【Hilcrhyme】『Hilcrhyme Christma
s LIVE 2015 ユキノフルマチ』2015年
12月23日 at 豊洲PIT

撮影:濱谷幸江/取材:石田博嗣

 3年連続の開催となるHilcrhymeの『Christmas LIVE』。8月に大阪城野外音楽堂で行なった『Hilcrhyme LIVE 2015 「白昼夜 at 大阪城野外音楽堂」』以来のワンマンとなる本公演。その『白昼夜』の時と同じく、開演前からステージ上でDJ KATSUがDJプレイを披露し、しっとりとしたナンバーやハートフルなナンバーで会場内のクリスマスモードを高めていく。そして、開演10分前からステージ後方のLEDビジョンに残り時間が刻まれ、10秒前になると、待ち構えていたように3,000人の観客のカウントダウンがスタート! それが“0”になった時、客電が落とされ、大歓声と一緒にフロアーにいっぱいにサイリュムの光が一斉に咲き乱れた。

 オープニングナンバー「マイクリスマスキャロル」のイントロダクションが場内に広がる中、“Happy Merry Christmas!”とTOCが登場。ブルーのライトに染まったステージにゆっくりと雪が舞い降り、その中で切々と歌い上げるTOC。《いつも聞いているこのフレーズもこの音に乗せ 自分なりに歌って聞かせよう》というリリック通り、曲中に入る「ジングルベル」で観客の大合唱を誘うなど、『Christmas LIVE』らしい幕開けとなった。そして、DJ KATSUの操るトラックのビートが強調され、アッパーの「TOKYO CITY」へ。続く「トラヴェルマシン」では観客の高揚感を高めるようにBPMを引き上げ、場内はパーティー感全開に!  TOCの“Everybody Clap Your Hands! 手を叩け!”の扇動で、3,000人のクラップが場内に響き渡る。

 “師匠も走るくらい忙しい師走に、みなさん来てくれて、ありがとうございます。今日は寒かったでしょ? ごめんね。俺たちが心の底から温めてあげるね”。そんなMCの後に投下されたのは「パーソナルCOLOR」。ラップで届けられる《君だけの色を誇れ》などの言葉が自分に対する自信、自分を信じる力を与えてくれる。そのまま《君が変われば明日が変わる 明日が変われば何かが変わる》と歌う「Changes」と続き、序盤のクリスマスムードやパーティー感から一転、Hilcrhymeらしいストイックなメッセージ性あふれる楽曲のブロックに突入した。

  “これが2015年を踏まえて、Hilcrhymeの2016年の覚悟”と披露されたのは、《なりたいものはなんだ? やりたいことはなんだ?》と唱える「デタミネーション」。序盤がハートウォーミングな温くもりを感じさせるブロックだとすれば、このブロックはヒリヒリとしたパッションを感じさせる。それはHilcrhymeのルーツにはヒップホップがあるだけに、反逆的なパンクにも似た、ファイティングスピリッツに満ちていた。結成10周年を迎える2016年のHilcrhymeはさらに戦う姿勢を崩さないという決意表明でもあるのだろう。

 続いてのブロックはタイトルに“雪”が付く「YUKIDOKE」から。11月に四季をテーマにTOCが選曲したコンセプトアルバム『春夏秋冬 ~Hilcrhyme 4Seasons Collection~』を発表したばかりということもあって、「ツボミ」「FLOWER BLOOM」と季節感のある楽曲が続けて披露された。そんな四季に寄り添いながら、それらを背景に物語を紡ぎ、その季節の中での主人公の心情を描くのは、Hilcrhymeの歌楽曲の世界観のひとつの側面と言えるだろう。

 中盤、映画『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲「Merry Christmas Mr.Lawrence」を織り交ぜたDJ KATSUのソロタイム「SKY DRIVE Christmas Ver.」で再び、場内にクリスマムードを作り出すと、淡い恋心を綴った最新シングル「言えない 言えない」をはさみ、アコースティックセットに。ステージ中央に、キーボードを奏でるDJ KATSUと、その斜向かいで椅子に座って歌うTOC。「春夏秋冬」「Your Smile」「想送歌」といったハートフルなラブソングをメドレーで聴かせ、しっとりとした、それでいて温かく穏やかな空気が観る者全てをやさしく包み込む。

