
このムーブメントとも言える『AFTER HOURS』 が日本のインディペンデント・音楽シーンの布石となることは明らかで、支持するオーディエンスも拡大していくだろう。音楽家たちによる革命的なフェスティバルの今後の展開に、広く注目していきたい。

文=早乙女‘dorami’ゆうこ
撮影=Yoko Hiramatsu(MONO、LITE、 LOSTAGE)、 Eisuke Asaoka(envy、downy、People In The Box、tricot)、Yoshiharu Ota(THA BLUE HERB)、Yosuke Torii(THE NOVEMBERS)、Kana Tarumi(toe)

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