カントリーミュージックとは ルーツ
から現代までの変遷をかんたんに解説
します

現在では、Taylor Swiftに代表されるようなアーティストの活躍によって半ばポップスに近い形で日本にも浸透しているカントリーミュージックですが、その起源はどのようなものだったのでしょうか?
今回はカントリーミュージックについて、意味や歴史、曲調、魅力に関する記事を書きました。カントリーミュージックを好む方はもちろん、興味を持ち始めた人や音楽が好きな人はぜひご覧ください。

カントリーミュージックの意味

カントリーミュージック(country music)は、初めはカントリーアンドウエスタンミュージック(country and western = C&W)と呼ばれていました。その発祥はアメリカ東南部から南部、そして西部に至る広大な地域の田舎で、移民系の白人の中で生まれ、主に白人に愛唱されながら発展してきた音楽ジャンルです。”country”は「田舎」の意味であるため、 カントリーミュージックはアメリカの田舎で生まれた、あるいは主に田舎で愛唱される音楽といった意味合いがあります。
C&Wとして出発したカントリーミュージックは、幅広い周辺の音楽に影響され、融合・合体を繰り返しながら、その発祥から独自のジャンルとして発展してきたブルーグラスやフォークをも包括した一大音楽シーンを形成して行きます。
amazon digital music音楽配信サイト英語版でのカントリー部門を選択すると、alternative country & americana, bluegrass, contemporary country, cowboy, honky-tonk, outlaw & progressive country, traditional country, western swingなどの多くのサブジャンルが表示されますが、その一方、日本語版の配信サイトではブルース・カントリーと一括されていて、カントリーとブルーグラスが区別されているだけです。
日本でカントリーミュージックというと、西部劇の中でカウボーイが歌うカウボーイ・ソングや開拓者が歌う古いアメリカ民謡と思いがちです。しかし、上記のように今日のアメリカでは、ほぼすべての音楽ジャンルに浸潤した幅広いポピュラー音楽として親しまれており、これらの楽曲はカントリーミュージックの古典ではあるもののほんの一部にしか過ぎません。
カントリーミュージックでは、歌詞の内容が生活に根ざした素朴なものであることも特徴です。それに合わせるように楽器編成もアコーステイックギター、フィドル(バイオリン)、バンジョー、マンドリンなどの弦楽器を中心としたシンプルさに特徴があります。

