【NICO Touches the Walls】『NICO
Touches the Walls TOUR 2015 まっす
ぐなツアー』2015年7月19日 at 東京
国際フォーラム ホールA
1曲目は、初期のナンバー「雨のブルース」。光村龍哉(Vo&Gu)がアコギを爪弾いて艶っぽい声を聴かせ、途中からバンドアレンジになるうち、ビタースウィートな味わいのアレンジが、ホールにしっとりと染み渡っていく。この時点でもう、落ち着いた堂々たる演奏が頼もしくて仕方ない。余裕があって、歌も聴き取りやすい。「TOKYO Dreamer」が始まれば、坂倉心悟(Ba)と対馬祥太郎(Dr)の繰り出すビートに高揚させられ、「ローハイド」での“行こうぜ、東京ーーーッ!”という光村の叫びで照明は一気に明るくオン! 古村大介(Gu)もステージ前方へ身を乗り出し、鮮やかにソロを弾きまくる。笑顔がこぼれる4人の表情は、今の充実ぶりを物語っていた。
坂倉のベースがリードする「いいこになっちゃいけないの」では、妖しげな青白いライティングの下、光村がオネエ言葉で前振りを入れ、オルガン調のギターソロもノリノリでキメる。さらに、“ツアーのために、久しぶりに引っぱり出してきた曲”という光村の紹介から「かけら-総べての想いたちへ-」「エトランジェ」「君だけ」を披露。このあたりでライヴに緩急が生まれ、ホールならではの響きもうまく活かしていたように思う。
“歌っててめちゃくちゃ気持ち良いです! 東京国際フォーラムは初めてやるんですけど、こんなに音きれいだと思わなかった”と光村が嬉しそうに語る。なんでもここに初めて来たのは、6年前にメンバー全員でトラヴィスを観た(ほぼ最前列!)時なのだという。そうしたエピソードも交えながら、“やっと自分たちの音楽が届けられる自信がついて、充実してます。実は20代最後(当日の時点で光村と坂倉は29歳、古村と対馬は30歳)のツアーなんですよ(笑)。20代をこのバンドに捧げてきたし、集大成みたいにできたらいいねなんて言ってたんですけどね。でもね、アコースティックアルバムを作ったあたりから、100パーセント理解してると思ってた曲も、案外そうではないんだなと。磨けばもっと光るんだってことをここに来て気付いてしまったんで、集大成どころじゃなくて、今までの曲を全部ひっくり返したい感じです。進化せねばならない、そんな思いで30代を迎えようとしてます”と熱い心情を吐露してもくれた。
このあと、《間違ってた なんか全部間違ってた》と歌う「まっすぐなうた」が強く胸を打ったのは言うまでもない。タイトル通りの疾走感あふれる直球ロックチューンで、なおかつツアーを象徴する楽曲だけに、さぞかし観客のアクションは大きいのかと思いきやそうではなく、その多くが感慨深い面持ちで、瞬間を噛み締めるように聴いていたのが印象的だった。爆音の中、メンバーもファンも胸がいっぱいだ。しかし、まだまだ攻める。“記念すべき100曲目のリリース曲。俺らの新しいステージです!”と光村が叫んで初披露された新曲「渦と渦」は、「まっすぐなうた」の先を歌ったであろう《まだ負けられない》《まだくたばれない》という詞が耳に残り、NICO転換期の混沌を爆発力に変えたようなパワフルなサウンドも含めて素晴らしかった。
必殺「天地ガエシ」で本編を締め、アンコールではアコタッチ(アコースティック)にモードチェンジ。「手をたたけ」でのクアトロドラムをはじめ、持ち技を惜しみなく放出しつつ、音楽の喜びを伝え、観客のコーラス、口笛(「口笛吹いて、こんにちは」)もあっさり味方に付ける。ここまでくると、もはや無敵の風格。本当にすごいバンドになってきている。常に試行錯誤を繰り返してきた結果、全ての曲がつながって今の彼らがある。この日は9月に「渦と渦」をシングルリリースすること、来年1月に3度目となる日本武道館公演を開催することも発表され、楽しみがまた増えた。そう言えば、「渦と渦」のカップリングには“僕は30になるけれど”という曲が入るんだとか。30代のNICO、期待しかありません!