およそ3年間の沈黙を破り、再びシーンに戻ってきたベイサイド・ディーヴァ、詩音。3つの異なった“愛”を描いた、メジャー移籍第一弾シングル「again」では、シンガーとして、ソングライターとして、ひときわ成長した彼女の姿が確認できる。
取材:金澤隆志

本作は、7月から3カ月連続で配信されたシングル3曲によって構成された三部作ですが、この構成にした思惑とは?

3年間みなさんに私の曲を届けられていなかったので、まず私のいろいろな側面を見てほしいという思いがありました。それには1曲にさまざまな要素を詰め込むよりは、3曲に分けて異なった顏を表現したいと思ったんです。

共通したテーマは“LOVE ME”ということですね。

3つの異なったかたちの恋愛を描いています。その軸となっているのが"私を愛してほしい"というテーマですが、3曲には連続性はありません。

トラックメイカーのTAZZさんと一緒に仕事をするのは今回が初めてだったとか。

そうなんです。これまでの方だとトラックだけを作っていただいて、それに私がメロディーを付けて…という分業制が多かったのですが、今回はガッチリ共同作業という感じで、パートごとに細かく相談させてもらいました。『just me』と『again』ではメロディーに関してアドバイスをいただいたんですけど、それってこれまではあまりなかったことなんです。私が求める答えを提示してくれる方で、とても作業がやりやすかったです。

各曲についてお訊きします。「again」はどういった思いが込められた曲ですか?

タイトルは“もう一度”という意味で、一度は一緒にいたけど離れてしまった恋人に向けて“もう一度私を信じて”という気持ちを歌った曲”です。でも、完成した歌詞を読んでみたら、ファンのみなさんへの思いが込められていることに気付いたんです。“LOVE MEというテーマ自体も、ファンのみなさんにまた愛してもらいたいという思い…もう一度みんなの前で歌えるというワクワク感があったからなのかもしれないですしね。書いている時はそういったことはまったく意識していなかったんですけど。

「just me」は一転してストロングなビートで攻めてきますね。

自分が好きな人に好きな誰かがいるという設定で、私がフックで言っている言葉というのが、女の子が口にすると“うざい、面倒くさい”と彼氏に嫌がられるような言葉をわざと並べているんです。“私だけを見て”というタイトルだけでも結構強引な響きじゃないですか(笑)。トラックも強めのビートで。でも、私の声がどちらかと言えばスイートな感じなので、それで中和されれば面白い化学反応が生まれるんじゃないかなって。多分、女子には“分かるー!”って共感してもらえると思うんですよね。ウザがられるのが分かっているから彼氏にハッキリと言えなくても、この曲を"聴いてよ"って渡せばメッセージになるかも(笑)

夏の恋愛の高揚感をイメージさせる曲ですよね。

8月に配信されることを想定して書いていたので、夏にありがちな恋愛というイメージで作りました。海で知り合ったカッコ良い人に彼女がいて、っていう。そういったイメージをそのままTAZZさんに伝えて、夏のデイイベントでかけられるような曲を…というふうにお願いしましたね。ハードめなサマーチューンということで。

メロディアスなピアノで幕を開ける「distance」は、とても短い期間で書き上げたそうですね。

3曲の中で一番速くできた曲で、2日で完成しました。私が書きたいメロディーがあって、それにあとからトラックを付けていただいたんです。タイトルには“計れない距離”という意味が込められていて、“もう会えないキミ”に歌ってる…それは、遠く離れてしまった人かもしれないし、亡くなってしまった人かもしれない。今までの私の恋愛の曲って、ダークな思いや痛みを表現したものが多かったんですけど、この曲では広い視野を持つように意識したんです。男女の関係に限定するのではなく、両親や家族への思いをも内包した、より大きな愛。実際、男性リスナーの方から“曲を聴いて、離れてしまった男友達に向けての気持ちを思い出した”というメッセージをいただいて、そういう曲に仕上がって良かったと思いました。

今回の3曲の中で最初に書いた曲がこういった大きな愛を歌った曲ということで、他の曲のテーマにも影響した部分もあったのでは?

『again』はありますね。いつもなら恋愛一辺倒な視点になりがちなんですけど、無意識のうちにファンの人たちへの思いにつながったあたりは、この曲の影響があるかもしれません。

それは3年という年月を経たことによる、人間的に成長した部分によるものもあるかも?

人間的に成長したかどうかは分からないですけど(笑)、もし自分の声や歌い方に変化があるとすれば、優しくなったように思います。意図的にそうした部分はまったくないんですけど。

それでは、本作を漢字一文字で表現すると?

"愛"ですね。"LOVE ME"というテーマもそうですし、この作品には私から待ってくれていた人たちへの3年分の愛が詰まっているんです。

今後の展開に関してですが、現在ブログで小説を連載していますよね。これはいずれ音楽などとリンクしていくのかなと思ったのですが。

私の中ではイメージしていることはあるんですけど、今はまだちょっと言えないんです(笑)。ひとつ言えるのは“楽しみにしていてください!”ということ。これからの活動の展開もそうだし、小説の内容、そしてそれが私の音楽とどうリンクしていくのか。音楽に限らず、さまざまなかたちでの表現ができるエンターテイナーを目指していますので。
詩音 プロフィール

R&Bシンガーソングライター。親の影響で幼い頃からブラック・ミュージックに慣れ親しむ。1994年、アメリカンスクール在学時にスカウトされ、デトロイトでキース・ジョンによるヴォーカルレッスンを受ける。2004年からインディーズでの音楽活動を開始し、横浜、横須賀などのクラブを中心に活動。2008年5月、アルバム『Candy Girl』でCDデビュー。その圧倒的な歌声と同世代の共感を呼ぶ歌詞が評価を受け、インディーズながらオリコン・アルバムチャート9位を獲得。約10万枚を売り上げる。2009年4月、2ndシングル「RAIN OF TEARZ/GIRLICIOUS feat.DJ☆GO」がオリコン・デイリーチャート6位を記録。同年10月発売のアルバム『Trurh』もオリコントップ10入りを記録するも、2009年10月、喉にポリープができたことを告白。治療に専念するため、活動休止を発表。約3年間の活動停止期間を経て、メジャー移籍第1弾配信シングル「distance」より、『LOVE ME』3部作として、2012年7月より3ヶ月連続配信シングルをリリース。2013年6月には、初のベスト盤『ALL TIME BEST -BAYSIDE DIVA STORY-』を発表した。オフィシャルHP
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OKMusic編集部

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