カントリーミュージックの歴史

発祥・ルーツ
カントリーミュージックの歴史を語ることはすなわち、アメリカ音楽、引いてはアメリカ合衆国の歴史を語ることにつながります。言わずもがなですが、アメリカ合衆国は、イギリスを初めとしたヨーロッパやアフリカからの移民によって形成された多民族国家です。
その中でも、イギリス(イングランド系、スコットランド系、アイルランド系など)からの移民が、初期のアメリカの政治、経済、文化形成において圧倒的な影響力を持っていました。従って、アメリカ音楽のルーツとしてイギリス音楽は極めて重要な位置を占めています。
イギリスからもたらされた民謡の類は、19世紀の間続いた新天地の開発と発展の中で民衆によってもまれ、だんだんと変容してアメリカ民謡となって行きました。この過程で重要な影響を及ぼしたのが、西部開拓と南北戦争です。
これらの歴史的なエポックの中で、C&Wと呼ばれる音楽や、フォスターの楽曲を含む南北両軍兵士により歌われた軍歌のようなものが生まれてきます。
はじまり
このようなアメリカ民謡は、西部開拓の終焉する19世紀末までは各地の民衆の中で折に触れて歌い継がれてきました。しかし、商業音楽のジャンルとして定着するのは1920年代になってからです。
このカントリーミュージックの黎明期の輝ける音楽家として、Carter FamilyとJimmie Rodgersが挙げることができます。前者は、キリスト教の色彩のあるトラデイショナルな味付けの楽曲を、カーターファミリーピッキングと呼ばれる新鮮なギター演奏に乗せて歌って人気を博したのに対して、後者は、ブルースとヨーデルを合体させたブルーヨーデルなる新しい音楽を作り出し、後世、カントリーミュージックの父と称されるようになります。
ホンキートンクとブルーグラスの誕生
アメリカ最古のラジオ音楽ショー番組であるグランドオールオープリーが1925年にナッシュビルで始まり、そこからUncle Dave MaconRoy Acuff、Eddy Arnoldといったスターが誕生。また、1940年代にはBill Monroe、Lester Flatt & Earl ScruggsなどのいたBlue Grass Boysの名を取ってブルーグラスが生まれました。このため、Bill Monroeは「ブルーグラスの父」と呼ばれています。
それ以降、ブルーグラスはカントリーミュージックの主要な位置を占めるようになって行きます。その一方で、カントリーミュージックの歴史上最も光り輝く歌手の一人であるHank Williamsが、南西部でホンキートンクなる新しいジャンルを引っ提げて登場しました。カントリーミュージックにロックのタネを植え付け、新風を吹き込んだ彼の半生は、映画 ”I saw the light”に描かれています。
カントリーミュージックの全盛期
1950~60年代はカントリーミュージックの全盛期。Johnny Cashを始めとして、Hank Snow, Jim Reeves, Marty Robbins, Johnny Horton, Porter Wagoner, Buck Owens, Merle Haggard, Kitty Wells, Loretta Lynn、さらにはカントリーに進出したElvis Presleyなど綺羅星のごときスターたちが競い合っていました。
ブルーグラス界でも、Mac Wiseman, Jimmy Martin, The Stanley Brothers、The Osborn Brothersらが活躍していました。
カントリーロック
そして1970年代にかけて、当時のロックミュージックのブームの中で、カントリーミュージックにもロックの風が吹き込み、カントリーロックという新しいジャンルが生まれます。ノーベル賞受賞者のBob Dyranを始め、NGDB, Neil Youngなどが人気でした。
現代のカントリーミュージック
