進化を続けるカノエラナ、オリジナリティとユーモアに満ちたツアーファイナル

    「とうめいはーん!!!ふくをマネくぜ勇者たち。」【バンド編】 2017.6.10 渋谷WWW X
    今年2月にリリースした2nd mini album『「カノエ上等。」』を携えて、カノエラナが開催した東名阪福ワンマンツアー「とうめいはーん!!!ふくをマネくぜ勇者たち。」の東京ファイナルが渋谷WWW Xで行なわれた。【バンド編】と称した今回のツアーの直前には【弾き語り編】として、全国17ヵ所をギター1本でまわる弾き語りライブを繰り広げていたカノエ。そんな武者修行のようなツアーを経たいま、その表現力とオリジナリティにはさらなる磨きがかかり、進化したカノエラナにしか作ることのできないユーモア溢れるライブを見せてくれた。
    カノエラナ 撮影=久保永隆二
    オープニングは薄い布に覆われたステージの奥に立つカノエがピアノの伴奏に合わせて斉唱する「私立カノエ厨学校校歌」だった。ここでは普段のロックな歌唱ではなく、あたかも音楽の授業で歌う合唱のような歌い方なのもカノエらしいこだわり。そしてステージを覆う幕がばさりと落とされると、バンドサウンドにのせた自己紹介ソング「カノエラナです。」で一気に会場のボルテージがマックスになる。カノエが身にまとう真っ赤な法被のような衣装の背中には龍の刺繍。これまでにリリースされてきた作品でも「参上。」だの「上等。」だのと不良っぽい用語を好んで使ってきたカノエには、そんな衣装もよく似合う。ライブでお客さんが挙げる手の動きを揶揄したアップナンバー「マネキネコ」や、“電車の本数ハンパねぇ”と九州は佐賀から上京してきた視点で大都会を歌う「トーキョー」など、そのサウンドやメロディは21歳の女の子が歌うには少し泥臭いくらいだが、そこに今風の言葉をのせるのがカノエ流だ。こぶしをきかせた渋い歌で世相に毒づく「おーい兄ちゃん」から、オカルト好きな嗜好を全開にして地縛霊の恋心をポップな歌にした「恋する地縛霊」まで、その鋭い観察眼で日常のあらゆることをネタにするセンスは本当にユニークだ。
    カノエラナ 撮影=久保永隆二
    序盤を終えて「このツアーでいちばん暑い!」と、汗ダクになりながらも爽やかな笑顔を見せてくれた最初のMC。「アイデンティティがどっかにいっとるよ(笑)」と、自身のトレードマークになっている斜めの前髪の乱れ具体をネタにして笑いをとる場面もあった。そして「バンドでやると“原点に帰ったな”ていう気持ちがする曲をやろうと思います」と紹介したのはバラードナンバー「星と太陽」だった。流通しているCDには未収録ながら音楽配信サイトEggsではフル尺でアップされており、ファンの間では根強い人気のある楽曲だ。ひとり暗闇を彷徨うような絶望を、ときどき顔をしかめるように感情を込めて歌う。そのまま混沌としたシンセのイントロで雪崩れ込んで疾走感溢れるロックナンバー「I」へと続く。これもインディーズ時代からの曲だが、“運命、宿命、私は、負けない”と切実な歌声で吐き出されるフレーズには、普段は見せないカノエの内なる熱い衝動に触れるような瞬間だった。
    カノエラナ 撮影=久保永隆二
    「灼熱のゾーンはどうでしたか?」と、カノエが息を弾ませながらお客さんへと問いかければ、イエスを意味する大きな歓声が湧く。ここからは湯立つようなフロアの熱気をクールダウンするようにアコースティックコーナーへ突入し、「こまか」、「大事にしてもらえよ」とゆったり体を揺らすのに気持ちいい楽曲が続く。サポートギターの芳賀義彦とふたりで披露したのはスローバラード「恋とか愛とかそーいうの」。少し声を震わせながら吐息混じりで歌う男目線のラブソングには、元気いっぱいにロックする激しい楽曲だけではない、カノエラナのシンガーとしての真価が詰まっていた。
    カノエラナ 撮影=久保永隆二
    そして、渾身のピアノバラード「ピザまん」が素晴らしかった。そのサウンドだけで語るなら冬の王道バラードだが、歌詞に耳をすませてみれば、ひたすら“ピザまん食べたい”と切望するという違和感。そこにカノエが本気の歌唱で臨むから面白い。この“斜め感”は圧倒的なカノエのオリジナリティだと思う。ライブの終盤にかけては燦々と太陽が照りつけるサマーチューン「シャトルラン」を皮切りに、カノエの取り扱い説明書的な「ヒトミシリ」など、再びフロアの熱気に火をつけてライブはクライマックスへと向かっていった。「ワイパー、ワイパー、きれいに窓を拭きましょう」と言いながらお客さんが左右に大きく腕を振った「モットアタシヲ」から、「みなさん、よかですか? いきますよ!」というカノエの声を合図に緑色のツアータオルがお客さんの頭上をくるくると回ったお祭りソング「夏の祭りのわっしょい歌(か)」まで、最高の一体感のなかでライブは幕を閉じた。
    カノエラナ 撮影=久保永隆二
    カノエラナは本質的には人見知りで引きこもりな女の子だ。だが、そんな彼女はひとたびステージに上に立ったとき、途端にフロアを音楽で巧みに翻弄するようなエンターテイナーになる。シンガーソングライターとして自分の気持ちを吐露するだけに終始するのではなく、随所にユーモアを散りばめながら、まずはお客さんを楽しませることを忘れない。多少のMCの失敗は佐賀弁で「よかよか!」と受け流してしまう度胸も含めて、同世代のシンガーソングライターにはない豪胆さと覚悟がカノエラナには備わっていると思う。
    カノエラナ / 日高央(THE STARBEMS) 撮影=久保永隆二
    カノエラナ / 日高央(THE STARBEMS) 撮影=久保永隆二
    アンコールでは7月19日にリリースされる3rd mini album『「カノエ暴走。」』から「たのしいバストの数え歌」を、プロデュースを手がけた日高央(THE STARBEMS)をゲストに迎えて披露した。カノエと日高は年齢的には27歳の開きがあるが、カノエはそんな日高を「兄さん、兄さん!」と慕いながら、MCではこの曲にちなんだ“おっぱいトーク”で盛り上がる。そして会場が笑いに包まれるなか、大の大人が悪戯心と悪ノリ全開で届けた「たのしいバストの数え歌」は「ABCの歌」をモチーフに、ゴリゴリのロックアレンジがかっこいい1曲だった。その後、日高がステージを去ると、「真夏に片想い?」をハンドマイクで元気いっぱいに歌い、大ジャンプでライブを締めくくったカノエ。最後に「カノエは全力で突っ走っていきますので、ついてきてください!」と、彼女らしい迷いのない言葉で集まったお客さんへと別れを告げた。メジャーデビューから間もなく1年。伸び盛りの21歳の勢いは、今後ますます加速していきそうだ。

