取材:高木智史

ラムジの大阪、東京ワンマンライヴの東京ステージがShibuya O-Crestで行なわれた。まずはオープニングアクトが登場したのだが、一風変わった企画からスタートする。ステージに上がった出演者は一般からの応募により、選考されたファンだったのである。演目はその出演者によるラムジの楽曲。いわゆるのど自慢大会形式だ。伴奏にはラムジメンバーのSJRが直接入り、サポートする。軽やかな司会進行のもと、4人の応募者が歌ったのだが、これがなかなかのもの。堂々と感情を込めて歌い、会場を温かい雰囲気にしていた。そして、“エントリーナンバー5”と告げられ、山下が登場する。だんだんと手拍子が大きくなり「Living Toy」でライヴはスタートした。SJRのギターを中心としたサウンドに山下のヴォーカルが存在感を際立たせる。それは山下の声が特質なものであるからだ。一聴、伸びが良く、通りの良い声質に思えるのだが、彼の声には独特の粘着質なものがある。いい意味でねっとりと声を響かせ、歌詞を聴いた者の心に残していく。ラムジは自分たちの音楽性を“アコロック(アコースティックギター・ロック)”と名付けている。言い換えれば、ギターと歌だけでも成立するロック。SJRによる抜群のメロディーと特徴的な山下のヴォーカルを感じた時にラムジの真骨頂を見せつけられたように思えたのだった。それでいて、このライヴではバンドスタイルでの楽曲や、打ち込みを取り入れたものと、さまざまな手法で楽曲を聴かせていく。他のアーティストのプロデュースも手掛けているふたりであるから、ライヴの見せ方も実に表現豊かだ。しっとりとした失恋の歌である「途後」、情感が込められ、疾走感のあるロックサウンドが印象的な「ROCK FROM 80’S」と、それぞれの楽曲の色に合わせたかのように聴き入り、跳ねるファンの姿があった。 山下は終盤、ファンに向けて感謝の言葉を語る。“デビューして3年。その3年は自分たちの考えるままに進んできた3年です。そこでファンになってくれたみんなにお礼をしなくてはいけない。絶対に武道館に連れて行く”。その言葉からは切実な想いが感じられた。アンコールの「シャチ」では歌詞の一節である“確かなこの道を歩きながらずっとずっと君と”をメンバーとファンが歌い合う。その歌はラムジとファンの信頼で結ばれた両者が両者へ贈った言葉だったように思う。
ラムジ プロフィール

福岡県出身の山下祐樹(vo)と神奈川県出身の井上慎二郎(g)の2人からなるユニット。山下は全曲の歌唱と一部の作詞、井上は作詞・作曲・アレンジ・プロデュースを担当している。北九州よりただ「歌いたいから」という理由だけであてもなく上京してきた未完の大器・山下と、96年にシンガー・ソングライターとしてデビュー、以降吉田拓郎やPUFFY等への楽曲提供など幅広い音楽活動を展開していた井上。この対照的とも言える2人が03年に友人を介して奇跡の邂逅、ラムジ結成へと至ったのである。山下の強い存在感と魅力溢れるヴォーカル、そして井上の高い楽曲制作能力が見事に合致し、極上のサウンド・マジックが生まれた。05年発表の3曲入り1stシングル「1ラムジ」から「2ラムジ」「3ラムジ」とシングル・リリースを重ね、06年には待望の1stアルバム『ラムレンジャー』を発表。武部聡志がピアノで参加した「Chain」、山下の同郷175Rとのコラボ曲「PIECE」などが話題を呼んだ。ラムジOfficial Website
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OKMusic編集部

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