1970年代以降になると、カントリーミュージックと周辺音楽ジャンルとの融合はさらに進み、カントリーポップというサブジャンルが登場しました。これにより、カントリーのポピュラー化が進みました。数々の大ヒット曲を生産したJohn Denverを初めとして、Kenny Rogers, Willie NelsonGlen Campbell, Dolly PartonLinda RonstadtTanya Tuckerらがヒットを飛ばすようになります。
トラデイショナルスタイルのカントリーミュージックやブルーグラス界では、Sum Bush, Ricky Skaggs, Bela Fleck, Emmylou Harrisなどが登場してきました。
現在のカントリーミュージック
2000年代以降のカントリーミュージックは「ニューカントリー」と呼ばれ、さらにポップ化が進みました。ポップスなのかロックなのか、はたまたカントリーなのかが判然としないポピュラーなもの(悪く言えば没個性的なもの)に変貌してきています。
その中でも、Garth BrooksCarrie UnderwoodShania Twainさらには女性グループのDixie Chicksは驚異的なCD販売を上げていますし、まだ20代のTaylor Swiftは、ティーンアイドル並みの人気を得る程まで活躍しています。彼らの魅力は、人気があるだけではなく実力も兼ね備えており、それぞれがグラミー賞を何度も受賞するなど高い評価を得ている点にあるでしょう。
このように、最近ではカントリーのポップ化が進んでおり時には「カントリーの産業化」と揶揄されることもあります。その結果、ナッシュビルの伝統的カントリーアーティストからは、この新しいトレンドに不満を持つ者もいるようです。
しかしその中でも、トラデイショナルスタイルのカントリーミュージックやブルーグラスの伝統は、新しい実力派シンガーによって受け継がれています。例えば、グラミー賞女性最多受賞ブルーグラスシンガーのAlison KraussやMartina McBrideなどです。また、ホンキートンクやフォークソングなども十分な人気を保っています。
つまり、カントリーミュージックはそのすそ野を大きく広げながらも、中核部分はしっかりと維持伝承されており、ミュージックシーンにおけるカントリーミュージックの確固たる地位が築かれていることは明らかです。
スタイルは変わっても、カントリー特有の暖かみやシンプルさ、ストーリー性のある歌詞、心に響くようなボーカルは引き継がれており、聴く人を魅了しています。
日本のカントリーミュージックの歴史
日本では戦後、進駐軍から広まったカントリーミュージックは、西部劇の流行と相まって大いに流行します。この頃のシンガーは、ジミー時田とマウンテンプレイボーイズ、小坂一也とワゴンマスターズなど、バンドを組んで活躍する者が目立ちました。
一方で、ウエスタンカーニバル全盛の時代でもあり、この時期が日本でカントリーミュージックがポピュラーシーンに登場した唯一の時期として特筆されます。ウエスタンカーニバルブームはロカビリーブームへ、そしてグループサウンズへとつながって行くことになります。
その後は、とくに本格的なカントリー歌手は現れず、昔からのカントリーミュージックの愛好者も少なくはありませんが、あくまでも日本の音楽シーンの中ではマイナーな存在に甘んじています。今日では、ニューカントリーなどの新しい波が日本にも押し寄せて来てはいますが、どちらかというとこれらの楽曲はポップスとして聞かれているようです。
カントリーミュージックの本流からは外れますが、1960~70年代の世界的な学生運動の高まりに呼応したフォークソングブームの波が日本にも渡来し、主に関西圏を中心としたフォークソングブームが起こりました。
この中で興味深いのは、彼らの中に、カントリーミュージックのメロデイーに日本語の歌詞を付けて歌っていたシンガーが少なからずいたことです。その中でも、高石知也(とザ・ナターシャセブン)は、カントリー系(ブルーグラス系)のメロデイーを使った日本語の歌詞の曲も何曲か作っていたようです。しかし、中には日本語の歌詞を無理やりカントリー系のメロデイーに押し込めた歌作りをするシンガーもおり、本場の優れた音楽性を引き継ぎ、広めるには至りませんでした。

