取材:石田博嗣

みんなを沸き立たせるようなアルバムに
したかった

今作はまるで応援歌のように、いろんなことに気付かされたり、力をもらいました。

1stアルバムはアコースティックギターと打ち込みだけで、どれだけ幅が作れるかっていうストイックな作り方をしたので、今回はエレキやピアノという今まで使わなかった楽器を使いたいっていう想いがあったんですね。楽器が多くなる分、サウンド的にはいろんな方向に振りきろうと思ってたんで、逆に歌詞で一本筋を通しておかなければいけないと思って、応援になるものだったり、みんなの力を呼び覚ますものを選んだんです。

確かにサウンド的にもバリエーションがあるのですが、曲を作っている時からいろいろな音が鳴っていたのですか?

だいたい私はアコギを持って曲を作り始めるんですよ。あとは、ライヴをイメージして“どれくらいのスピード感だったらいいかな?”ってドラムから作ったり…っていうふたつのパターンが、今回のアルバムはほとんどかな。このアルバムを作る前にワンマンライヴをやったので、ドラム、ベース、ギターのミュージシャンの方に出会えて、自分の中に使える楽器のイメージが増えてたんですね。でも、ピアノとかエレキ、打ち込み、生ドラムも含めて、おもちゃがいっぱいあるからって、それをどの曲にも全部使っていたら結局メニューが一緒になるから、カレー、クリームシチュー、ポトフ、全部鍋やん!(笑)みたいな煮込み方になってしまうんじゃなくて、それぞれが一番美味しく使えるようにってのは考えてたんですよ。だから、曲を書く時点でどういうものにしたいのかコントロールしつつ、レコーディングの時にバランスを考えたという感じですね。

アプローチの部分だと、「沈黙のスコーピオ」はアンドロイドの歌ということで、打ち込みとかテクノ的な要素をふんだんに使ったという感じですか?

そうですね。このまま終わっていくかもしれない世の中に対して警鐘を鳴らした曲なので、サイレンからスタートするっていうのも曲を書いている時からはありました。そういう意味でのテーマに添った音の作り方はありましたね。歌詞で歌っていることだったり、作りたい世界観というのを音にも反映させてます。

ギターの音が温かい「Don't Be Sorry」は?

おっ、気付きましたか(笑)。一番人間味のある曲なので、音もなるべく温かい方がいい…1stアルバムの頃からずっと一緒に作業してくれている安原兵衛さんも、そこを理解してミックスしてくれました。この曲は普段インタビューで話してることとか、私の中にある価値観というものを、ギターを弾きながらつらつらと書いたんで、下手したら8番ぐらいまで歌詞が書けそうだった(笑)。それだけ自分自身が出てるというか…1年前だったら“これは言い過ぎだから、詩的に変えよう”と思ったかもしれないことが、今の私は自然に歌えているという。

バリエーションがあるというところで、ヴォーカルスタイルも曲毎に変えているのですか?

それはね、“全曲違う人が歌ってるみたい”って言われて初めて気付いたぐらいで、そんなに“この曲にはこの歌い方で~”っていうのはなかったです。ブースに入ってヘッドフォンをして歌っていると、例えば“どれだけリズムに乗れるか”とか“この曲は陽気すぎると気持ち悪い”みたいな感じで、曲によって行くべきところが見えてくるんですよ。だから、単純にそこに行ってみたという感じです。

あと、曲順がいいですよね。

ありがとうございます。すごい悩んだんですよ。ほんとに1曲1曲集中して作ったし、バリエーションのある曲を集めたから、曲順で全然聴こえ方が違ったんですよね。どの曲にも一番良く聴こえる場所があると思って必死になって聴いて、この曲順が一番良かったんです。『MABATAKI』というバラードっぽい曲で終わることもできたんですけど、そういうアルバムにはしたくなかったし。みんなを沸き立たせるようなアルバムにしたかったので。あと、とある老夫婦が亡くなった事件をモチーフにして書いた『あなたを忘れるその前に』を聴いた後、最後に“二度と逢えない人にだって 返せる愛があるなら”と歌っている『素晴らしき日々』、この順番で聴いてほしいなって。私自身、その順番で聴いた時の『素晴らしき日々』の聴こえ方が全然違ったんですよ。

どんなアルバムに仕上がった実感がありますか?

去年の私では歌えてなかったことを、ちゃんと今年の私は歌っている…そんなアルバムですね。音楽として聴く耳馴染みの良さも含めて、前までは“これ以上は言ってはいけない”って気を使ってたんですけど、今回は…ほんとに今年は世の中的にもいろんなことが起こったし、オリンピックがあったのに、その同じ時期に世界の裏側では戦争が起こっていたというのが、私にはあまりにも衝撃的だったんです。そういう意味でもカラフルな世の中だと思うし、その中でほんとに大切なことをメッセージする以上は、パンチを効かせて言わないといけないと思ったんで、言えるところまで言ってみようって思ってたんですね。だから、今の私の名刺代わりになるアルバム…普通は名刺代わりって1stアルバムじゃないですか。もちろん、1stも名刺代わりだったんですけど、1年経ってもう1枚名刺を作った感じですね。1stの時は“LOVEです”というものだとしたら、今回は肩書きが付いたというか、“2009年の世の中で、こういう役割を担いたいLOVEです”みたいな(笑)。決して攻撃的でありたいわけではないんですけど、時には首根っこを押さえつつ、時には背中を擦りつつ、大切なメッセージを発信していける音楽を作っていきたいと思ってるんで。

3月には東名阪でのワンマンが控えてますが、どんなライヴになりそうですか?

今回のアルバムはよりディープで、よりポップになっていると思っていて、私の中にある思想だけではなくて、みんなとの真ん中に置けるような音楽が作れた…それは2008年にいろいろなライヴで、みんなの顔を観ながら音楽ができたおかげなので、今回のワンマンはもっとスキルを上げて、みんなの中にさらに一歩踏み込んで、ストレス発散させるだけじゃない、擦り傷というか、ちゃんとメッセージを残して送り出せるライヴにしたいと思ってます。
Love プロフィール

MISAKIとSTEPHANIによるLDH所属の女性ヴォーカル・ユニット。それぞれ小学生低学年の頃からTVやCMに出演し、10代前半から別々のユニットで活動。歌とダンスは10年以上のキャリアを重ねる。2007年、そんな2人が所属事務所で出会い、結成。LDHの名前の由来であり、EXILEのテーマである“Love, Dream, Happiness”から“Love”という言葉を与えられ、ユニット名を命名する。2009年8月、シングル「First Love 〜ラブレター〜」でメジャー・デビュー。同年11月発売の2ndシングル「Second Love ~ただ一つの願いさえ~」は明治製菓『Meltykiss』のCMソングに抜擢され、着うたウィークリー・チャートで1位に輝き、50万DLを超すヒットを記録した。2010年4月、1st アルバム『大切なキモチ』はオリコン・アルバムチャートで12位を獲得。卓越した歌唱力と2人の強い“絆”から生まれた楽曲が評価され、『第43回日本有線大賞新人賞』を受賞。2011年6月には、2ndアルバム『つながるキモチ』をリリース。2012年4月に7thシングル「100年後のきみに」をリリースするが、同年12月に年内をもって活動を終了、グループを解散することを発表した。オフィシャルHP

OKMusic編集部

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