【椎名林檎】椎名林檎 さいたまスー
パーアリーナ 2008年11月29日

撮影:外山 繁/取材:ジャガー

いち音楽家としてはもちろんのこと、ひとりの女性としても尊敬や憧れを抱いてしまう椎名林檎。さいたまスーパーアリーナという大舞台を超満員にし、それを3日間やり遂げてしまうのだからさすがというかすごい。全26曲というボリュームにもかかわらず、本当に時間の経過が早かった。“まだ観ていたい、きたい”と切望する程、魅力にあふれるデビュー10周年記念ライヴだった。 斎藤ネコ率いるオーケストラがピットにスタンバイすると、観客はゆっくりと立ち上がり始まりの時を待った。1曲目「ハツコイ娼女」の何とも言えない神秘的なハーモニーが奏でられ、“おこしやす”の文字がスクリーンに映し出されると拍手が沸き起こる。そして、レーザー幕が開くと白い角に細い糸を巻き付けたようなヘッドドレスとモスグリーンのロングドレスという幻想的、且つで強烈な衣装で椎名林檎が忽然と姿を現す。神々しいまでの姿と声に客席全体が昂揚する。何度聴いても歌い出しの張りつめた空気で鳥肌が立ってしまう「ここでキスして。」、その名前を全国区にのし上げるヒットとなった「本能」、大舞台で聴くといっそう奥行きを感じさせた「闇に降る雨」と名曲は続いていく。 また、「浴室」ではステージが180度回転し、キッチンのセットが現れると、包丁を手に曲のリズムに合わせて高速でリンゴを切り刻む演出など見どころも満載。また、衣裳チェンジの間上映されたスライドショーでは、幼少時代からの写真と共に彼女の生い立ちを7歳になる愛息がナレーションを務めて紹介するという微笑ましい一幕も。その後は兄、椎名純平との共演や、ダンサーが華やかに彩りを添える。さらに「御祭騒ぎ」では総勢80人もの阿波おどりの面々が登場し、ライヴはクライマックスへ。アンコールでは、ちょうど息子と同じ年頃に作ったという処女作や未発表の新曲を披露。実にエンターテインメント性の高い贅の尽くされた2時間半の記念祭を堪能した。 しかしながら、次にこのようなライヴに会えるのはいつになるのか。10周年がこれだけ素晴らしいものだったので、早くも20周年、30周年ライヴが待ち遠しい思いだ。その時は是が非でも駆け付けたい。
椎名林檎 プロフィール

78年11月25日生まれ、福岡県出身の「自称・新宿系自作自演屋」。M&LH(めし食ってラヴ・ホテルの意)発言に代表されるオトコのリビドーを駆り立てまくる過激な言動、抜群に美しい容姿、そして何よりも音楽家としての凄まじいまでの才能……今までこんな娘に出会ったことがあっただろうか。

98年、1stシングル「幸福論」にてメジャー・デビュー。猛烈な常習性をもち合わせた歌謡チックなメロディ・ラインが印象的な力作であったが、セールス的には不発で終わる。がしかし翌99年、赤裸々なラヴ・ソング「ここでキスして。」のヒットをきっかけとして、1stアルバム『無罪モラトリアム』で大ブレイクを果たす。持ち前のナイス・メロディ、強力演奏陣によるオルタナティヴ・ロック的な轟音サウンド、そしてすべての人間が抱える葛藤——自己実現、恋愛やセックス、世知辛い社会への違和感、怒り——を徹底的にリアルに描いた詞世界。それらは、あらんばかりの賞賛でもって迎えられる。一方、本人の意思とは関係なくワカモノの代弁者的存在へとなっていった点も見逃せない。

そして00年には、椎名林檎のアイデンティティが凝縮された渾身の2ndアルバム『勝訴ストリップ』をリリース、200万枚を超すメガ・セールスを記録した。完全に日本音楽シーンを制覇し、もはや国民現象と言われるまでになった彼女。素直に喜ぶべき事態ではあるが、真摯でストイックな表現者であるが故の苦悩も尋常ではなかろう。02年にカヴァー・アルバム『唄ひ手冥利〜其ノ壱〜』、03年には久々のオリジナル・アルバム『加爾基 精液 栗ノ花』をドロップ。シンガーとしての類稀な能力をまざまざと見せつけた。その後、デビュー前から彼女が切望していたバンド・プロジェクトとして東京事変を結成し、04年9月のデビュー・シングル「群青日和」でいよいよ本格的に活動をスタートさせた。

そして06年11月、椎名林檎×SOIL &“PIMP”SESSIONS名義で配信限定シングル「カリソメ乙女(DEATH JAZZ ver.)をリリース。07年2月には、彼女が初の音楽監督に就任した映画『さくらん』をイメージして制作された4thアルバム『平成風俗』を発表。実に4年ぶりとなるこの作品では、兼ねてから親交のあった斎藤ネコとの全篇に渡るコラボレーションが実現し、総勢70人のゴージャスなオーケストラによる演奏曲も収録されており、彼女にしか出来ないサウンド・アプローチによって唯一無二の才能を感じさせる最高傑作と評された。

08年7月、デビュー10周年記念アルバム『私と放電』とシングル・クリップ集DVD『私の発電』、伝説のライヴDVD『座禅エクスタシー』など、数々の記念作品をリリース。08年11月28(金)・29日(土)・30日(日)の3日間、さいたまスーパーアリーナにて行われた10周年記念ライヴ『椎名林檎(生)林檎博’08〜10周年記念祭〜』を開催。10年間の集大成を披露した公演は3日間で延べ55,000人を動員。09年3月、08年度の際立った業績、新生面を開いた活動が高く評価され、『文化庁主催平成20年度芸術選奨 文部科学大臣新人賞(大衆芸能部門)』を受賞。同年6月、実に6年ぶりとなるソロ名義アルバム『三文ゴシップ』を発表し、オリコン週間チャート1位を獲得。8月には映像作品集DVD『性的ヒーリング〜其ノ四〜』をリリース。他の追随を許さない唯一無比の世界を表現する音楽家として活躍中だ。椎名林檎 オフィシャルHP(アーティスト)
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