【中島美嘉】真摯に生きる姿勢を歌っ
たニューシングル

中島美嘉から、2013年第二弾シングル「僕が死のうと思ったのは」が届けられた。注目のロックバンド、amazarashiが作詞・作曲を手がけたこの曲は、生きることに真摯に向き合う姿を描いた、渾身のロックバラードに仕上がっている。
取材:森 朋之

まずは5月から8月にかけて行なわれた全国ツアーについて。チャート1位を獲得したアルバム『REAL』を中心にしたツアーだったわけですが、手応えはどうでした?

楽しかったですよ。でも、普段のツアーよりもものすごくパワーが必要だったんですよね。たぶん、久しぶりのツアーだったからだと思うんですけど…。ヴォーカルに関しても、新しい課題も見つかったりして、まだまだ、やらなくちゃいけないことがたくさんあるなって思います。

ツアー中、特に印象に残っていることは?

ファンの人たちがサプライズの演出をしてくれるんですよ、いつも。メッセージを書いた丸いウチワをみんなで掲げてくれるんですけど、普段のツアーでは大阪公演の時にやってくれることが多いんですね。でも、今回はなぜか新潟だったんです(笑)。すごくびっくりしました。いつも心から応援してくれてるし、本当にありがたいなって思いますね。

今回のツアーのテーマも、“ファンの人たちに自分の思いを直接伝える”ということだったわけですからね。ツアーの後半では、ニューシングル「僕が死のうと思ったのは」も披露されましたが、お客さんの反応はどうでした?

歌詞がはっきり聴こえるようにしたいって思ってたんですけど、曲の持っているパワーがあまりにもすごくて、茫然としている人も多かったですね。歌い終わった時、一瞬、“あれ? ダメだったかな?”と思うくらい、放心状態みたいになってる人もいて(笑)。もちろん、ちゃんと伝わったなっていう手応えもありましたけどね。

すごいパワーですよね、確かに。まず、“僕が死のうと思ったのは”というタイトルもとんでもないインパクトだし。

最初はね、“もっと前向きなイメージのタイトルに変えるんだろうな”って思ってたんですよ。私もいろいろアイデアを考えてたんですけど、スタッフから“このままでいいよね”って言われて。私としては“うん、それならそれで全然構わないですよ”っていう感じだったんですけどね。もしかしたらネガティブな想像をする人もいるかもしれないけど、最後までちゃんと聴いてもらえたら、実は前向きな曲だっていうのが分かってもらえると思うし。

なるほど。この曲を最初に聴いた時の印象はどうだったのですか?

泣くのを堪えながら、放心状態になってましたね。

ライヴのお客さんと似たような感じですね。

そうですね(笑)。とにかく“すごい曲だな”って思って…。最初の予定では、“今回のシングルはアップテンポにしよう”っていう話だったんですよ。その方向で制作を進めてたんですけど、amazarashiさんからこの曲をいただいた瞬間に、そんな予定なんか全部吹っ飛んじゃって。スタッフも私も含めて“この曲を歌いたいよね”って。

歌詞にも共感できた?

うん、もちろん。誰でも似たような経験があると思うんですよね。死んじゃいたいとは思わなくても、気持ちがどんより曇っていて、生きるのが辛いなっていう時期はあるだろうし。一番最後の歌詞(《あなたのような人が生きてる 世界に少し期待するよ》)を聴いてもられえれば、全然ネガティブな曲じゃないってことが伝わると思うんですよね。好きな人、大事な人がいるから頑張れる、生きていられるってことも、もちろんあるし。

個人的には《死ぬことばかり考えてしまうのは きっと生きる事に真面目すぎるから》というフレーズが心に残りました。これって、美嘉さんの印象にもつながるなって…。

私もね、その一行でやられたんですよ。“そうか、確かに”って。救われるような感覚もあるし、歌っていると心が安らぐんですよね。自分自身が背中を押されるし、元気が出る。そういう意味でも、大事な曲になりましたね。

レコーディングの時も自然と気持ちが入ったんじゃないですか?

やっぱり“歌詞をしっかり伝える”ということは意識してたんですけど…歌っていると自然とそうなるんですけどね…最初はこの曲の難しさに対応するだけで必死でした。amazarashiさんの曲って、独特の譜割り(メロディーに対する歌詞の乗せ方)があって、言い回しとかもすごく個性的なんですよ。今までに歌ったことにないタイプの曲だったし、まずは(デモ音源を)完コピして、1カ所も変えないようにしようと思って。何度も何度も繰り返して聴いてたから、頭がおかしくなりそうでしたね(笑)。

でも、完璧に自分のモノにしてますよね。リスナーに語りかけるような歌い方も素敵だし、サビではロック的なダイナミズムもしっかり感じられて。

ありがとうございます。もしかしたら、年齢も関係あるかもしれないですね。もし、もっと若い時にこの曲を歌っていたら、重みがないというか、単に“カッコ良いね”っていうだけになっていたかもしれないなって。30代だからこそ、良い意味の重さだったり、リアリティーみたいなものも出せるんだと思うんですよ。楽曲のメッセージを全部受け止めて、責任を持って歌えるというか。そこは変わってきた部分かもしれないですね。

30代になったからこそ、歌える歌というか。

うん。実際、30歳になってからどんどん調子が良くなってきたんですよ。27歳くらいまではいつもモヤモヤしていたし、“若くてきれいなうちに終わりにできたらな”って思ったりもしてたけど、30代になったら“妖怪扱いされるまで生きよう”って(笑)。細かいことでクヨクヨ考えることも少なくなってきたし、本当にいい感じですね、今は。
「僕が死のうと思ったのは」2013年08月28日発売Sony Music Associated Records
    • 初回生産限定盤(DVD付)
    • AICL-2573~4 1575円
    • 通常盤
    • AICL-2575 1223円
中島美嘉 プロフィール

ナカシマミカ:1983年鹿児島県生まれ。2001年にドラマ『傷だらけのラブソング』のヒロインに抜擢され、シングル「STARS」で歌手デビューを果たす。02年リリースの1stアルバム『TRUE』はミリオンセラーを記録。以降も「雪の華」、「愛してる」、「桜色舞うころ」などヒット曲を生み出し、女優としても活躍する。05年公開の映画『NANA』では主役のナナ役を熱演。10年に両側耳管開放症の悪化により音楽活動を休止するも、11年に活動を再開。その後も精力的に作品リリースを続け、19年1月に「雪の華」リリース15周年を記念したベストアルバム『雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE』を発表。同年2月には「雪の華」をモチーフにした同名の映画が公開された。近年ではアコースティックライヴや海外での単独ライヴを開催するなど精力的な活動を展開。21年10月にシングル「SYMPHONIA / 知りたいこと、知りたくないこと」をリリースし、12月に“Piano & Voice”シリーズであるカバーアルバム3作品目を発表する。22年2月からはライヴツアー『Mika Nakashima Premium Live Tour 2022』も開催。中島美嘉 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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