カントリーミュージックの曲調

カントリーミュージックには、ハイテンポで踊りだしたくなるような曲調のものがあるかと思えば、心の奥底に浸み込むようなしっとりとした曲調のものもあります。トラデイショナルな曲の中には、なぜか懐かしさを感じさせるものも少なくありません。とくにブルーグラスは、高音を特徴とする音程と日本人に好みの感傷的なメロデイーが魅力的です。
このような感傷的な音楽であるにもかかわらず、多くの曲が基本的にマイナー(短調)ではなく、メジャーで演奏されるのが特徴的です。
そして、上記のようなカントリーミュージックの雰囲気を醸し出しているのが、様々な楽器の音色でしょう。
カントリーミュージックの使用楽器 
初期のカントリーミュージックは、主に弦楽器主体のアコーステイックな楽器編成でした。ギターとバイオリン(フィドル)が必ず入り、これに加えて、バンジョー、マンドリンなどが加わります。
この他、リゾネーターギター(ドブロギター)とステイールギター、また、トラデイショナルカントリーミュージックによく用いられるマイナーな楽器としては、オートハーブやダルシマなどがあります。
近年になって、カントリーとポップスの境界が不明瞭になってくるに従い、カントリー系の楽曲にも、ベース、ドラム、キーボード、ピアノなどが加わって、音にぐっと厚みが出てきました。
フィドル(バイオリン)
いわゆるクラシック音楽で使われるバイオリンのことです。
同じ楽器ではありますが違う音楽ジャンルで使われるために、テンポのとり方やリズムの刻み方などの奏法が違うために異なる名前が付いたものと思われます。ラシック音楽のバイオリン奏者がカントリー系の曲にトライすると、譜面通りには弾けるものの、カントリー風ではない無味乾燥な曲になってしまうようです。
このことは、例えばオペラ歌手がシャンソンを歌うと、クラッシック風のシャンソンになってしまうことと同じように言えます。また、フィドル奏者の方が型にとらわれない、アドリブを味付けとして加えた演奏をすると言われています。代表的なフィドラーとしてはVassar ClementsBenny Martin、Mark O’Connorなどがいます。
ギター
19世紀までのカントリーミュージックの黎明期におけるギターはガットギターのみであり、あくまでも宮廷音楽や極めてシンプルな演奏スタイルのダンスの伴奏用などに使われていただけでした。
C&Wが本格的に始まった1920~30年代に入ってステイール弦が開発されてから、ギターは単なる伴奏用ではなく、カントリースタイルでの本格的な演奏の主役に躍り出るようになります。その結果、Chet Atkins, Clarence White, Doc Watson, Tony Riceなどを始めとするカントリー系のスーパーギタリストが多数輩出されるようになります。また、ハワイから入ってきたステイールギターやドブロギター、さらにエレキギターなども交えて、ギター演奏のレパートリーが広がって行きます。ドブロギターでは、Tut Taylor、Brother Oswald、Jerry Douglasなどが活躍しました。
マンドリン
カントリーミュージックにマンドリンが登場するのはBill Monroeが出てきた1930年代に入ってからで、ギター、フィドル、バンジョーと並んでなくてはならない重要な楽器の一つとなりました。
カントリーミュージックで使われるマンドリンは、ロシア民謡で知られたマンドリンとは異なります。胴体の裏側が平らなフラットマンドリンと言われるタイプで、重奏ではなくソロで演奏されることが多くなります。
カントリー系のミュージシャンとしては、Bill Monroeを始めとして、Jessie McReynolds, Bobby Osborne, Sam Bushが有名で、ドーグミュージックで有名なDavid Grismanが加わることもあります。
バンジョー
カントリーミュージックにはなくてはならない乾いた透明な音を出す楽器です。歴史的には黒人伝統音楽から導入され、その後、発展して行きます。
カントリーミュージックで用いられるのは5弦バンジョーと呼ばれるタイプです。Earl Scruggs, Ralph Stanley, John Hartford、Bela Fleckらが有名です。
ダルシマ一
起源が異なるappalachian dulcimer とhammered dulcimerの2種類があり、前者はブルーグラスでよく使われ、後者はカントリーゴスペル系の曲によく合うエコーのきいた神聖な雰囲気を醸し出す独特の音色を持っています。この音色はピアノの音色に似ているところがあり、また、両楽器とも弦をハンマーでたたく点が同じことから、ダルシマがピアノの先祖と呼ばれることもあるようです。
カントリーミュージックのコード進行
欧州の民族音楽では一般的なドレミソラの五音音階と、ブルース的な単調なスリーコード進行を持っています。ただブルースではないので、I7・IV7・V7ではなくI・IV・Vとなります。同様にミがミ♭になったりと言った変位音も見られない特徴があります。
【7分の7拍子 より引用】
カントリーミュージックはイギリスの民族音楽と同様の五音音階を持ち、同じような旋律とリズムで出来ています。また、2拍目と4拍目、裏拍を強調するのが特徴です。さらに、楽曲の構成としては、8または16小節からなる1部または2部構成の曲の単位を繰り返して演奏してゆく形式を取ります。
【7分の7拍子 より引用】
ブルーグラスはいろいろ規制の多い音楽で その幾つかを書いてみますと例えばコードは次のようになります。キーがCの場合普通、スリーコードならC.F.G7 となりますが、ブルーグラスでは G7がGとなり、キーがGの場合はD7がDとなります。
ブルーグラスで顕著なのは、1番と2番を歌唱すると3番に演奏のみが入り、再び4番と5番に歌唱が入るという形式です。演奏は、それぞれの楽器がソロで入れ替わりで演奏され、例えば、ギターソロに続いてマンドリンソロや、フィドルソロの次にギターソロといった具合にです。このような演奏形態をとることにより、それぞれの楽器の音を楽しめるとともに演奏テクニックを満喫できるようになっています。
【BLUEGRASSの歴史 より引用】

