取材:金澤隆志

声をあげて、境界線の向こう側にメッセ
ージを!

メジャーデビューは今年7月だけど、バンドとしてのキャリアは長いんですよね。結成当初から音楽的に目指していたスタイルというのはあったのですか?

染谷
バンドのキャリアは8年以上になりますね。地元の友達が中心になって始めたんですけど、レゲエ、ラテン、ジャズ、ロック、ビジュアル系と、音楽的な好みがバラバラだったので、特定のジャンルを目指すのではなく、それぞれが得意とするポイントを見つけてそこを極めていこう、と。

3年前には染谷さんの第二の故郷でもある南アフリカでツアーをやったこともあるそうですね。

染谷
僕が南アフリカのことを歌っていても、他のメンバーには実感としてはピンと来ない。“だったら、行って見てくるか!”ということで行ってみたんです。南アフリカは人種差別が歴然としてあるんだけど、日本で“肌の色なんて関係ない、そんなの超えられるんだ”と歌っていても、それが南アフリカの人に届かないんだったらすごく無意味なことのように思えて。全然現地の人に受け入れられなくて、日本に帰国してから“やっぱ肌の色の違いって大きかったわ”って言いたくなかったから、全ライヴ成功させるために相当頑張りましたね。最終的にはすごく盛り上がって、大きな自信になりました。40年間続いた人種間の壁がたった30分のライヴで壊せるなんて、“音楽ってすげぇ!”って。

2ndシングルの「BORDER」は、まさにそうした体験が反映されている曲ですね。

染谷
この曲は、心の国境線、境界線を超えていこうというメッセージが込められているんですけど、全員で南アフリカの現状を目にしてきたからこそ、あの時みんなで体感したものを反映させることができるなって。同じ景色を見ているから、同じ思いで音を奏でることができる。僕らは決して上手いバンドではないんで、“思い”の部分には嘘があってはいけないと思っているんです。

結構な歴史がある曲だそうですね。

染谷
書いたのは5年前ですが、当時は言葉だけが先行してしまっているように感じて。その時歌っていたのは、僕が日本で生きていく上での苦しみで、歌詞にある“声をあげて超えよう”というのは、僕の心の中での叫び。他のメンバーにはその実感が備わっていないから、7人が団結できていないのではと。それで一旦封印したんです。でも、最近になってみんなで聴き返したら、今だったらFUNKISTとして表現する価値ありということになり、改めてやってみることにしたんです。さまざまな経験を積むことにより、新たな意味が備わってきて、外に向けて歌えるものになってきたんじゃないかと。

メッセージ性の強さは、Aメロの語りの部分で特に発揮されてて、グサグサと言葉が突き刺さりますね。

染谷
自分の中にはラップとメロディーの他に、引き出しとして語りがあるんです。語りというのが一番ストレートで強烈なんですよね。届きすぎる危険性もはらんでいるので、その場の空気に応じて使っていきたいですね。

演奏やアンサンブルにも、メッセージに負けないパワフルさが備わっていますね。

ヨシロウ
込められたメッセージが強い分、それを伝えるだけのアンサンブルやアレンジが絶対に必要でしたね。その意味では、メッセージ、演奏ともに、さまざまな経験を経てきた今だから可能だったところはあります。

「BORDER」が外に向けたメッセージだとしたら、カップリングの「style」は内なる自分への言葉のように感じました。

染谷
それもありますね。インディーズからメジャーに上がってきて仲間が増えた分、いろいろな意見を耳にするようになったんです。そんな中、自分の考えが本当に自分が望んでいることなのかが分からなくなることがあって。そんな時に、作家の高橋 歩さんがインドに小学校を作りに行くというので同行させてもらったんです。
ヨシロウ
子供たちと遊びながら学校を作ると聞いていたので、和やかな雰囲気を想像していたら、みんな汗だくになって、本気モードで作業をして(笑)。
染谷
日本からもボランティアの人たちが来ていて、その中に混じって僕らも作業したんですけど、言ってみれば金銭的な見返りなど何も期待できないにもかかわらず、なんでみんなこんなに一生懸命なのかと考えた時、“みんなやりたいからやっている”に尽きることを悟ったんです。“自分が子供たちの笑顔を見たいからやっているんだ”と。この曲はそうした経験から生まれた曲で、完成させたのもインドでした。自分がやりたいからやってるという人に“お前のスタイルでやるのを見せてくれ”という応援歌ですね。

ライヴテイクの「Beautiful Star」は、FUNKISTの熱気にあふれたライヴの景色が目に浮かぶようです。

染谷
高橋 歩さんのDVD『旅学』の発売記念イベントでのテイクです。僕の中では「style」はシリアス、この曲はハッピーというふうに対になっているんだけど、両方ともメッセージの終着点は“自分らしくいこうぜ”。

サウンド的に特に耳を傾けてほしいところは?

染谷
楽器の木が鳴ってる感じを感じてもらえれば。人間が奏でる、心地良い温かみが感じられるはずです。
ヨシロウ
今回はそれぞれの機材をはじめ、サウンドの役割分担的なことをかなりこだわってできたので、音にはすごく満足しています。楽器だけでも言葉と同じメッセージを届けたいという意識が音に出ているのかも。
FUNKIST プロフィール

01年に結成。染谷西郷(vo)、宮田泰治(g)、ヨシロウ(g)、春日井陽子(flu)、JOTARO(b)、オガチ(per)、住職(dr)からなる7人編成。日本のみならず、南アフリカ、アジア、インドなど、世界中所狭しと駆け回り、年間100本を超えるライヴを繰り広げてきた生粋のライヴ・バンドである。

染谷の故郷でもある南アフリカ仕組みのビートフルなリズムに染み入るメロディー&リリックが混ざり合い、ジャンルの壁を超えたFUNKIST独自のスタイルを生み出した。些細な日常の様子から世界中の様々な問題までを等身大の自分達で表現するその音楽は“笑顔あり”“涙あり”聴く人の心を掴んで離さない。そんな彼らのオーディエンスを巻き込んでのライヴは、老若男女問わず人と人を繋げ、国境も超えられる程の熱い想いで地球規模の大切なメッセージを伝えている。

08年4月、SHIBUYA-AXにて開催されたワンマン・ライヴで大成功を収めたことが皮切りとなり、5月に催された『9条世界会議ヒロシマ』では6,000人を超える観衆を前に圧巻のパフォーマンスを披露。そして7月には、<ポニーキャニオン>より1stシングル「my girl」でメジャー・デビュー。09年7月に10-FEET主催の『京都大作戦 2009』へ参戦、サブ・ステージながら1,000人以上を集客するなどしてFUNKIST旋風を巻き起こした。FUNKIST Official Website
公式サイト(レーベル)

OKMusic編集部

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