L→R 山口教仁(Dr)、花沢耕太(Vo&Piano)、辻本健司(Ba)

L→R 山口教仁(Dr)、花沢耕太(Vo&Piano)、辻本健司(Ba)

【Chicago Poodle】僕らにしか歌えな
い11曲を入れることができた

4枚目となるアルバムのタイトルに掲げたのは“Life is Beautiful”。緑の葉を茂らす木と根のように生える枯れた木のジャケットが物語るように、ただハッピーなものだけではなく、当然のようにネガティブな表情もそこには描かれている。
取材:石田博嗣

今作はタイトルが全てだと思うのですが、やはり人生をテーマに作り上げたという感じですか?

花沢
そうですね。2月に「シナリオのないライフ」というシングルを出したんですけど、その中でも人生を歌っていまして、その流れで人生を歌ったアルバムを作ろうってなったというか。

アルバム用の楽曲を用意する時から、そんなビジョンがあったのですか?

花沢
そうでもないですね。でも、アルバム用に曲を作っていく中で、コンセプトは結構早い段階で決めたんですけど、人生ってやっぱりいろんなことがあるわけで…それは恋愛に対してもそうだし。“人生は美しいんだ”とタイトルで謳ってるんですけど、中身は綺麗事というか、そういうものにはしたくなかった。
山口
僕らもデビューして5年ですけど、いろんなことを経験してきたし、別れもあり、出会いもあり、決していいことばかりではなかったですからね。そういう酸いも甘いも含めて“人生って美しいんだよ”って言って生きていきたいなという思いが、このアルバムのタイトルにつながったと言えます。

そんな意識の中で生まれた楽曲なのですが、より広がりが出た印象がありました。

花沢
過去の作品を越えたい!じゃないですけど、より良い作品を作りたいという思いにあふれた一枚になりましたね。もう1回、“良い曲ってなんやろ?”と見つめ直したというのもあるし…“Chicago Poodleにしか歌えない曲”というのをすごく考えました。どちらかと言えば自分の声に合っているのは、ちょっと暗めなマイナーキーだと思うんですよ。なので、そこはこのアルバムを作っていく中で一番考えました。フレーズであったり、メロディーであったり、自分の声がどういうふうに響くのかってことを意識して一曲一曲やってましたね。例えば、“この曲は気怠く歌いたい”ってなれば、テンポを落としたり、キーを下げて歌いやすくしたり。そういうところに今回は時間をかけました。

歌がより生々しくなっている印象があったのは、そういうところなのでしょうね。関西弁の曲「泣いたらええ」は語りかけるような感じだったし、そこに温度感があるというか、まさに体温を感じました。

花沢
この曲に関してはおっしゃるように温度感というか、“泣いたらええ”と我鳴るんじゃなくて、やさしく“泣いたらええやん”っていう歌い方をしました。逆に「just my special lady」は、さすがにレコーディングする時はお酒とか飲んでないんですけど、独り呑みをしてやさぐれている感じを意識しながら歌いましたね。メロディーの段階ではどういう歌にしようかというのは決めてないんですけど…何にも縛られずに自由に良いメロディーを追求したいんでね。だから、歌詞が乗った時に初めて“あ、こういう色が付いたんや”って。そこで、“こういう色が付いたんやったら、こういう歌い方をしよう”という感じで一曲一曲やっていきました。

そんな花沢くんから上がってきた楽曲をアレンジしていく時は、どんなことを意識していました?

辻本
“Life is Beautiful”というタイトルが決まった段階で、やっぱり人生っていうのは、「シナリオのないライフ」の歌詞で言うところの“喜怒哀楽”とか“春夏秋冬”とかいろんな要素があるので、明るい曲暗い曲というだけじゃなくて、1曲の中でも人生を感じるアレンジというのも意識しました。今回は自分たちだけでアレンジするんじゃなく、いろんなアレンジャーさんにお願いをしたので、新しいChicago Poodleというか、今までなかったChicago Poodleになったかなって思いますね。
山口
今回は結構多くのミュージシャンの方に参加してもらっていて、「Good-bye, what a wonderful world」「LaTaTa」はパーカッションを入れてもらって、「泣いたらええ」「Good-bye, what a wonderful world」はサックスに入ってもらったり、アレンジ面でも元GARNET CROWの岡本(仁志)さん、古井(弘人)さんに頼んだりとか、新たな試みをしてますね。
辻本
“ここで、ホーンが欲しいな”とかなったら、ブラスのアレンジをお願いしたりっていう感じでね。やっていくうちに“これ、サックスが欲しいな”って見えてくるので。「泣いたらええ」はサックスのソロが入ったら絶対ええやんなってなって、サックスを生で弾いてもらった…しかも弾いてくれた方も、やしきたかじんさんのコンサートのバックで弾いていたような方なんで、まさに「泣いたらええ」にぴったりで。そういう味付けというか、一曲一曲の個性を強めていったんですけど、それでも“人生は美しい”というタイトルにうまいことまとまったかなと思います。

