【KG】自分が真摯に曲と向き合えば周
りにも伝わる

“大きな意味での愛を歌っていきたい”と常々語ってきたKGが贈るカバーアルバム『LOVE COVERS』。女性アーティストの名曲ラブソングをブラックミュージックをルーツに持つ彼流に昇華した、温かな一枚をじっくり堪能してもらいたい。
取材:ジャガー

ジャケット写真の雰囲気といい、とても温かみのある一枚ができましたね。

そうなんです。温かい作品にしようっていうのは大前提としてあって。もとの曲に対しての敬意は失わないように、だけどKGなりのオリジナリティーを感じてもらえるように意識しましたね。特に中島美嘉ちゃんの『雪の華』は原曲はメロディーに寄せてものすごく悲しそうに歌ってるんですけど、歌詞はすげぇ温かいんですよ。だから、俺は微笑みながら歌っているのが聴き手にも伝わるように歌いました。全体を通じて言えることですけど、優しさと温かさを持って一曲一曲向き合いました。

確かに、私も「雪の華」への印象がだいぶ変わりましたよ。

かわいいことを言ってるんですよね。《そろそろこの街に キミと近付ける季節がくる》とかキュンってしちゃいましたよ。冬を理由に好きな人に近付こうとする健気な姿がかわいらしい表現だなと。

どの曲も同じ題材を用いながらも、どこを切り取るかによって印象が変わるのかもしれませんね。例えば、倖田來未さんの「愛のうた」は恋愛中の揺れ動く切ない感情を情熱的に歌い上げていますが、KGさんはずっと思い続けられる相手がいるという部分にスポットを当ててらっしゃいますよね。見るところが違うから、アレンジも変わってくるのかなと。

アマチュア時代にずっとカバーを歌っていた時期があったんですけど、その時から原曲の真似だけは絶対にしないと決めて歌っていたんで、自分の中に取り込んで、咀嚼して、自分のものとして昇華するっていうのが自然にできるようになっていったのかな。歌う側もそうですけど、聴く側も真似するぐらいなら原曲を聴きたくなると思うんですね。あとは、もともと邦楽を聴くタイプの人間ではなかったのと、カラオケも1年に1回行くか行かないぐらいしかないから、良い意味で曲を聴きすぎてないっていうのが良かったのもかもしれないですね。ただ、邦楽を聴いてこなかった人間なんですけど、ここに収録している曲は“サビは知ってる!”とか絶対知ってる部分があったから、すごいなって単純に思いました。『PRIDE』は聴く度に良い曲だなってしみじみ感じちゃいますもん。

今井美樹さんの歌声に癒されながら、ふと作詞作曲が布袋寅泰さんだったことを発見した時はすごく驚いた記憶があります。

そうですよね(笑)。でも、この曲のすごいところは歌詞が比較的短いのに対して、曲は6分ぐらいあるんですよ。なのに、歌詞も曲も同じテンポでできたんじゃないかなって感じるぐらいに一切無駄がない。同じメロディーなのにどれも新鮮に聴こえてくるから、そこはギタリストである感覚なのかなって思いました。

編曲でミトカツユキさんを起用しているのもいいですね。

もう彼は天才です。今作では他にも『月のしずく』(柴咲コウ)、『Time goes by』(Every Little Thing)、あとiTunesのみで配信される『Garden』(Sugar Soul)をやってもらったんですけど、『月のしずく』はストリングスとかを消すと実はすごいグルービーな鍵盤を弾いてくれてるんです。『月のしずく』って日本的なメロディーじゃないですか。そういうのを歌ったことが俺もないし、なんだったらブラックミュージックがルーツの自分に歌いこなせるのかなって不安もありつつ、タッグを組んだのがミトくんだったから、ふたりともそっちの人間だからどうしようかって(笑)。ソウルマンふたりに和的な曲って無理難題だなって思ったけど、逆に振り切ることができて面白い作品に仕上げることができました。

原曲の幻想的な雰囲気をうまく活かしつつ、変化を加えているのが聴き応えがありまました。

コーラスもミトくんにその場でやってもらって。自然発生的にコーラスが入ったりしてるから曲としてのグルーブも詰め込まれてますね。

しかも、盛り上がるところをあえて落ち着いたトーンで歌われているのに余裕を感じることができ、グッときました。

歌に関してはちゃんとしたかったというか。収録曲全部が良い曲じゃないですか。で、例えばブラックミュージックがルーツの人がカバーをするとなると、どうしても最後を崩してフェイクみたいに歌っちゃうクセ?みたいな感じがあるんですけど、それを絶対しないっていうのは自分の中で決めてました。何でかと言うと、フェイクをするとうまく聴こえるんですよ。でも、それって自分がうまいように聴かせたいってシンガーのエゴでしかないから、それはちょっと違うなって。シンガーとしての力量がカバーって試されますよね。もとのメロディーを大きく崩したくなかったし、この曲は今までの自分にないものだったから余計に気を使った歌い方になったのかもしれません。

オリジナルの時とは違った真剣さが曲を聴いていても伝わってきます。さっきおっしゃったように、自分なりの解釈を加えるということは、事前にその曲を熟知しなくてはできないことでしょうし。

オリジナルでもそうだけど、カバーだと特に批判は絶対出ると思っていて。特に原曲にものすごく思い入れのある方だったり、原曲を歌うアーティストの熱狂的なファンの人からしたら“なんでお前が歌うんだ!?”って少なからずあるとは思うんですね。でも、そう言われないようにちゃんと真剣に歌いました。アーティストへの敬意と同じぐらい、もとからこの曲を好きだった人へのリスペクトも必要だと思っていて…じゃないと、名曲として広まってないじゃないですか。だからこそ、心を込めて歌いました。正直、このタイミングでカバーを出すのはちょっと嫌だなって最初は思ってたんですけどね。いろんな方たちがカバーを出しているので、“ブームに乗っかっている”っていう世間の目を気にしてというか…自分もいつか出したかったけど、今じゃないなって。でも、作り始めたらそんなの関係なくなりましたね。自分が真摯に曲と向き合えば周りにも伝わるんだと信じています。
KG プロフィール

R&Bシンガー・ソングライター、15歳からアメリカに留学し、カリフォルニアの音楽大学へ進学するも、日本での活動を決意し帰国。2004年にキーボーディストと出会い、KGを結成。2007年、MAY'S、CLIFF EDGE、SHIKATAとユニット“NATURAL8”を結成。北関東圏で話題を呼び1stアルバム『GOLDEN SHUFFLE』が3万枚というセールスを記録する。同年、自身のソロ・プロジェクト“KG”として活動開始。2009年4月、TBS『CDTV』のオープニングテーマに抜擢された「With You ~君といつまでも~feat. MAY'S 」を収録するミニアルバム『With You』をリリース。スモーキーかつ、温かみのある歌声で“本格的なR&Bを歌うシンガー”として話題を呼び、配信で20万ダウンロードを記録。同年11月、配信シングル「君に言えなかった想い duet with May J.」で<ユニバーサルミュージック>よりメジャー進出。2010年10月、1stアルバム『Songs of love』をリリース。自身のルーツとなるソウルフルなナンバーからダンサブルなナンバー、「Song of love duet with 中嶋ユキノ」などデュエット曲を収録した今作で、レコチョク2010年年間新人ランキング3位、日本ゴールドディスク大賞、ザ・ベスト5ニューアーティストを受賞した。2012年、ソロとして新たな道を歩み始め、同年6月にリリースした「もっと愛したかった」が大ヒットを記録。2013年10月、<ワーナーミュージック・ジャパン>に移籍し、配信シングル「今もこれからも」をリリースした。
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