【鴉(からす)】
取材:道明利友
最後は“光”に辿り着きたい
今回のミニアルバムは初の全国流通作品ということで、思い入れはすごく強いと思います。この作品を作り上げた現在の鴉の音楽性を、皆さん自身はどう捉えていますか?
近野
自分的には、例えば…激しい中にも、情緒があったり。逆に、情緒がある曲の中にも激しさがあるとか。あとは、やっぱり“無駄がない”ということかなと。いろいろやりたいことはあるんですけど、無駄なものは付けたくないです。
なるほど。「帰る場所」はピアノを使っていたりしますけど、それはあくまでも曲の雰囲気をいい形で演出するためのものであって、どの曲も基本はソリッドなサウンドですよね。それが生々しさだったり、迫力につながっているんだと思います。
近野
だからこそ、ひとつひとつの音をしっかり録らなきゃいけないと思ってます。余計なものはできるだけ入れたくないので、その分、各自の音にかかるものは大きいと思いますね。
渡邉
あと、メロディーが分かりやすいといえば分かりやすいじゃないですか。誰にでも伝わる要素はあると思うんですけど、でも、なんか…“媚を売る”みたいな感じはしないんじゃないかっていう気が、僕はしてるんですけど。
確かに、緊張感はどの曲からもすごく感じます。いい意味でサラッとは聴けない、深く聴き入らされるような感覚が。
一関
それは、演奏面でも、態度とか姿勢の部分でも言えると思います。うちら、聴いての通り、“みんな、ノッてこうぜ!”みたいな曲ではないので(苦笑)。でも、そんな中でも、あくまでも演奏で聴いてる人たちの身体を揺らすことだったり、熱いものを伝えたり…そういうことができたらカッコ良いのかなって、思ったりしますけどね。淡々としてる中にも熱いものがある、みたいな。
パフォーマンスとかではなくて、あくまでも音楽で勝負したいというか。歌詞も描いてる近野さんは、そういう鴉の音楽にどんな心情を込めていると思いますか? 作品に込められている核の部分というか…。
近野
たぶん、みんな、いつも笑顔でいるように見える人でも、絶対何かしら辛いことがあって生きてると思うんですよ。“あの人、元気だな~”って見えても、ふと“ああいう人でもいろんなことあるんだろうな…”って思ったりもして。逆に、普段は暗く見える人でも、“今はおとなしいけど元気な時もあるんだろうな”って思ったり。曲を作ってる最中は、そういう誰にでもあるんじゃないかっていうことは重視してるんでしょうね。
笑顔の裏には、苦悩があったり…。それこそアルバムタイトルじゃないですけど、“影”と“光”みたいな相反するものは、誰でも心に持ってるでしょうね。
近野
そうですね。そういう曲が出来上がった時は“やっぱ俺、暗いな…”とか思ったりもするんですけど(苦笑)。でも、そういう要素に引っかかってくれる人がいたら、自分としてはうれしいです。それが逆に、“癒し”みたいなことにつながったりもするんじゃないかとも思いますし。
そうですね。“影”を持っている分だけ、それを振り払いたいっていう思いも絶対持っているはずだし。前へ進みたいっていう意思を、僕は今回の曲を聴いて感じました。
近野
ありがとうございます。最終的にはそうであってほしいですね。できれば、最後は“光”に辿り着ければいいなっていう感じの曲がやりたいと常に思ってます。
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