【中島卓偉】アコースティックに留ま
らない進化したアルバムが作れた
アコースティックによるセルフカバーアルバムが完成! シンプルなサウンドであっても、時に激しくスリリングで、新たなアコギの可能性を提示する作品に仕上がっている。
取材:石田博嗣
タイトル通りにアコギでのセルフカバーアルバムなのですが、こういう作品を作ろうと思った経緯というのは?
いろんな想いがあって…まぁ、一番はデビューして13年目になるんですけど、10周年を超えたタイミングでひとりでアコースティックツアーをやるようになったんですよ。それまでの10年というのはバンドサウンドに徹していたんですけど、より広く深く表現したいっていうことでアコースティックのツアーを始めたんですね。で、その3年の間にいろんなアレンジでやってきたので、それをまとめたアイテムがひとつあったほうがいいんじゃないかと思って。
ツアーで培ったものがあるせいか、アコースティックとはいえライヴ盤のようなテンション感ですよね。
そうですね。あと、悪い意味じゃなくて、日本人って“アコースティック=フォーキー”というイメージがあると思うんですね。でも、僕がティーンエイジャーの時に観ていたMTVでは…例えば、自分の好きなイギリスのバンドがアンプラグドでやってても激しかったり、リズミカルだったりして、バラードだけじゃないっていうのを、たくさんの音楽を聴く中で学んだというか。だから、フォーキーな曲も入っているんですけど、そこに留まらないアルバムじゃないと面白くないって思ってました。
確かに、アコギの可能性を引き出している印象を受けました。「PUNK」はロック…それも、ちゃんとロールしているし。
そう言ってもらえると、嬉しいですね。50年代、60年代、70年代の音楽が好きなんですけど、その当時に活動されていたミュージシャンの写真を見るとアコギを持っている率が高いんですよ。本来のロックンロールのカッコ良さというのは、いかにアコギを激しく弾くかだったと思うんですよね。自分的にはエレキの可能性の追究は、デビューしてからの10年でやってきたと思うんで…だからって、この先の10年はアコギの可能性を探すのかって言うとそうじゃなくて、今まで自分がやってこなかったアコギのアプローチがあるはずだって。音楽をやって十何年経つんですけど、今になって理解できたことがたくさんあったので、再確認と勉強ができたレコーディングでしたね。
ライヴテイクで収録されている「鼓動」はアコギ一本ならではのスリリングなものになってますものね。
あの激しいカッティングは感情ありき…その時の行き当たりばったりの気持ちで弾いているので、同じものは二度と弾けないですね。そういうエモーショナルなものってエレキだと出ないっていうか、エレキを弾いていてる時よりも気持ちがパンキッシュになる瞬間があるんですよ(笑)
そういうテンションが高いものもあれば、例えば「Calling you」は壮大で、“聴かせる”アレンジになってますね。
デビュー前から歌っている曲でもあるので、いろんなアレンジがあったんですけど、ずっと聴いてくれているファンの方々に喜んでもらえるものにしたかったし、初めて聴く人にもすんなりと入ってもらえるものにしたかったんですよ。音数は多いほうがいいっていうものではないんで、なるべく隙間を空けてレンジを広く見せるっていうことにこだわってましたね。
アコースティックだけど、振り幅のある一枚ですね。
アコースティックアルバムだと思って聴いた人にそればかりじゃないっていうか、“アコギでこんなことができるんだ!?”っていうものを感じてもらえるような、アコースティックに留まらない進化したアルバムが作れたと思いますね。
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