そういう意味では、中盤の「Good-bye, what a wonderful world」と「LaTaTa」はすごくフックになっていますよね。

辻本
ヘンテコな曲ですからね(笑)。でも、好きな人は好きという。
山口
ちょっと通好みの曲なんですけど、僕らも一番気に入っているくらいの曲ですからね。なかなかこういう曲をやっているバンドも少ないと思いますね。「Englishman In New York」のオマージュというか、ちょっと参考にさせてもらったんですけど。
辻本
「Good-bye, what a wonderful world」は、もともと花沢のデモでは全然コーラスが入ってなかったんですよ。普通のメロディーだったんですけど、歌詞を書いた後に花沢から“ここ、コーラスを入れるイメージがあるんやけど”みたいな後出し注文みたいなのがあって、“確かに、それカッコ良い!”ってコーラス部分の歌詞を書いたのを覚えていますね。

今回のアルバムでは歌詞の部分でも、人生について書こうと思っていたのですか?

山口
それとなくはありました。“Life is Beautiful”というタイトルが決まる前に書いていた曲もあるんですけど、決まった時点で意識するようになりました。
辻本
もともとシングルとして出した「君の笑顔がなによりも好きだった」と「シナリオのないライフ」は絶対に入れたいという話はしていて、「シナリオのないライフ」はまさにその名の通り、人生の歌なんですけど、「君の笑顔がなによりも好きだった」は失恋というか、別れてしまった人への思いを歌っていて。でも、失恋とかも人生の一部というふうに思えば、もともとあった曲でも今回のテーマに合うなってのはありましたね。「just my special lady」はちょっと前に書いた歌詞やったんですけど、最後を飾るに相応しい曲になったし。

3曲目の「夢色キャンバス」はタイアップソングですけど、《さあ出来上がるのはどんな「自分」だろう》とChicago Poodleらしい“Life is Beautiful”を提示していますしね。

山口
この曲は伊予銀行の企業イメージソングで、ちょっと前に出来上がっていた曲なんですけど、今回のテーマにばっちりハマってますね。

オープニングを飾っている「Life is Beautiful」はタイトルが決まってから作った曲になるのですか?

花沢
そうですね。1曲目になる曲を作ろうって。歌から始まって、みんなで歌えたらいいな、みたいな。このアルバムのコンセプト的な言葉で伝えられて、それこそおっしゃったみたいに生々しいというか、そういう曲にしたかったところはありますね。
山口
でも、歌詞は最初、“Life is Beautiful”って言いながらめちゃくちゃダークだったんですよ(笑)。
辻本
“Life is Beautiful”という曲名だけ見たら、普通はめっちゃ明るい曲だと思うんですが…
花沢
“四畳半”とか出てきて、ダークすぎるやろ!って(笑)。
山口
暗い引きこもってるヤツが主人公で、“でも、俺はここで生きてんぞ! 人生は美しいぞ!”みたいな感じやったんですけど、あまりにも暗すぎて(笑)。
辻本
あの暗い歌詞ができた時、僕、“ええのできた!”と思ったんですけどね(笑)。でも、“ケセラセラ”という言葉が出てきて、ようやく方向が見えたという感じでしたね。

結果的に幕開けに相応しい曲になりましたね。クラップも入っていて、みんなで歌える曲になっているし。

山口
これはまさにQUEENの「We Will Rock You」を彷彿させますよね。

僕は映画『天使のラブソング』を思い出しました。

辻本
あー、なるほど。ええ曲や!

あと、「泣いたらええ」の歌詞は関西弁という。

山口
花沢から“関西弁どう?”みたいな打診があって。今まで関西弁で書くってことすら考えたことがなかったので、びっくりしましたね。僕らは関西人やし、関西弁で書いても違和感はないと思って挑戦したんですけど、メロディーにも結構合うというか、花沢が歌うとそんなにくどくないんですよ。まぁ、新しいチャレンジでしたね。

花沢くんはこの曲を作った時から、関西弁のイメージはあったと?

花沢
関西弁というか、この曲はバラードなので自分のええとこの声が出ていて、歌いやすい曲にしたいっていうのがありましたね。とりあえず、あふれるままにバラードを作ってみようと思って、この曲は作りました。

歌いやすいというのが、自分的には関西弁だった?

花沢
そういうのもあったと思います。なので、山口に伝えて…自分の中では関西弁のこういう曲って今までなかったし、面白いんちゃうかなというのもあったし。ほんまに歌っててすごく気持ち良くて、デモの段階から感情移入ができました。

「Good-bye, what a wonderful world」は歌詞も印象的でした。どこか虚無感があるけど、最後は希望で終わるみたいな。

辻本
そうですね。この曲は歌詞を書く前にアレンジについて話し合っていて…最後に盛り上がるとか言ってたんですね。結果、すごく抑揚のあるアレンジになったんですけど、最初は淡々と始まって、途中で落ちるところまで落ちて、最後に盛り上がるっていうのがすごい人生っぽいなと。“Life is Beautiful”というタイトルのアルバムに入るわけだから、まさに人生をテーマにしようと考えて思い付いたのが、《the life is up to you》という言葉だったんです。“人生はあなた次第だよ”って。いろんな出来事ってひとつの側面から見ると、誰かにとっては嬉しいことでも、誰かにとっては悲しいことだったりすることもあるなって思ったんですね。だから、最初はネガティブな思いもあるけど、それでも最後はポジティブに生きようというのにしたらどうかなというところから、この歌詞は広げていきました。

歌詞は音やアレンジに呼ばれたと?

