【LIGHT BRINGER】LIGHT BRINGERって
こういうアルバムも作れるんだ!

年内をもって無期限の活動休止に入ることを発表したLIGHT BRINGER。その前に届けられたニューアルバム『monument』は、彼ららしくもあり、さらなる広がりも感じさせる傑作だ。このサウンドが全てを物語っているとも言えるが、同作についてFuki(Vo)に語ってもらった。
取材:土内 昇

前アルバム『Scenes of Infinity』はメンバーチェンジを経て、バンドが新しくなったことを示すような作品でしたが、今作は今のバンドでライヴもこなしてきてのアルバムになりますね。

前作はメンバーが変わって最初に出すアルバムだから、絶対に外せないぞ!っていう気合いの入ったものだったんですけど、その気合いが功を奏してかなりメタルなアルバムができたと思うし、いい手応えがありましたね。ファンからしてみれば、メンバーが変わって不安もあったと思うんですけど、それにちゃんと応えられたと思います。で、今回は新しいメンバーになって2枚目ということで、どんなものにしようか?ってなったんですけど、これが難産だったんですよ。本当なら5月に出す予定だったのが、延期して11月になったんです。で、いろいろデモを出してもらって、いい曲を選んだら、結果的にキーボードのMaoくんの曲が多くなったんですけど、アルバムが出来上がってみたら、LIGHT BRINGER らしさに加えて、なんかこなれた感じが出たかなって。“メタルで頑張ろう!”みたいなところが、ちょっと和らいだ気がしてます。

いい意味で前作ほどの派手さはないのですが、サウンドの密度や濃度が増した感じがありました。よりポップで、よりハードで、よりプログレッシブで、より技巧的みたいな。

それは嬉しいですね。確かに、プログレ色が増した気がします。Maoくんが曲を作る時にどんなことを意識していたかは分からないんですけど、LIGHT BRINGER らしい曲を作ろうとした中で、バリエーションに富んだ曲を書いてきてくれたと思いますね。

特に方向性とかは話し合わず、個々に曲作りをしていたのですか?

そうですね。前作があまりにも“メタルのアルバムを作るぞ!”って感じだったので、今回はテーマ的にはそこまでの意識はなかったと思います。

アレンジを煮詰める時は前作みたいにセッションで?

ベースのHibikiは全てのパートまで完全に作り込んでくるタイプの作曲者であり、アレンジャーなので、彼の曲に関してはデモを忠実にバンドで再現するっていう感じですね。ただ、今までは他のメンバーが書いた曲もHibikiがアレンジをして、彼のフィルターを通した上で曲を完成させていたんですけど、今回のMaoくんの曲はMaoくんが完成させています。Hibikiのアレンジが入っていないっていうのが、今までと違うところですね。でも、Maoくんはひとりで全パートを作り上げるHibikiタイプではなく、他のメンバーを巻き込みながら作っていくタイプなので、Hibikiの曲とMaoくんの曲は明らかに作り方が違うっていう。あと、7曲目の「名もなき友 〜Lost in winter〜」は外部のアレンジャーが入ってます。

Maoくんの曲が多かったので、今回はHibikiくんはディレクションに回ったのかと思っていました。

そうではないですね。でも、Maoくんは曲を作る時にFukiの音域のことだったり、ヴォーカルが栄えるアレンジだったり、そういうところを考えているので、結果的にLIGHT BRINGER らしいものになったから、そこは破綻していなくて良かったです。

でも、そのLIGHT BRINGER らしさが今までと違いますよね。今までにもあった色だったけど、ずっとメタル色の後ろにあったものが、今回は前面に出ているというか。

あー、それはありますね。自分の中では、なんとなくファンタジックな印象があったんですけど、そういうことなのかもしれないですね。メタルっぽい曲を作ろうとしなかったから、そういう感じになったのかもしれない。

メタルっぽいのは「ICARUS」ぐらいですからね。あと、ライヴバージョンの「陽炎」と。どちらもHibikiくんの曲ですし。

そうですね。「ICARUS」は5月の時点でシングルカットされた曲なので、メタルの雰囲気をまとってますね。5月にアルバムが間に合わないってなった時、ツアーには出るからせめてシングルを出そうってなって、その時に出揃っていた中から選んだのが「ICARUS」で…その時点でMaoくんの曲もあったんですけどね。そこからが難産でした(笑)。

