【HOW MERRY MARRY】ヤバい、ヤバい
…って(笑)
1stシングルとなる今作は、テレビ東京系アニメ『夏目友人帳 参』のオープニングテーマ。メジャーデビュー日にひらめき、できたという楽曲を初の共作詞として世に送り出すことになった胸中を訊いてみた。
取材:石岡未央
今までの作品は全て工藤くんの作詞だったけど、めずらしく“共作詞”というスタイルなのは、タイアップの関係?
工藤
最初、アニメの主人公になったつもりで書いていたんですけど、物語で伝えたかったことを上手く表現できなくて…で、未開拓の分野の道標として一緒に、すごく勉強になりましたね。
共作とか、受け入れたがらない性格では?(笑)
河添
よくお分かりで…(笑)。自分たちだけの世界観じゃなくて、もっと広く万人に伝えられる言葉を探そうってことで。
かなり難産だったってことなのかな?
ひとりひとつってこと? 工藤くん的には、ある種、屈辱みたいなものがあったんじゃないの?
(笑)。逆に工藤くんの苦しさが分かったり?
伊藤
も~めちゃめちゃ大変でしたね。言葉って、その人の人生観が出るじゃないですか。経験足りないなぁ…って。
工藤
それは、僕自身も改めて痛感したし、それによって次につなげられる作品になったと思います。
成長ってことなのかな?
河添
そうですね。今までは、目標が自分のやりたいこと、思ってることじゃないと絶対イヤっていう、わがままで頑固なところがあったけど、今は楽曲を大切にしたいなって。
伊藤
僕は最初、抵抗があって“う~ん、どうかなぁ”って。でも、いざ、かたちができて振り返って考えると、そういう心の狭さがもったいなかったなって。
工藤
一番良いかたちで届けるのがプロとしての仕事だと思うので、そこは自分のプライドを置いても最上のかたちで聴いてもらうのが良いと考えるようになりましたね。誰が書いた言葉でも、それを自分のモノとして歌っていこうと。
なるほど。曲のベーシックというか、できた経緯って?
工藤
3月2日のメジャーデビュー日にできたんですよ。その日は名古屋にいたんですけど、そこで思い付いて、帰りの新幹線で構築してって、東京に着く頃にはできてたって感じで。それを1stシングルにするっていうのは、運命的なものを感じました。
どういう感じで仕上げようって思ってたの?
工藤
今まで使ったことのないコード進行をサビで試してみたくって、ちょっと違うアプローチをしたいなって。
無駄がないっていうか、すごいシンプルで綺麗に流れていくよね。サビの《ひとつ ひとつ》のファルセットが柔らかくて心地良い。
工藤
これはメロディーを思い付いた時から、ファルセットの響きだなって、明確にビジョンとしてあったんですよ。
今までの曲で、あんなにコーラスやハモリが入っているのはなかったよね。そもそも、コーラス少ないもんね。
伊藤
少ないです! サビで出てきて…ぐらいな(笑)。
カップリングの「ティニー」は歌い慣れてるようだけど。
工藤
19歳の時かなぁ。かれこれ7~8年は歌ってますね。ほんと、この曲に助けられてきましたね。
伊藤
ライヴでやってる中でも、一番古いんじゃないかな。お客さんの反応が良い曲だったので、そういう想いもいっぱい詰まった思い入れのある曲です。
工藤
人を愛するってことを知ったきっかけでできた曲で、初めて“この人を自分で守りたい”と思って30分くらいでパッと。ほんとの幸せって、自分の手の届く範囲で、ささやかだけどひとりの人を愛することなのかなぁって。
メロディー的には、2コーラス目のAメロ辺りは変則的なエッジで、かなり印象に残るよね。
伊藤
初めて聴いた時、“くどラップ”って言ってました(笑)。
工藤
ちょっと“会話っぽく”を意識して書いてみましたね。
3曲目には「MADE IN“ I LOVE YOU”」。どういう解釈?
工藤
英語的に合ってるかどうかは分からないけど、“全てのことは愛してるということから始まっている”という感じで歌ってます。身の回りにあふれてるものの全ては、人が人を“愛してるよ”って言ったことから生まれたものなんじゃないかなって。
河添
すごく、深いというか、いろんな捉え方がある曲だとは思いますね。ちょっと反戦じみたことも含んでたり…
サビに出てくる《手を繋ぐ老年夫婦 なぜだか涙が出てきた》ってフレーズが気になるんだけど。
工藤
渋谷駅の電車の中で、70歳くらいの気品あるおじいちゃんとおばあちゃんが、ほんとに仲良いんですって手のつなぎ方して座ってて、それがすごい愛しく思えて。一方では、テロのニュースとかが目に入って、誰かが亡くなって悲しい思いをしていたり…で、すごい複雑な気持ちになって、なんか涙が出てきた。
何を感化されたの?
工藤
なんでしょうね…ひと言で言えば、感動してしまったんです。いろんなことを乗り越えてきた歴史があって、その中で愛を育んできたんだなってことに感銘を受けて。端から見たら、なんで泣いてんだ?って感じだったでしょうけど(苦笑)。
河添
僕もここのフレーズすごい好きなんですよね。ポップな曲なんですけど、この部分は、なんか切ない気持ちになる。
生きるっていう、逞しさみたいなもの?
レコーディング自体は順調に? 凹むことなく(笑)。
工藤
「ティニー」のギターソロで泣いてたよな(爆笑)。
ふ~ん、それは感動の涙なんだね(笑)。河添くんは?
河添
僕も「ティニー」なんだけど、ビートルズ後半のリンゴ・スターのようにデッドなサウンドを狙ってみたんですよね。ドラムセットに毛布かぶせて、べたべたにミュートしたりして…
なるほど、良い組み合わせで3曲が並びましたが、どういう作品になったと?
伊藤
テーマとして、つながりがある3曲ですね。誰かと誰かが思い合うっていうこと。
工藤
デビュー作の『バイ マイ タウン』は、個人の視点で書いてた一人称の歌だったけど、この3曲は、ひとりとひとり、二人称じゃないと成り立たない歌になっていて、自分だけの殻に閉じこもっていたものが、人へ何かを伝えたいという感じになりましたね。
ハウメリーマリー:2004年に高校時代からの親友、工藤・伊藤を中心に結成。後に秋山が加入し、前身バンドで都内ライヴハウスを中心に活動開始。08年に現在のバンド名に改名し、河添が加入。“郷愁感”“懐かしさ”“温かみ”を情感豊かに表現したサウンドが魅力の4人組バンド(ベースの秋山オサムは突発性難聴のため休養中)。2011年3月2日、ミニアルバム『バイ マイ タウン』でメジャーデビュー。オフィシャルHP