【SUGIZO、INORAN】『SUGIZO VS INO
RAN PRESENTS BEST BOUT~L2/5~』2
016年6月9日 at Zepp DiverCity Tok
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開演とともに闇に包まれる会場。一気に幽玄な世界に誘われる。紗幕にヴァイオリンを手にしたSUGIZOのシルエットが映る。音をループさせながら演奏が始まり、左側にはINORANのシルエットも現れた。INORANはギターのボディを叩き、LUNA SEA25周年ツアーで演奏されたセッションを再び披露。天上で鳴り続けるSUGIZOのヴァイオリンと、大地を進むINORANのギター。紗幕がバッと落とされると、SUGIZOとINORANが現れた。フェニックスとドラゴンというイベントのビジュアルを背にしたふたりに、会場からは大きな歓声が上がる。
先攻はINORANバンド。ドラム(RYO YAMAGATA)とギター(Yukio Murata)、ベース(u:zo)がINORANのギターに次第に重なり合っていくオープニングから「Beautiful Now」。そして、INORANが生み出す力強い歌声がオーディエンスの背中を押して、最初から感情を解放するようにうながす。ひと息付く間もなく、スピード感あふれる「might never see,might never reach」へ。1点に狙いを定めたシャープなパフォーマンスを見せるINORAN。ライヴにかける気合いをひしひしと感じる。
“本当にこの日を待っていました。僕のバンドもスタッフも、そして、あとから出てくる、にっくきSUGIZOも”と軽く冗談を言うINORANに対して“ヒュー!”と沸く会場。“いや、仲が良いんですけれど、でも対バンするからには、音で本当にぶつかり合おうと”と笑う。さわやかな風の中を飛んでいるような気持ちになる「Awaking in myself」。INORANはさらにストレートなプレイでオーディエンスに迫ってくる。
“俺、こういうのを4年前くらい前から企画していた”と説明するINORAN。“本音を言っていい?”と切り出す。LUNA SEAは他メンバーがすごくて、最初は自分にはテクニックやセンスが足らない、特にSUGIZOに対して感じた、と語る。“でも、彼がいたから、俺は頑張れたと思う”。“まだ全然手が届かないんだけれど、本当にSUGIちゃんがいたおかげで、僕はここに立てているなと思っているんです”さらにソロ活動などでそれぞれ築き上げたファミリーで対バンできることが、音楽でつながっている者同士として嬉しい、と続けた。25年以上一緒にやっていていても、リスペクトをはっきり口にするところが彼らしい。
“俺の兄貴、呼びます。SUGIZO!”。INORANが紹介すると、SUGIZOがステージに現れた。“with SUGIZOでいかせていただきます。「raize」”。未来に向かう希望に満ちた曲だが、SUGIZOの艶やかなギターが彩り、より幸福感が増していく。いつも以上にパワフルなナンバーになっていった。“Thank you SUGIZO!”。SUGIZOはINORANを後ろからハグしてステージを後にした。“愛し合っているとさ、バトルにならないってことが分かったよ”。とINORANは苦笑する。
「Get Laid」でオーディエンスと激しくコール&レスポンスし、ラストは会場をひとつにする、やさしく雄大な「All We Are」では、会場いっぱいに響くコーラスを受けて、腹の底から歌い上げるINORAN。大地に根を張った、生命力を感じさせるステージを見せてくれた。
後攻はマニピュレーターMaZDA、パーカッションよしうらけんじ、ドラマーkomakiによるSUGIZOバンド。“今日は最高に嬉しいです。心から感謝しています”。“愛すべきINORAN。にっくきINORANに、どうか感謝を。俺は最後までぶっ通しでいくから、気合入れて聴いてください”。INORANからエネルギーを受け取り、SUGIZOのギターがうなりを上げる。空気がピンと張り詰め、1曲目「TELL ME WHY?」から鋭い音が次々に襲ってくる。背後のスクリーンに抽象的な映像を映し出し、オーディエンスの聴覚だけでなく、視覚にも強烈に訴えかけてくるSUGIZOのステージ。想像力が無限に広がっていく。「FATIMA」ではギターのフレーズをヴァイオリンにして演奏し、繊細に音色を紡いでいくSUGIZO。海に潜っていく風景が頭に浮かび、まるで生まれる前、母親の胎内に還っていくような、不思議な感覚に陥る。途中で女性ヴォーカルが入り、ゆらゆらと踊るベリーダンサーの映像が浮かび上がる。
SUGIZOがINORANを呼び、「THE EDGE」でヴァイオリンとギターによる競演を魅せた。ふたりが音で会話をし合う。さきほど演奏した「raize」とはまた違い、この曲では融合と、どこかヒリヒリとした緊張感があった。
この日、初披露となった新曲「Lux Aeterna」。タイトなkomakiのドラムとよしうらけんじパーカッションの音に合わせ、雷が落ちるようなライティングが施されていた。ギターがやさしく鳴らされたかと思うと、怒涛の音に変わっていく。「ENOLA GAY RELOADED」では、SUGIZOは旗を手にして大きく振る。行進する兵隊の足音。熱い炎が上がり、爆風で全てが掻き消されていく。最後に背後に置かれたスクリーンに“NO MORE NUKES PRAY FOR MUSIC”という文字が映し出された。虹色のライトが会場を照らし出し、次のナンバー「DO-FUNK DANCE」になると、重々しさから解き放たれて、オーディエンスが踊り出す。フロアーにいる人の気が混ざり合っていき、ひとつの生命体になっていくようだ。そして、「TELL ME WHY?」のエンディングパートで締め括る。最初にSUGIZOが宣言した通り、ノンストップでプレイを続けた。全て楽曲がつながっていて、どこか異次元を旅してきたような、または壮大な映画を見たような気分になるステージだった。
全てが終わり、SUGIZOとINORANは跪いてお互いを称え合う。“また、やろうか今度”。“みんなが求めていただけるのであれば”。ふたりが交わす会話にフロアーも大いに沸く。“また多分、一緒に戻ってくると思うので。期待してください。どうもありがとう!”。最後は両バンドメンバー全員が中央に集まり、肩を組んでお辞儀をする。音楽を通じて、たくさんの仲間を増やしているふたりがより輝いて見えた。
今回は戦いというよりも、音楽で生まれる絆の尊さをオーディエンスの心に残していくという、ピースフルな愛情に満ちたライヴだったと思う。
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