    取材・文=秦理絵 撮影=久保永隆二
    カノエラナ 撮影=久保永隆二
    セットリスト

    「とうめいはーん!!!ふくをマネくぜ勇者たち。」【バンド編】 2017.6.10 渋谷WWW X
    00. 私立カノエ厨学校校歌
    01. カノエラナです。
    02. マネキネコ
    03. トーキョー
    04. おーい兄ちゃん
    05. 恋する地縛霊
    06. My World
    07. 星と太陽
    08. I
    09. ひとりかく恋慕
    10. こまか
    11. 大事にしてもらえよ
    12. 恋とか愛とかそーいうの
    13. ピザまん
    14. シャトルラン
    15. ヒトミシリ
    16. モットアタシヲ
    17. 夏の祭りのわっしょい歌
    [ENCORE]
    18. たのしいバストの数え歌
    19. 真夏に片想い?

    リリース情報

    3rd mini album「カノエ暴走。」
    2017.07.19(Wed)Release
    初回盤

    【初回限定盤】(CD+DVD)
    WPZL-31343/4
    ¥2,000+税
    通常盤

    【通常盤】(CD)
    WPCL-12704
    ¥1,500+税
    [CD収録曲]
    01. 私立カノエ厨学校校歌
    02. 沼に落ちて
    03. たのしいバストの数え歌
    04. ダイエットのうた
    05. SNS
    06. バレンタインのうた
    [初回限定盤DVD収録内容]
    ■ご挨拶ワンマンツアー2017「勇者を探して三千里~ぼっちで広げる旅の地図~」【弾き語り編】at HEAVEN'S ROCKさいたま新都心
    01. トーキョー
    02. おーい兄ちゃん
    03. 大事にしてもらえよ
    ■「鉄壁スカート」レコーディングドキュメンタリー〜漆黒のゴールドウィングで音録ったばい〜

    ライブ情報

    3rd mini album「カノエ暴走。」リリースパーティー
    「今日もわやわやvol.4649~カノエ厨学夏休みの巻~」
    7月30日(日)
    東京・代官山UNIT
    OPEN 15:00 / START 16:00
    チケット料金:前売¥3,500 (税込・1ドリンク代別)
    *スタンディング
    *未就学児入場不可、12才以下は保護者同伴の上チケット購入の上入場可
    【プレイガイド最速チケット先行】
    受付期間:6月17日(土)12:00〜6月22日(木)23:59
     

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