メタルとディスコが一体となったシングル「フォーリングダウン」に続き、アルバム『カルマ』がリリースされる。“今やりたいこと”と、彼らにあったもともとの持ち味が詰まったムックの最新スタイルとも言える新作だ。
取材:舟見佳子
『球体』とは違うアルバムになるだろう
なと思ってた
「フォーリングダウン」は、すごく音に凝った仕上がりになってますね。最初からサウンドありきで作ったのですか?
ミヤ
これはリフですね。リフから考えて、そこからダンスミュージックのテイストと混ぜられたらいいなっていうのが最初頭にあって。で、サビは日本っぽい感じがいいなと思いながら作ってました。日本っていうのは、昔の日本の曲じゃなくて、90年代とかそれくらいの時代の歌謡曲感みたいなのがいいなと思って。普段何となく僕が作ると、もうちょっとしみったれたというか(笑)、暗い歌謡曲寄りになるんですけど、そうじゃないメロディーを作ってみたいなと思って作ってました。
歌謡曲という言葉が使われていた最後の時代くらいですか?
逹瑯
まぁ、J-POPって言葉が出始めたくらいですね。
ミヤ
自分の少年時代に聴いていたメロディー感みたいなものっていうのは、今まではそんなに自分の曲に反映してなかったから。サビに関しては、自分が昔、リアルタイムに聴いて耳に入ってきていたようなメロディー感の曲を作ってみようかなっていう感じですね。
アルバムのリードトラックとしてはいいバランスですね。そんな『カルマ』なんですが、何かコンセプトはありましたか?
ミヤ
前アルバムの『球体』はやりたいことをいろいろやっていこうっていう感じで始まったんですけど、作っていったら意外とバンドっぽい方向になっていったんで、とりあえずそれ以外のものは置いとこうって感じになって。それで『球体』の時にとりあえず横に置いといたものを今回はいろいろやりたかったっていうのと、本当に素というか、根本にあるものが混ざってる感じというか。
それぞれ、アルバムに向けてどんなことを考えていましたか?
逹瑯
『球体』とは違うアルバムになるだろうなと思ってたんで、個人的には新しいチャレンジをしていきたいなっていうのは何となく。新しいことを何かできたらいいなと。具体的には、今までやったことない英詞にチャレンジしたり。
8曲目の「堕落」ですね。最後の《愛してたんだ》っていう日本語のひと言が印象的でした。
逹瑯
そこだけ分かりやすく日本語にしたんで、聴いた人がドキッとしたらなぁみたいな。そういうのはありましたね。
では、ミヤさんは?
ミヤ
印象としては、新しいグッズのデザインのアイコンみたいなもので“メタルディスコ”っていうのがあって、そのキーワードを頭に置いて作っていきましたね。「フォーリングダウン」のリフもそういうところから出てきたし。メタルっぽいリフと、ディスコ…ダンスサウンドがくっつくと面白いかなと。“メタルディスコ”ってなんか、漠然とカッコ良さそうじゃないですか(笑)。っていうのは、まぁ意識してました。
なるほど、メタルディスコですか。では、SATOちさんは?
SATOち
4つ打ちとかの曲が多くなるだろうと思ってたんで、パニックになったりしてました(笑)。全員そういう曲作ってきたらどうしよう…みたいな(笑)。ダンスサウンドって、プレイ面で言ったらドラムが大黒柱じゃないですか。そこはちょっと苦労しました。
具体的にどういう苦労を?
SATOち
4つ打ちみたいなのって音にすぐ出ちゃうんですよ、強弱とかが。フルでパワーを使って叩いて1テイク目録って、2テイク目でパワーが落ちるじゃないですか。それがもう音に出ちゃうんで気が抜けない。もっと複雑なドラムだったら違うんですけど。でも、逆に俺的にはライヴ感があっていいかなって。強さで変わっていく感じとかって、ライヴっぽいというか。楽しい時って走っちゃうし、そういうのにすごい似てるなって。淡々としてるんですけど、なんかエモ的な感じ。「アイアムコンピュータ」って曲あるじゃないですか。すっごい淡々としてるんですよ。でも俺、もう汗びっちょりで(笑)。
(笑)。では、YUKKEさんはいかがでした?
YUKKE
自分の好きな感じの曲とか、最近やってなかったタイプの曲とかを意識しつつ、好きなように、楽しんで入っていきましたね、曲を作る時は。
ダンスものって、ベースがすごい重要じゃないですか。
YUKKE
そうですね。例えば気合で行くとか(笑)、そういうところだけじゃビートとかノリが出ない部分がありますよね。だから、レコーディングでは力じゃなくて、“ジャストに、ジャストに”っていうような心掛けで弾かないと、そういうノリが生まれない。やっぱり、難しいですね。本当、“俺は機械だ”くらいの気持ちで弾いたり…
YUKKE
まぁ、CDとライヴではその辺の違いとかも出てきて面白いんじゃないかなと思います。
タイトル曲の「業」についてなのですが。
ミヤ
実はタイトル曲ではなく…何と言ったらいいんですかね。「アイアムコンピュータ」の世界の続きなんですよ。なんかこう、イメージ的には“何もなくなってしまった。で、100年とか200年後かに、一輪の花がやっと咲いた”みたいな感じがあって。「アイアムコンピュータ」が戦争中だとしたら、「業」は全部終わった後なんですよね。
何もない荒野に一輪の花が咲いた、みたいな?