見るものに青春の輝き呼び起こすガールズユニット「夢みるアドレセンス」に注目

見るものに青春の輝き呼び起こすガールズユニット「夢みるアドレセンス」に注目

見るものに“青春の輝き”呼び起こす
ガールズユニット「夢みるアドレセン
ス」に注目

「夢みるアドレセンス」…なんとすてきなネーミングだろうか。そういえば村上春樹氏の「ノルウェイの森」(講談社)に、「僕に分かるのはキズキの死によって僕のアドレセンスとも呼ぶべき機能の一部が完全に永遠に損なわれてしまったらしいということだけだった」という、主人公の恐ろしいほど美しく、せつないセリフがあった。アドレセンスとは、青年期とか青春、思春期を意味するそうだ。ここ数年、アルファベットと数字のコンビネーションによる名称のグループが目立つアイドル界だが、「夢みるアドレセンス」とはなんともセンスがいい。まず、そこから興味をひかれた。

6月に始動、8月に第1回公演をしたばかり。メンバーは荻野可鈴(おぎの・かりん=16)、志田友美(しだ・ゆうみ=15)、山田朱莉(やまだ・あかり=16)、岡美咲(おか・みさき=15)、小林玲(こばやし・れい=14)、京佳(きょうか=12)の6名、平均年齢14.7歳。公式の紹介文によると、『現役ピチレモンモデルを中心に、各メンバーが未来の国民的大女優を目指す【下積みガールズユニット】です。思春期の女の子たちが夢を叶えるため、毎月定例のイベントで演技はもちろん、オリジナルの楽曲&ダンスを披露いたします』ピチレモンとは学研パブリッシングのファッション誌で、そのモデルはピチモと呼ばれ親しまれる。

この夏、表参道で行われたその第1回「秘密基地」公演に出かけた。音楽と演劇によって構成されたステージと、着席でゆっくり鑑賞(後部にはスタンディングのエリアも)するスタイルはライブ中心のアイドル界にあって新鮮だった。ZONEの「secret base〜君がくれたもの〜」にインスパイアされた、学園を舞台にした演劇と、オリジナル曲「はじめての輝き」など3曲の楽曲が披露された。思春期の少女たちにしか表現しえない世界観が、そこにはあった。
アンコールのMCで、リーダー荻野可鈴の頬を涙がつたう。「たくさん不安があって、本当にリーダーとしてここに立てるんだろうかって思ってました。私は、このステージに立てて、本当に幸せです。これからもみんなで一歩一歩、手を取り合いながら、進んで行けたらいいなって思います。皆さん、夢みるアドレセンス、今日が第一歩なので、これからもよろしくお願いします」
その涙が嘘ではないことは、ステージから十分過ぎるほど伝わった。彼女たちの誰もが、胸が張り裂けそうな不安を抱えながらも、持てるすべてを表現しつくそうとしていた。まるで自分が彼女たちと同世代の青年期に戻り、隣のクラスで物語が繰り広げられているかのような心の「感触」を感じた。なぜ、こんなにも懐かしくて、儚く、そして共感できるのか。これはただものではない。

音楽プロデュースは、上杉洋史氏。作曲、編曲、キーボーディストとして中森明菜、斉藤由貴、SPEEDやSMAPなど…数えあげればキリがないほどのアーティストと仕事をしてきた。ハロプロでは藤本美貴の「ロマンティック浮かれモード」をはじめ主に編曲で携わり、AKB48では「桜の花びらたち」「桜の栞」などの作曲を手がけた。その上杉氏が「夢みるアドレセンス」で、オリジナル楽曲の作編曲およびエンジニアリングを担当している。ひとつ、感動の謎が解けたような気がした。

そして、衣装協力は「Phantasien(ファンタージェン)」。ハイスクールガールのための、制服を中心としたトラッドブランドで、原宿キャットストリートなどに店舗展開している。ブランド名には、「女の子たちの欲しいものが集まる『夢の国のような空間』でありたい」という思いが込められているそうだ。

「ロマンティック浮かれモード」の少女が自転車置き場の前で急に彼から携帯番号のメモを渡された、あのときめき。AKB48が秋葉原の劇場で桜の花を舞い散らせながら歌っていた、あの空間に身を置いたときの、ノスタルジックではあるがけっして古くない、青春の輝き。誰もが通りすぎてくる満天の星空のようなきらめきが、「夢みるアドレセンス」には今、満ちあふれている。


夢みるアドレセンス「秘密基地」公演第二回
9月9日(日)表参道GROUND
詳しくは公式サイトを!
(yumeado.com/)

文・志和浩司
アイドルサイトIDOOOLにて『志和浩司のアイドル・スープレックス!』連載中
(i.listen.jp/st/sp/sp/idoool/column.html)

OKMusic編集部

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