【石崎ひゅーい】ピュアポップに潜む
フリーダムな狂気!

人一倍の創造力でもって極上ポップチューンをエモーショナルに繰り広げるシンガーソングライター、石崎ひゅーい。注目TV ドラマ『みんな!エスパーだよ!』エンディングテーマとして話題の「夜間飛行」について訊いた。
取材:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

初めての書き下ろし楽曲だそうですね。

はい。ドラマのテーマソングということで、原作の『みんな!エスパーだよ!』のコミックを読んで、園子温監督から“世界”っていうテーマをいただいて、バーッと書き上げました。

園子温監督によるTVドラマって、カルチャー好きにとって衝撃ですが、監督とのやりとりはどんな感じでした?

ひと言いただいただけなんですよ。僕も監督の作品は好きで観ていたので、世界観は共有していたつもりですが、作ってお渡しして“うん、いいね!”ってスムーズに進みました。なので、書き下ろしっていうよりテーマをいただいた感じですね。

なるほど! ひゅーいさんは“世界”というテーマをどのように受け取って作品化されたのですか?

僕にとっての“世界”って、好きな女の子のことしか浮かばなくて…ほんとただそれだけなんですね。

それって、『みんな!エスパーだよ!』の世界観とも見事にリンクしてますね!

たまたまつながっちゃったんですよ。ドラマもとても面白い作品に仕上がっていて、ご一緒できて嬉しかったです。

園監督の『愛のむきだし』という映画作品が大好きなんです。ゆらゆら帝国の音楽の使い方が絶妙で。音楽を本当に愛している方なんだな、と。園作品って難しいわけでは決してなく、でも描き方が度を超えていたり、その辺がロックなんですよね。ひゅーいさんはどんなふうに捉えていますか?

なんて言うか…園監督って、言いにくいというか、絶対に言っちゃいけないようなことを作品にするじゃないですか。それってめちゃくちゃ力がいることだと思うんですよ。具体的なことを言ったら、いろんな人たちと戦わないといけないかもしれないのに。でも、やっちゃう園監督の作品は本当にパワーに満ちあふれていてロックだって思いますね。なので、恐縮ながら僕と似ているな~って思っています。

ですよね。ちなみに「夜間飛行」で描かれている、好きな人に会いにいくためのエネルギーって、ひゅーいさんにとって何事にも代え難い大きなエネルギーなのですか?

めっちゃデカイです。僕の歌の全ての根源はそこにあります。それが球根で、そこから花が咲く感じなんですよ。今回の歌詞は、相当リアルなんです。あとあと歌うのが大変になりそうなくらいリアルで困るぐらい(苦笑)。

メジャーデビューしてから時間が経って、たくさんライヴや取材の機会があったりすると思うのですが、生活で変わったところはありますか?

生活は変わらないですね。むしろ変わってほしい(笑)。

どんなふうに変わりたいの?

あんまり寂しくなくなりたい。歌っている時はいいけど、家に帰ると寂しいんですよね

ひゅーいさんのライヴってハイテンションに気持ちを高めていくから、燃え尽き感とかライヴ後、結構反動がくるんじゃないかなと思ってました。

そう、それがすごくて。今まさに燃え尽きています…。一昨日まで47都道府県50公演(『石崎ひゅーいTOUR2013 全国!ひゅーい博覧会』)を回ってたんですよ。それで分かったんですけど、僕にとって歌うことって、いろんなものを捨てて“個”になって、その“個”を突き詰めていく行為なんですね。肉体的も精神的にも大変でした。

企画を知った時、これは無謀だって思ったもん。

最初は“全然余裕でした!”とか言おうと思っていたんですよね。でも、3日目ぐらいから弱音吐きまくってました(笑)。もちろんライヴはとても楽しかったんですけど、旅中に曲が生まれたり、とかって余裕はなかったですね。

確かにひゅーいさんの曲って、旅で生まれる感じはないですよね。自分のリアルな生活の経験がきっかけでありつつ、想像力の強さでファンタジーに昇華していくというか。そこがひゅーい楽曲の魅力で、創作の源って感じですよね。

そうなんですよ。毎日ライヴして音楽に携わっていたらクリエイティブな頭になるかなと思ってたんですけど、まったくならなくて。ネットサーフィンして、オナニーして、カップラーメン食べて、ゲームして、寝て、また次の日も予定入ってなくて…みたいな時のほうが曲って生まれるんですよ。家に閉じ込めておいたほうが曲はできますね(笑)。

「夜間飛行」のこだわりポイントを聞きたいな。

この曲って、人間は自分が飛べないっていうことを知っているという曲なんです。飛んで会いに行く、みたいなことは口に出しては言えるんだけど、本当は飛べないっていう…。ちなみに“飛んでく三部作”の中のひとつなんです。「第三惑星交響曲」で母親の近くに行きたくて飛んで、「ファンタジックレディオ」では妄想でトリップして飛んで、「夜間飛行」で大好きな女の子のために飛んでっていう。僕の曲って結局飛びたいんだってところに結び付くんですよね。

なるほど。ちなみにカップリングの「1983 バックパッカーズ」も、良い意味で肩の力が抜けた楽しげなシャッフル感が絶妙にツボでした。

おちゃらけた曲にしようと思ってたんですよ。5、6年前からある曲で。その当時バックパッカーが流行っていて、友だちはみんな、アジアに行ってたんです。僕も行きたかったけど、パチンコで金ないし、家にいて生まれた曲なんです。

どこの国へ旅してみたいとかあります?

当時、インドのガンジス川の夢を毎日のように見ていたんです。川に白い花が流れていく、ただそれだけの夢でした。ある日イサオって友達がインドに旅して写真が送られてきたんですけど、その写真と夢の映像が一致したんです。そこで“あ、インドのガンジス川なんだ!”って分かったっていう。なので、インドには行ってみたいですね。
「夜間飛行」
    • 「夜間飛行」
    • ESCL-4061
    • 2013.06.05
    • 1020円
石崎ひゅーい プロフィール

イシザキヒューイ:1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライヴ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤 晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライヴ活動を展開する。2012年7月にミニアルバム『第三惑星交響曲』でメジャーデビュー。13年6月にテレビ東京系ドラマ『みんな!エスパーだよ!』のエンディング曲「夜間飛行」、7月に1stフルアルバム『独立前夜』を発表した。18年3月に自身初のベストアルバム『Huwie Best』をリリース後、全48公演におよぶ全国弾き語りツアーを実施。20年11月、菅田将暉へ提供した映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌「虹」が大ヒット。21年5月に刑事ドラマ『警視庁・捜査一課長season5』の主題歌「アヤメ」をリリース。同年12月に5年振りとなるオリジナルアルバム『ダイヤモンド』を発表し、22年にはデビュー10年を迎える。また、『アズミ・ハルコは行方不明』や『そらのレストラン』といった映画に出演するなど、俳優としても活躍中。石崎ひゅーい オフィシャルHP

OKMusic編集部

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