撮影:三浦憲治/取材:土内 昇

“バカなんでね、呼ばれれば何回でも出てきます”と言い放った瞬火(Ba&Vo)。アンコールに応えすぎることに賛否両論の声があるとも語っていたが、この日は6度応え、全10曲をプレイした。読者の中には“それはやりすぎだ!”と思う方もいるだろう。しかし、これはライヴなのである。その場にいる者の感情が全てなのだ。ライヴは序盤から熱く、矢継ぎ早に繰り出されるスリリングなメタルナンバーに観客はヘッドバンキングや拳を突き上げて応戦していた。 陰陽座の楽曲はヘヴィチューンであっても明と暗、柔と剛と場面が目まぐるしく移り変わる。特に安珍・清姫伝説をモチーフにした「道成寺蛇ノ獄」では、清姫の愛憎が取り憑いたような鬼気迫る黒猫と物語の語り部のような瞬火のツインヴォーカル、ドラマチックに展開していく場面を描くようにツインリードギターが交錯するサウンドが観客を圧倒し、その意識を完全に楽曲の世界の中へと引き込んでいた。逆に「生きることとみつけたり」や「亥の子唄」などでは客席に無数の扇子が舞い、それがメンバーのテンションを触発し、ライヴを際限なく盛り上げていく。 そして、オーラスの「骸」を終えて最後に場内に咲いたのは、メンバーの達成感にも似た笑顔と、満員御礼の客席の満足げな笑顔。それは互いの魂を食らい合い、完全燃焼した者のみが浮かべる至福の表情だった。要するに、この場にいた者にとっては、6回のアンコールが多すぎるか否かなど愚問なのである。それほど、最高のライヴだったということだ。
陰陽座 プロフィール

オンミョウザ:1999年、大阪にて結成。“妖怪ヘヴィメタル”という惹句を掲げ、人間のあらゆる感情を映す“妖怪”を題材とし、道なき道を切り開く信念を“ヘヴィメタル”の名の下に貫く。正統的ヘヴィメタルを音楽性の基盤としながらも、男女ツインヴォーカルとツインリードギターによる変幻自在な表現により、日本文化に徹底的に拘った唯一無二の世界観を結成時から現在まで淀みなく展開。自主製作で2 枚のアルバムを発表した後、 2001年にシングル「月に叢雲花に風」でメジャーデビュー。以降、精力的な音源制作はもちろん、すでに全都道府県を2 周しているという事実が物語るように、生粋のライヴバンドとしても歩を緩めることなく邁進中。安易な“変化”よりも“進化”と“深化”を信条とし、“上”ではなく“前”に向かって着実に歩み続けることを最大の理念として実行する、極めて希有なバンドである。陰陽座 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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