辻本
そうですね。そもそものデモのメロディーが結構Aメロが淡々としていて、サビがきれいな裏声で美しいなと思ったので、こういう歌詞が合うかなと思って。あと、自分たちが普段使っている言葉を使ったほうがいいかな、伝わりやすいかなとも思ったんですけど、この曲は歌詞らしい言葉使いに思い切って寄せてみようと思って書きました。

歌詞もサウンドも曲調も全てがフックになる曲ですよね。ちなみに、花沢くんはどんなイメージでこの曲を作っていったのですか?

花沢
構成は結構悩みましたね。Aメロ→Bメロ→サビがきて、2番もきて、2番以降どうしようかって。
辻本
スタジオで言ってたもんな。そのまま3番までいったら持たへんな、みたいな。
花沢
コーラスの“Good-bye, what a wonderful world”とかは頭に残るし、いいメロディーやと思っていたんですよ。でも、それを3番まで飽きずに聴いてもらうためにどうしたらいいんかなということで悩みましたね。そこはメンバーと話して、コーラスを持ってきたらええんちゃう?ってなったんですけど。で、最後は劇的に破壊的にいきたいなというので、ビートを変えようと。

で、サックスを入れたり?

花沢
そうですね。最後は派手にしたかったので。だから、最初のイントロを聴いた印象と、この曲が終わる頃に感じる印象は全然違うと思うんですよ。そういう曲ってChicago Poodleにはなかったし、それこそ自由に作れた一曲だったんじゃないですかね、この曲は。

結果、“Life is Beautiful”をタイトルに掲げて自分たちのど真ん中みたいなことをやりつつ、いろんなことにもチャレンジして、より広がりが出たアルバムになりましたね。

山口
本当、そうですね。最高傑作です! 10年後くらいに“Life is Beautiful”ってアルバムを出してたら、また違うアルバムになってたかもしれないですけど、今の僕らの“Life is Beautiful”という感じですね。

10年後だともっと渋い?

山口
今でも十分渋いんですけどね。「just my special lady」とか(笑)。
辻本
「just my special lady」みたいなのがいっぱい入ってるかも(笑)。
花沢
もうそこは一周してアップテンポとか?(笑)
辻本
やたらテンション高いアルバムになってる(笑)。

(笑)。でも、すごくいいアルバムになりましたよね。

辻本
今回のジャケット、すごく気に入っているんですよ。下の根っこというか、枯れ木の部分、この部分があるから上の緑の部分があるみたいな。そういうものがジャケットでも表現できたし、ここまでアルバムのタイトルを意識してアレンジであったり、歌詞を書いたのも初めてだったし。

今作のタイトルというのは、まさにChicago Poodleが歌うべきテーマっていう感じですしね。

山口
こういうテーマが僕らには一番しっくりくるのかなと思いますね。
花沢
山口も言ってたんですけど、ほんとに最高傑作というか、自信の持てる一枚に仕上がったと素直に思いますね。どこを切り取ってもChicago Poodleやし、僕らにしか歌われへん11曲を入れることができたというアルバムですね。

このアルバムが出て、ワンマンライヴが2本決まっているわけですが。

花沢
今回はサックスが効いていたりするじゃないですか。そういうのが実現できればなって思ってます。あと、曲数をいっぱいやるとかじゃなくて、一曲一曲の聴かしどころというか、こだわって間奏とかも伸ばしたりとかしたいなって。今回の2本というよりかは、このアルバムでツアーを回りたいとも考えているので、そこでよりはっきり聴く人に色付けできればなっていうのはありますね。
山口
このアルバムでツアーも回りますし…それこそ1曲目の「Life is Beautiful」もみんなで歌って、最高の空間を作り出していけたらいいなと思ってます。でも、ライヴに関しては今まで通りというか、お客さんとのキャッチボールを心掛けていきたいなと思っています。
辻本
今回のアルバムはChicago Poodleなりの“人生は美しいんだよ”っていうメッセージなので、来てくれた人が聴きたい一番のお目当ての曲が、人それぞれにあるんじゃないかなって。僕らは一曲一曲心を込めてやるだけなんですけど、それがどんなふうに伝わるかというのがすごく楽しみですね。
『Life is Beautiful』
    • 『Life is Beautiful』
    • GZCA-5267
    • 2014.09.24
    • 2700円
Chicago Poodle プロフィール

シカゴプードル:精力的にライヴ活動を続ける中、コンスタントに作品を発表し続け、09年3月にシングル「ODYSSEY」でメジャーデビューを果たした。80年代洋楽ポップスが持つ懐かしくも切ないメロディーラインや花沢の伸びやかな歌声、山口&辻本のリズム隊が織り成すアーバンなアンサンブルから“ピアノ名曲工房バンド”と評されている。Chicago Poodle オフィシャルHP

OKMusic編集部

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