【見田村千晴】1対1で向き合える曲
を書いていきたい
人の弱さに光を当て、率直に歌い上げるシンガーソングライター見田村千晴。年間100本以上のライヴ活動を行なっていた彼女がミニアルバム『ビギナーズ・ラック』でメジャーデビュー!
取材:桂泉晴名
1曲目の「ラブソング」は《自分探しに行く前に》というインパクトのある詞、そしてアカペラで始まりますね。
大学時代からギターと曲作りを始めたのですが、「ラブソング」は当時の曲で、ミニアルバムに収録されている中では一番古いんです。それまで自分が書いた曲に自信がなかったけど、ライヴで歌ったら“アカペラで始まってアカペラで終わる曲、いいね”と言ってくれる人が増えて。がっつり歌う自分のスタイルに少し自信がついたんで。
曲中、使用されているのはブラジルの打楽器だそうで。
アレンジはプロデューサーの松岡モトキさんと相談して決めました。私はシンガーソングライターの小谷美紗子さんの世界観がすごく好きで、構成がシンプル、かつソリッドな感じで痛くもあるから“こういうふうにしたいな”とずっと思っていたんです。アルバム全体としては、厚く重ねてきれいにお化粧していくのではなく、人間臭い感じを出したくて。できるだけ削ぎ落とし、アコギと歌がドカンと中心にあるような作品になりました。
特にメッセージ性の強い詞が心に残りますが、強烈に伝えたい思いがあって、この道を目指したのでしょうか?
きっかけは“歌いたい!”という思いからでしたね。だから、自分が主役の歌はそんなに多くない。自分の体験談であっても、それを詞の中の人にやってもらって描くことが多いです。「秘密」という曲は、終電間近のカップルの心情を描いていますが、そんな男女がいたら見ちゃうだろうな、と思って考えましたね。映像を詞にする時は、“一番シンプルで適切な言葉って何だろう?”と探している感じです。もともと妄想することは好きなので。
「妄想と現実とチョコレート」という曲もありますね。
自分のラジオ番組のタイトルをもとに作ったんですけど、妄想もチョコレートも私の好物です(笑)。ヴァイオリンとパーカッションがすごく情熱的でありながら、私自身はわりと淡々と歌っているから、そのギャップも楽しいと思います。
長年、ヴァイオリンとピアノをやっているそうですが。
まだヴァイオリンは自分のライヴでは披露していませんが、いつか弾きたいな、と。ギターを後ろに回してヴァイオリンを持つとか(笑)。私の原点はライヴなので、武器にしていきたいですね。
「明日天気になりますように」はアコーディオンやリコーダーも入っていて、温かみのある楽曲に仕上がっていますね。
そうですね。間奏で口笛が入っているんですけれど、これは松岡さんが吹いていて、ブレスも聴こえるのでそういった生っぽさに思わずニヤっとしてしまいます(笑)。仲間にコーラスを入れてもらったり、今回のレコーディングでは本当に素晴らしいミュージシャンの方々に参加いただきました。
“ビギナーズ・ラック”というタイトルに込めた思いは?
自分に対して自嘲しているところもあって。私は今27歳だから年齢的にもそんなに若くもないし、ようやくここまでくることができたな、という思いも入っています。
聴く人に、どういうふうに届けばいいなと思いますか?
思っていても口にしない部分や、今まで言葉にしてこなかったけれどみんな思うこと、私はそういうところに言葉とメロディーを与えたくて。“こんなこと思って、嫌な人間だ”と思っても、私が歌うことによって“みんなにあるんだよ”と言ってあげられるんじゃないかと。孤独感やコンプレックスを抱えている人に、1対1で向き合える曲を書いていきたいし、そういった気持ちに寄り添えたらいいな、と思いますね。
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