【the pillows】the pillows 日本武
道館 2009年9月16日

取材:高岡彩子

the pillowsが誕生してちょうど20年、結成日でもある記念すべき9月16日に、彼らの初となる武道館公演が行われた。ステージを覆う幕にはシンボルマークの3つの剣が映し出され、それが徐々に近づき重なった瞬間、盛大な爆発とともにステージにメンバーが登場。オープニングはアッパーな曲を持ってくるのかと思いきや、流れ出したのは寂しげな電子音。「Thank you, my twilight」だ! 観客は悲鳴のような歓声を上げ、爆音で唸りをあげるギターに合わせて一斉に拳を突き上げる。予想外の選曲で驚かせつつも、20周年という節目を祝う、この大きな誕生日会にふわさしいスタートを切った。 前半は「MY FOOT」や「No Surrender」など比較的新しめの楽曲でロックに攻め続け、“今朝、目が覚めたら20年経ってました。目を覚ましたのに…まだ夢の中だ!”という山中さわお(Vo&Gu)のMCとともに始まった「Wake up! dodo」でさらに盛り上がりを畳み掛けていく。そして、「90's MY LIFE」「ぼくは かけら」といったインディーズ時代の曲が、今日という日のスペシャル感をさらに煽り、60‘s風ブリティッシュサウンドを彷彿させる跳ねるビートに客席のボルテージは留まることなく上昇。続く「1989」ではスクリーンにバンド結成日である“1989.9.16”から始まるカウントが映し出され、その日付は徐々に今日へと近づく。the pillowsの20年間の軌跡を辿りながら聴く、“Please catche this my song”という歌詞は“俺の歌を聴いてくれ!!”という叫びのように感じられ、胸に突き刺さってくる。会場を包むファンの凄まじいほどの熱気と興奮は「Funny Bunny」での大合唱へと変わり、1万人の観客がひとつになって叫び歌う光景は、この日のハイライトだったのではないだろうか。 “身体には限界があるが、心に限界はない。まだ、僕の心の中の小さな宇宙は限界がなく、その宇宙に時々光が射す。それが君たちだった”と声をつまらせながら山中が叫ぶと「ストレンジ カメレオン」が始まった。バンドが大きな壁や孤独を乗り越え、再生のために作られた大事な一曲だ。涙ぐむ者もいれば、ともに口ずさむ者、皆がそれぞれの思いを胸に抱きながら、壮大なメロディーと分厚いバンドサウンドが絡み合うこの曲に酔いしれていた。 “この20年間涙が出るくらいうれしかったことって数えるくらいしかないんだけど、今日はそういう1日になりました。ありがとう!”。自分たちの音楽に絶対的な自信があるからこそ、過去のインタビューやMCで感謝の言葉を口にすることはほとんどなかった山中。そんな彼が叫んだ“ありがとう”というこのひと言に、言いようのない感動を覚えたのは私だけではないだろう。“20年間流行らない音楽を鳴らし続けてきた”と語る彼らが何かを成し遂げた瞬間が、この日の武道館には確かにあった。もちろん、これは通過点に過ぎず、バンドはここで終わりではない。“心の限界はまだだ”と言う山中の言葉通り、the pillowsはこれからも音楽業界の道なき道に自分たちの足跡を残していくことだろう。
the pillows プロフィール

1989年、山中さわお(Vo&Gt)を中心に結成。既存のJロックとは一線を画した、洋楽的な視点を持つギター・ロック・バンドの先駆者的存在。91年5月にシングル「雨にうたえば」で<ポニーキャニオン>よりデビュー。1993年にリーダーの上田ケンジが脱退し、表立った活動が休止状態になるも、翌年<キングレコード>に移籍し、残った3人で活動を再開。バンド・ブームの余韻が残る90年代前半、過小評価されていた彼らの音楽だったが、97年1月発表の5thアルバム『Please Mr. Lostman』より、徐々に状況が変わっていく。60's風のテイスティなメロディ、シンプルかつラウドなサウンドが耳の肥えた若いロック・リスナーを中心に話題を呼び、99年1月に傑作の誉れ高い7thアルバム『RUNNERS HIGH』をリリース。ロック・ファンを中心に絶大な支持を獲得していった。00年7月発表の「Ride on shooting star」はOVA『フリクリ』の主題歌、11月発表の「I think I can」が『スポーツMAX』のEDテーマに起用。その後もコンスタントにリリースやライヴ活度を続け、06年より<avex trax>に移籍。09年に結成20周年を迎え、結成20周年記念日となる9月16日には初となる日本武道館単独公演を敢行。チケットは一般発売後10分で完売したため入手困難なプレミアムチケットとなり、会場には全国から1万人のファンが集結した。また、そんな彼らは多くのミュージシャンから支持を得ており、14年2月には結成25周年を記念したトリビュートアルバム『ROCK AND SYMPATHY』がリリースされた。オフィシャルHP
Twitter
Facebook

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」