【月の203号室】“何かいいよね”っ
てぐらいで聴ける曲
季節感も相まって、これまでの自分たちにはなかったという軽快なポップチューンに仕上がった「恋はゆらゆら」。ふたりの美しいハーモニーと繊細に絡み合うバンドサウンドが心地良く響くナンバーだ。
取材:ジャガー
「恋はゆらゆら」はライヴでやられてきた曲なんですよね?
蓮本
そうですね。5~6年ぐらい前からあった古株です。ライヴの定番でやってきたというよりはバンドでやったほうが盛り上がる曲なので、ワンマンライヴでサポートメンバーに入ってもらった時に披露したりしてました。
西畑
作った当初は、ライヴで盛り上がる曲がいいなぁと思ってて、それまでの自分たちがやってきた音楽のテイストからちょっとだけ変わったことをしたいなと。“何かいいよね”ってぐらいで聴ける曲…これまで作ってきた曲は、年齢に相応しくない内容を頑張ってやろうとしてたけど、音楽はもっと気楽にやっていいんじゃないかっていう思いが強まってきて。だから、歌詞は極力メッセージ性みたいなものを剥いでいって簡単な言葉で書くようにしました。
でも、“恋はゆらゆら”など言葉のインパクトはありますね。
西畑
「恋はゆらゆら」に関しては、“何なんだ? ゆらゆらって”ってちょっと気にかかる程度でいいのかなって。意味を追求するより、自然と音を楽しんでもらうような曲にしたかった。
蓮本
確かに、自分たちが演奏していても音を楽しんでる部分が強い曲ですね。耳に残るキャッチーさとか。こういうアップテンポな曲はあまりなかったので。
自分たちの中に自然とできてしまった“こうじゃなきゃいけない”という決まりごとを取り除くことで、開放感あふれるナンバーになったのかもしれませんね。では、ライヴで温めてきた楽曲をレコーディングするというのはいかがでした?
蓮本
やりやすかったです。あと、昔は根本だけ自分たちで作って、その後をアレンジャーやプロデューサーに委ねることが多かったんですけど、それじゃダメだなって思うところもあって。やっぱり、月の203号室の音楽なんだから、人に委ねすぎるのは良くないなと。だから、今回は最初から最後まで後悔のないように意見を出し合ったので、とことん納得のいく音源になったんじゃないかなって思います。
レコーディングに臨む上での心境にも変化があったと?
蓮本
だいぶ違いますね。おかげでレコーディングもすごく楽しくて。いつもより短い時間の中で、満足のいくものができました。初めて生ピアノでレコーディングさせてもらったのも嬉しかったですし、他のサポートの方とせーので同時に録ったんですけど、それも今までにない経験だったので楽しかったです。
2曲目の「今夜もさよなら」は一転、好きな人への思いを馳せた静かな曲になっていますね。
西畑
地元の空気に触れて何曲か作りたいなと思って、実家がある石川県に帰った時にたまたま昔好きだった子のことを思い出して書いた曲です。ありのまま、当時の僕の思いを書いてるんですけど…すごく奥手で(笑)。好きな子をこの手でギュッと捕まえてしまえばいいのにって思う反面、それはしちゃいけないっていう思いもあって。別に彼氏がいたわけでもなかったから、一歩踏み出してみても良かったんだろうけど…勝手に“男は我慢しなきゃいけない”みたいなカッコ付けちゃう部分があったというか。当時の僕にとっては大恋愛だったけど、何年も経った今思い返してみるとふざけた恋愛だったなと(笑)。でも、そうやってふざけた恋愛だと思える今、歌ってみるのが面白いなって思います。「今夜もさよなら」は最近できた曲なので、新鮮な想いを聴いてもらえるんだって喜びも大きくて、「恋はゆらゆら」と一緒のCD に入るのが不思議な感じはしますね。
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