 しかし、TOCが“いい感じに緩く流れるこの空気をぶち壊そうと思います”と宣言! 音楽シーンが、日本の社会が、世界全体が激動だった2015年に対するHilcrhymeの意思表示ということで「I’m Ready」が投下される。クールなトラックに乗って届けられる辛辣なメッセージは前半のファイティングスピリッツにあふれたブロック同様、2016年のHilcrhymeの覚悟であり、決意が提示された。

 その後、「ウィライキ」でディープな音像を作り上げ、「Moon Rise」で観客を踊らせ、「エール」でコール&レスポンスを響かせると、いよいよライヴは終盤戦を迎える。“今日のセットリストはクリスマス仕様なんですが、ちょっとだけ哀しい感じに終わろうかと”と披露されたのは、切ない冬曲「もうバイバイ」。そして、再びステージに雪が舞い降る中、前述のコンセプトアルバム『春夏秋冬 ~Hilcrhyme 4Seasons Collection~』のために書き下ろした新曲であり、「もうバイバイ」のサイドストーリーとなっている「HAKU-SAN」が、しっとりと本編を締め括った。

 アンコールに応え、ステージに戻ってきたメンバー。“終わっちゃダメでしたか? 確かにね、思った以上に落ちた(笑)”との言葉のあとに披露された、2015年のHilcrhymeを象徴する攻撃的な楽曲「New Era」がフロアーを熱く焚き付ける。そして、そのヴォルテージを「リサイタル」でさらに上昇させ、「大丈夫」で観客のテンションを最高潮にまで導くと、オーラスは渾身のクリスマスソングということで、オープニングを飾った「マイクリスマスキャロル」をもう一度。LEDビジョンには本日のハイライトシーンや会場の様子、開場前のファンの笑顔が写し出され、再び観客の歌う「ジングルベル」が多幸感あふれる場内いっぱいに響き渡り、最後は『Christmas LIVE』らしい終幕を迎えたのだった。

セットリスト

  1. ~DJ KATSU~
  2. マイクリスマスキャロル
  3. TOKYO CITY
  4. トラヴェルマシン 
  5. パーソナルCOLOR
  6. Changes
  7. LOOP
  8. XYZ
  9. デタミネーション
  10. STAY ALIVE
  11. YUKIDOKE
  12. ツボミ
  13. FLOWER BLOOM
  14. SKY DRIVE Christmas Ver.
  15. 言えない 言えない 
  16. Acoustic Medley
  17. 〜春夏秋冬
  18. 〜Your Smile
  19. 〜想送歌
  20. I’m Ready         
  21. ウィライキ        
  22. Moon Rise
  23. East Area
  24. エール     
  25. もうバイバイ
  26. HAKU-SAN
  27. <ENCORE>
  28. New Era
  29. リサイタル
  30. 大丈夫 
  31. マイククリスマスキャロル
TOC プロフィール

ティーオーシー:HilcrhymeのMC、自身が主宰するレーベル『DRESS RECORDS』のレーベルヘッド、そして、アイウェアブランド『One Blood』のプロデューサーとして、多角的な活動を展開。Hilcrhymeとしてメジャー進出し、メジャーフィールドにもしっかりと爪痕を残し、スターダムに登っていったが、その活動に飽きたらずソロとしての活動を展開。2013年10月に1stシングル「BirthDay/Atonement」、14年11月にはソロとしての1stアルバム『IN PHASE』をリリースし、ソロとしての活躍の幅を広げていく。その後、ソロMCとしてのTOC、及び『DRESS RECORDS』がユニバーサルJとディールを結び、メジャーとして活動していくことを発表し、16年8月にメジャーデビューシングル「過呼吸」を、18年1月にメジャー第1弾アルバム『SHOWCASE』をドロップ。メジャーフィールドでポップスター/ポップグループとしての存在感とアプローチを形にしたHilcrhyme、Bボーイスタンス/ヒップホップ者としての自意識を強く押しだしたソロ。これまでに培われたふたつの動きがどう展開されていくか興味は尽きない。TOC オフィシャルHP

Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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