カントリーミュージックの魅力

カントリーミュージックと映画
日本では、カントリーミュージックを西部劇音楽と勘違いしている人がいるようです。確かに西部劇にはカントリーミュージックが多用されてはいますが、有名な西部劇の主題歌は、クラシックや映画音楽の作曲家・作詞家によってその映画のために作られたものが多いようです。良く知られたところでは、「シェーン」とか「大いなる西部」とかです。その中には、「OK牧場の決闘」や「真昼の決闘の」ようにカントリー歌手が主題歌を歌っている例もあります。
西部劇では、19世紀前半から末までのアメリカ西部地域が背景になっているため、初期のカントリーミュージック(アメリカ民謡)を楽しめる点にあるといえます。西部劇の黎明期である1920-30年代に活躍した歌うカウボーイことGene AutryやRoy Rogers、1940年代以降の西部劇全盛期に入ると、John Ford監督の一連の西部劇がそれに当たります。「駅馬車」から始まり、「荒野の決闘」、「捜索者」、「三人の名付け親」などで、色々なアメリカ民謡が印象深く使われ、楽しませてくれました。
一方で、カントリーミュージックを題材とした映画も数多く作られています。有名なところでは、Nashville (1975), Oh Brother! (2000), Cold Mountain (2003), Walk the Line (2005)等々で、カントリーミュージックの生きた歴史が見ることができ楽しめます。
多様性の魅力
一口にカントリーミュージックと言っても、非常に多様性に富んだジャンルを包括する一大音楽シーンである点に興味を感じる人も多くいます。このような多様性は、カントリーミュージックの歴史を見れば明らかなように、元からあったトラデイショナルなカントリーミュージックがロック、ブルース、ジャズ、ゴスペルなどの周辺音楽と混合融合して進化してきていると考えられます。
このように、時間をかけて進化してきている珍しい音楽ジャンルである点が興味深く感じます。その一方で、古典的なトラデイショナルなカントリーミュージックもきちんと伝えられており、次々と若いシンガーが誕生するという懐の深さもあります。
楽器や演奏方法の魅力
一般的にカントリーミュージックでは、楽器編成がシンプルでアコーステイックなものが多く、ポップスなどよりももっと深く浸み込んでくるような心地よさがあります。ブルーグラスでは、他には類を見ない超高速演奏も楽しめます。
また、アコーステイックな楽器を中心とした透明感のあるシンプルな曲調も魅力の一つです。また、他の音楽ジャンルではあまりお目にかかれないような変わった楽器にも出会える楽しみもあります。
カントリーミュージックでは、バンドを組んでいる場合はもちろん、ソロのアーテイストでも、シンガーが歌うだけでなく自分でも特定の楽器を演奏したり、逆に、楽器演奏のスペシャリストが歌も歌ったりすることが他のジャンルよりも多いように思えます。例えば、Doc Watson、Norman Blake(ギター)、Brother Oswald(ドブロ)、Sam Bush (マンドリン)、John Hartford(バンジョー)、Alison Krauss(フィドル)などです。
歌詞の魅力
カントリーミュージックは美しいメロデイーに魅力がありますが、歌詞を理解すると音楽をより楽しめるようになります。前述のように、カントリーミュージックは人々の生活に根差した歌詞が多いため、明るいほのぼのとした内容の曲もあれば、人々が日々の生活の中で遭遇するような悲しみや死を歌った曲もあるのが特徴です。中には、男女の愛憎から人間の死や暴力的な表現を伴ったものも少なくありません。とくに男性による女性への理由なき暴力殺人のようなシーンをバラード調に歌ったものは、他の音楽ジャンルでは見られない特異的なものではないでしょうか。
例えばThe Louvin Brothersが歌った「Knoxville girl」や、多くの歌手によって歌われている「Banks of the Ohio」があげられますが、いずれも、とてもこのような内容が歌われているとは思えないような美しいメロデイーラインの曲です。これらの歌詞を、フランケンシュタイン、ジキル氏とハイド氏、ドラキュラなどが有名な18世紀末から19世紀初頭にヨーロッパで流行した、陰鬱で気味の悪いテーマの小説に源を求める人もいます。また、カントリーミュージックが誕生したアメリカ南東部の風土に源があると考える人もいるようです。
いずれにしても、我々は、このような悲しい現実から逃れられないのも事実で、カントリーミュージックこそが、他のジャンルの音楽が避けてきた現実と真正面から向き合う真摯な音楽性を持っていることを示しています。
参考文献「田中健二 愛と殺人を歌うカントリーミュージック」

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