【ザ・ジェッジジョンソン】次につな
げるためのいろんなものが手に入った
緻密なサウンドメイキングに定評があるザ・ジェッジジョンソンの新作が目指したのはポップミュージック。藤戸じゅにあ(Vo&Gu&Sampling)に作品に懸けた想いを語ってもらった。
取材:石田博嗣
メジャー1stアルバム『Discoveries』はエレクトロに、2ndアルバム『12WIRES』はロックに振り切っていたのですが、3rdアルバムでは歌を前面に出したという感じですか?
そうですね。この構想は『Discoveries』を制作した時からあって、前作を2枚でひとつとするのであれば、これから先のコンセプトの表面と思っていただければいいですね。ジェッジが持っていたテクノミュージックやダンスミュージックを武器にポップミュージックというものが作れるかどうかっていう、まずそこを考えていました。今までのジェッジというのは、サウンドの緻密さ…職人的であったり、そういう部分で評価を得ていたのですが、それをどれだけ分かりやすく提示するかって。そうやってシンプルに聴かせながらも、どれだけ“やり込み”というものを盛り込めるかっていう感じでした。真っすぐに、力強く、正直に、伝えたい言葉と音を届けたいと思っていたので、可能な限りいらないものは排除しました。
歌詞に関しても赤裸々な心情が綴られてますよね。これまでの歌詞はドライだっただけに、かなり意外でした。
ある意味、ここまで言い切ってしまうのは暴力的ですよね。誰もが思っているんだけど言えないでいる言葉を集約しているというか。今までは物語性に富んだもので、その中の主人公の一挙一動によって風景や心象を表していたんですけど、今回は目の前で起こっていること、今の自分が置かれている状況をダイレクトに書きました。だから、自分の心の奥底にこういう言葉が眠っていたっていう発見があったし、何よりも僕はアーティストかもしれないですけど、今を生きているリスナーの人たちと同じ時間を過ごしていて、同じ境遇を味わっていると思うんですよ。なので、聴き手の人にも必ず起こり得る状況というものを、身代わって表すことができたと思います。
ロック感を押し出した『12WIRES』の「CONTINUE?」で“we love 8bit world”と歌っていて、今作ではYMCKをフィーチャーしているのも興味深かったです。
YMCKの方々と食事をしていた団欒の中で、この企画が生まれたんですよ。お互いテクノミュージックや電子音楽という先祖を持っていて、そこからYMCKは8ビットに特化していき、ジェッジはライヴフィールドに進化を求めて行ったわけですが、それが合流することで何かできないかっていうコンセプトで。やはり僕らは兄弟だったというか、非常に合っていたと思います。『クリアーマインド』は両方の特色が出た、“コラボレーション”って呼ぶに相応しい楽曲になりましたね。
そういう意味でも、可能性を広げたアルバムですね。
そうですね。今までのジェッジの特色は遺憾なく発揮できて、その上でメロディーラインや歌詞のメッセージ性が前面に出た…ポップミュージックとしてのポピュラリティーに富んだ、リスナーに投げかけられる力強い作品になったと思います。ジェッジの武器も再確認できたし、次につなげるためのいろんなものが手に入れられました。
でも、ここまでのものは『Discoveries』の頃に見えていたんですよね。ということは、次の構想も?
すでに作業に取りかかってます(笑)。今作が力強い作品だとするならば、次は今までのリスナーが驚くような…それこそ真逆なことをしているかもしれませんね。重要なことは、他のアーティストでは聴けないものを提示することなので、それを次回はもっと投げかけたいと思います。