取材:高木智史

約1年振りとなるミニアルバム『CHANGE THE FUTURE』のリリースを4月2日に控えた、このライヴでFAT PROPは東京のファンを確実に獲得した。彼らは鹿児島のバンドで、言ってみればアウェイ。ましてやリリース前ということで否が応でも成功させなくてはという気負いもあっただろう。だが、彼らはむしろ自然体に自らの音楽を見せつけてくれた。MCでは方言混じりのトークに会場の雰囲気は和み、次第に笑いに包まれていく。そして肝心のライヴも音楽性と同様、さまざまな色を見せ、魅了していった。まず1曲目の「Looking for new joy」では、彼らの真骨頂であるピアノを駆使した起承転結のあるドラマティックでメロウなメロディーと、エモーショナルロックのダイナミックなサウンドで、そこに居る者の意識を惹き付ける。だが、続く「S.G.S」では先程会場に漂った緊張感にも似た空気をポップなサウンドでもって一瞬にして変え、観客を乗せる。今別府 知大(Vo&Key)は、体ごと鍵盤を弾き叩き、それを筆頭に他のメンバーもエネルギッシュなステージングを見せる。最初は腕組みして見ていた観客も完全に前のめりになり、中には拳を掲げる者もいた。ダイナミクスとメロウを繰り返すことで緩急をつけながら進んでいったライヴは、最後は観客自らが曲に合わせてクラップし、大喝采で終わった。ダイナミクスなサウンドが聴く者の感情を無条件に突き動かし、美しいピアノの旋律で構成されるメロウなサウンドが心の琴線に触れる。そんな豊かな音楽性と表現力を感じたライヴだった。

OKMusic編集部

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