【DIR EN GREY】『ARCHE』2016年2月
5日 at 日本武道館

撮影:尾形隆夫、江隈麗志(Youth)、福士 絢/取材:金澤隆志

 まず書いてしまうと、武道館2デイズの初日公演ではアルバム『ARCHE』の全曲がほぼ曲順通りにプレイされた。アルバム完成時にメンバーは、曲が始まると同時に曲全体の雰囲気が分かるアレンジ、ひいてはマニアックなファン以外にも訴求する分かりやすさを意識したことを明らかにしていたが、楽曲に映像や視覚的な演出が重なることで、その世界観はより鮮やかなものになっていた。

 しかし、それらはあくまでも補助的な役割を果たすもので、肝となるのは当然5人のパフォーマンスだ。『ARCHE』の楽曲の風通しの良いアレンジは、大音量のライヴのシチュエーションではいっそう力を発揮する。衝突により音が潰れることなく、各パートの演奏がしっかりと届くことで、受け取る側に突き刺さる。そして、それはひとりひとりの中に異なった『ARCHE』のドラマを深く刻み込んでゆく。中でも、当日の京の歌唱は筆者がこれまで観てきた中でも、3本の指に入るであろうほどの際立ちを魅せた。彼の絶好調ぶりがオーディエンスのみならず、4人を触発したであろうことは想像に難くない。

 アルバム完全再現という緊張感の維持が求められるライヴだっただけに、過去曲「朔-saku-」「【KR】cube」などが演奏されたアンコールでは、一転メンバーの表情が和らぎ、達成感と解放感が見て取れた。一貫したストーリーがあるわけではないが、公演の全編を経た後、それぞれの心の中には漠然と浮遊する感情があったはず。それこそが『ARCHE』の意図するところなのではないだろうか。

セットリスト

  1. Un deux
  2. 咀嚼
  3. Phenomenon
  4. Cause of fickleness
  5. 濤声
  6. 輪郭
  7. Chain repulsion
  8. Midwife
  9. 禍夜想
  10. and Zero
  11. てふてふ
  12. 懐春
  13. Behind a vacant image
  14. Sustain the untruth
  15. 空谷の跫音
  16. <ENCORE>
  17. The inferno
  18. Revelation of mankind
  19. THE FINAL
  20. 朔-saku-
  21. 【KR】cube
  22. CHILD PREY
DIR EN GREY プロフィール

ディル・アン・グレイ:カテゴライズ不能かつ不要なロックバンド。1997年の結成当時から全米デビューを果たした現在に至るまでの間、音楽的にも視覚的にも変化を重ねてきた一方で、徹底的に自分たちのロックを追求しようとする姿勢は変わっていない。いくつものトレンドが生まれては消え、消費されるだけの音楽が存在理由を失っていく中、彼らの創造するものがジャンルや国境の壁を超えながら共鳴を集めている理由は、まさにそこにある。DIR EN GREY オフィシャルHP

OKMusic編集部

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