【THE BACK HORN】『「KYO-MEIツアー
」~リヴスコール~』2013年1月6日
at 日本武道館

撮影:ほりたよしか/取材:石田博嗣

 3.11の震災を経て制作されたアルバム『リヴスコール』。昨年9月よりスタートした同作を引っ提げてのツアーもクライマックスということもあり、一打一打、一音一音、一叫一叫に生命力がみなぎり、楽曲がさらなる生々しさを持って届いてきた。よく“ツアーが終わって初めてアルバムが完成する”とアーティストが豪語しているが、まさにこのことを言うのだろう。今日のライヴを体感した後に同作を聴いて、今までと違った印象を受けた。答えを知ってから騙し絵を観た時のように、さらなる解釈だったり、広がりや深さだったり、よりリアルな音像を感じたのだった。
 ライヴはアルバムと同じく「トロイメライ」で静かに幕を開ける。そのビートは鼓動のように響き、躍動感のあるベースと感情的なギターが紡ぐサウンドには体温が宿り、咆哮のような歌声は恩愛の情にあふれ、聴く者ひとりひとりを包み込みながら武道館という空間にアルバムの世界観を作り上げていく。また、ステージ上にはアンプと楽器があるのみで、派手な照明もなければ、大掛かりな仕掛けもないのだが、むしろ演出など必要としない説得力がそこにはあった。ライヴ中、『リヴスコール』について松田晋二(Dr)が“生きている実感を味わいたい”という願いを込めて作ったと語っていたが、まさしく4人の生命の息吹こそが最上の演出になっていたと言える。それゆえにアルバム曲でなくても、「閉ざされた世界」の重みが増したスケール感といい、「美しい名前」の張り詰めた緊張感といい、今まで以上に濃厚な感触を味わった。哀しみ、迷い、痛み、葛藤…それらと向き合うことが生きる証とばかりに、それぞれの楽曲が胸に響いてくるのだ。これぞ“共鳴”だろう。THE BACK HORNが『リヴスコール』というアルバムで奏でたかった音、伝えたかった想いといったものをダイレクトに受け取ったと言える。 

セットリスト

  1. トロイメライ
  2. シリウス
  3. 墓石フィーバー
  4. 超常現象
  5. グレイゾーン
  6. 閉ざされた世界
  7. いつものドアを
  8. 風の詩
  9. 美しい名前
  10. 自由
  11. 星降る夜のビート
  12. コバルトブルー
  13. 戦う君よ
  14. シンフォニア
  15. 世界中に花束を
  16. <ENCORE>
  17. ミュージック
  18. ラピスラズリ
  19. サイレン
THE BACK HORN プロフィール

ザ・バックホーン:1998年結成。“KYO-MEI”という言葉をテーマに、聴く人の心を震わせる音楽を届けている。01年にシングル「サニー」をメジャーリリース。17年には宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」が話題に。結成20周年となる18年、3月にメジャーでは初となるミニアルバム『情景泥棒』を、10月にはインディーズ時代の楽曲を再録した新作アルバム『ALL INDIES THE BACK HORN』を発表。また、ベストセラー作家・住野よるとのコラボレーション企画も注目を集め、2021年末にはフィジカルとして約4年5カ月振りとなる待望のシングル「希望を鳴らせ」をリリース!THE BACK HORN オフィシャルHP

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着