(C)2017ルー製作委員会

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【芸能コラム】凱旋上映!アヌシー国
際アニメーション映画祭最高賞受賞作
『夜明け告げるルーのうた』

 6月18日、1本の日本映画が世界最大のアニメーション映画祭“アヌシー国際アニメーション映画祭”で、長編部門のクリスタル賞(最高賞)を受賞したというニュースが日本中を駆け巡った。その映画のタイトルは『夜明け告げるルーのうた』。このニュースで初めてその存在を知った人もいるに違いない。だが、国内では既に5月19日から劇場公開されており、受賞を受けて6月24日から改めて各地で凱旋(がいせん)上映が始まった。この機会に、ぜひお薦めしたい1本だ。
 寂れた港町・日無町。離婚した父と一緒に東京からこの町へ引っ越し、祖父と3人で暮らす中学生のカイ(声:下田翔大)は、屈折した思いを抱えて日々を過ごしていた。ある日、クラスメートの国夫(声:斉藤壮馬)と遊歩(声:寿美菜子)から、音楽の才能を見込まれたカイは、彼らのバンド“セイレーン”に誘われる。こうして、渋々訪れた練習 場所の人魚島で、人魚の少女ルー(声:谷花音)と出会う…。
 伝統的な“ボーイ・ミーツ・ガール”の物語をベースに、心を閉ざした少年カイと人魚の少女ルーの交流をつづったファンタジーである。
 注目したいのは、独創的なアニメーションによる表現だ。音楽を聞くと尾びれが二本足に変化して踊り出すルーや、リズムに合わせて踊り出す人々のダンスシーンなどが、デフォルメされた動きを伴って、伸び伸びとダイナミックに描かれている。色彩感覚にあふれた映像と音楽が、物語とシンクロしたクライマックスの爽快感を、ぜひその目で確かめてほしい。
 人魚が登場するアニメーションと聞くと、最近では『崖の上のポニョ』(08)を連想する人も多いと思うが、それとはまた違った楽しさにあふれている。
 サメのような姿ながら、温厚な性格でスーツを着て歩き回るルーのパパ、ルーにかまれた犬たちが変化した“ワン魚”といったユニークなキャラクターも見ものだ。
 監督は湯浅政明。森見登美彦の小説を映画化した『夜は短し歩けよ乙女』が4月に公開されたばかりだ。一般的にはなじみが薄いかも知れないが、アニメーターとして「ちびまる子ちゃん」(90~/フジテレビ系)や「クレヨンしんちゃん」(92~/テレビ朝日系)などの大ヒットシリーズに参加してきたベテランだ。2004年に『マインド・ゲーム』で長編初監督を飾り、「四畳半神話体系」(10)、「ピンポン THE ANIMATION」(14)といった個性的な作品を生み出してきた。
 13年には自ら製作会社「サイエンスSARU」を立ち上げ、独自のカラーを打ち出した作品を送り出す体制も整えている。『夜は短し歩けよ乙女』、『夜明け告げるルーのうた』は、いずれも「サイエンスSARU」作品だ。来年には永井豪の名作漫画『デビルマン』を原作にした「DEVILMAN crybaby」(NETFLIXにて配信)も控えており、今後さらに注目を集めることは間違いない。
 『夜明け告げるルーのうた』は、そんな湯浅監督が初めて原作なしで挑んだ完全オリジナル作品。すなわち、その個性を存分に味わえる作品と言っていいだろう。日本のアニメーションの未来を占う意味でも、見ておきたい1本。もちろん、家族連れにもお薦めだ。(井上健一)

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