【lynch.】『lynch. presents 「THE
VERSUS」feat. sads』2015年9月30日
at 赤坂BLITZ

取材:土屋京輔

 lynch.がスタートさせた『THE VERSUS』の第一回目は、sadsとの“夢の競演”となった。しかし、これは単なる対バン形式のイベントではない。清春(Vo/sads)に衝撃を受けてシンガーを志した葉月(Vo/lynch.)にとって、かつて黒夢のオープニングアクトを務めたこともひとつの夢の実現だが、今回はあくまでも対等な立場でのステージである。lynch.が自らの力で一心不乱に邁進し続け、相応の成果を得てきたからこそ、この日の舞台が現実のものとなったわけだ。

 その熱い思いはsadsも十分に心得ていたようだ。“後輩”からの崇高な指名を受けた立場だからこそ、いつもと変わらない轟音をまとった、“これがsadsだ”と主張するかのごとく、疾風怒濤のパフォーマンスを叩き付けていく。それだけでも強烈な意志を感じるが、約60分のセットながら、ドラム/ギター・ソロの時間を組み込んだり、清春は途中でメイクもガラリと変えたり、通常なら単独公演でしかあり得ない演出も用意。さらに後半の「Because」は葉月とのツインヴォーカル・スタイルで披露、シーンの先駆者ゆえの極上の愛情表現がここにはあった。

 そんな熱狂空間を受け継いだlynch.の勇壮たるライヴも圧巻だった。sadsの「HATE」のカバーを含む、アグレッシブな楽曲を矢継ぎ早に畳み掛ける5人。まさに気迫が音に表れている状態であり、憧憬の念と感謝の気持ちが昇華されていく。清春が招き入れられたアンコールでの「ADORE」も興味深かった。初期からの代表曲を、人生の一大転機をもたらした先人が歌う。その際の葉月の泣き顔とも笑顔とも捉えられる恍惚とした表情に、これまでのlynch.の果敢な足跡を思い浮かべた人も少なくなかっただろう。彼らの次なる躍進に向けた重要な起点となる一夜だった。

セットリスト

  1. 【sads】
  2. 1.HONEY
  3. 2.HATE
  4. 3. See A Pink Thin Cellophane
  5. 4.SPIN
  6. 5.May I Stay
  7. 6.FREEZE
  8. 7.GOTHIC CIRCUS
  9. 8.NIGHTMARE
  10. 9.Because
  11. 10.WASTED
  12. 11.CRACKER’S BABY
  13. 【lynch.】
  14. 1.EXODUS
  15. 2.GREED
  16. 3.DEVIL
  17. 4.HATE(sadsカバー)
  18. 5.INVINCIBLE
  19. 6.GUILLOTINE
  20. 7.forgiven
  21. 8.the whirl
  22. 9.MIRRORS
  23. 10.THE FATAL HOUR HAS COME
  24. 11.THE BLASTED BACK BONE
  25. 12.ALL THIS I’LL GIVE YOU
  26. 13.pulse_
  27. 14.GALLOWS
  28. <ENCORE>
  29. 1.ADORE
  30. 2.EVOKE
lynch. プロフィール

リンチ:2004年8月、葉月と玲央と晁直の3人で結成。同年12月よりライヴ活動をスタートさせ、06年に悠介、10年に明徳が加入し現在の5人となり、6年にわたるインディーズでの活動にも終止符を打つ。11年6月、アルバム『I BELIEVE IN ME』でメジャー進出。その後もコンスタントに作品を発表。19年3月には『lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]』を幕張メッセ国際展示場にて開催し、約6000人を動員した。lynch. オフィシャルHP

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。