だからって、いい意味でプログレに行き切っていないので、ちゃんとLIGHT BRINGERらしいものになっているんですよね。

そっちに行きすぎると聴く人を選んでしまうし、メロディアスやキャッチーな部分を失っちゃうとリスナーを置いてけぼりにしちゃうんですよね。そうなるのは嫌なんですよ。LIGHT BRINGERらしさって“歌モノであること”だと思うから、それを大前提にして曲を作っていると思います。

歌詞についてはいかかでしたか? さっきアルバムの雰囲気についてファンタジーと言われていましたが、そういうところがテーマになっていったり?

今までと大きく書き方は変えてなくて…曲を聴いて、“この曲にはどういう歌詞が合うだろう?”って自分の中や外から探して、当てはめていくという書き方なんですけど。前作は天使と人間の結ばれない恋愛だったり、孔雀になりたかったけどなれなかったカナリアだったり、そういうフィクションでファンタジーをモチーフとしたものが結構多かったんですね。今回はもうちょっとJ-POP視点のファンタジーというか。天使と人間や孔雀がどうのっていうモチーフってメタルにマッチするじゃないですか。今回はもっと普遍的なファンタジーなんですよ。まぁ、曲調に合わせたら、結果的にそうなったんですけどね。5曲目の「魔法」なんかは、今まで一番ポップな曲…J-POPな曲だし。

アニメのエンディングに使えそうな曲ですよね。

そうそう。この曲は魔法使いの女の子が勇者と一緒に旅をしていて、女の子は勇者に恋をしているんですけど、言いたくても言い出せないっていう。そんな甘酸っぱさ、ピュアさっていうのはメタルには似合わないので、そういうモチーフを用いていたりしますね。あと、「名もなき友 〜Lost in winter〜」はやさしい幽霊をテーマにしていて。“小さい頃に一緒に遊んでいたんだけど、覚えてないよね。今も見守っているよ”っていうような。そのテーマもメタルっぽくないですよね(笑)。この2曲がメタルっぽさのないファンタジーを取り入れた曲なので、これがあるかないかで、だいぶこのアルバムの雰囲気が変わると思います。逆に3曲目の「Gothel」は前作の「孔雀とカナリア」や「人形が見た夢」と似たような視点だったります。これはグリム童話の『ラプンツェル』に出てくる悪役の魔女の歌詞なんで、前作にあってもおかしくないかもしれないです。でも、全体を見た時のバランスで言うと、小学校に置いてある絵本とかにありそうなファンタジーだなって(笑)。

その中で、“時計仕掛けの旅”もキーワードだったりしますか? 「旅途」で始まるし、“Clockwork Journey”というタイトルの曲があるし、最後の「monument」には歌詞に“時計仕掛けの旅”という言葉が出てくるし。

アルバムを通して“旅”をテーマにしようとは考えてなかったですね。ただ、「Clockwork Journey」と「monument」は意図的にリンクさせてます。アルバムタイトルの“monument”と、最後の「monument」のタイトルの“monument”はHibikiが決めたんですよ。普段は曲のタイトルは私が決めるんですけど、今回は曲が完成する前からそれを聞かされていて…さらに「Clockwork Journey」と「monument」は同じフレーズや同じメロディーが出てくるので、この2曲をリンクさせることも先に聞かされていたんですね。その話の後に「Clockwork Journey」の歌詞を書き始めたんです。「Clockwork Journey」も私のオリジナルのファンタジーなんですけど、この歌詞に出てくる主人公の少年は洞窟の中で生まれて、その洞窟から抜け出して自分の未来を手に入れるためにタイムマシンを作るんですよ。で、過去に遡って自分の未来を変えるっていうストーリーなんです。そのタイムマシンによる旅が成功したかどうかは、現代の私たちには分からない。そんな現代の私たちの視点で、「Clockwork Journey」の主人公への思いを馳せた歌詞が「monument」という。

あー、なるほど。でも、最初と最後がリンクしているから、アルバム全体もそういうふうにとらえられますよ。「Gothel」や「魔法」は遠い時代の話だし、「名もなき友 〜Lost in winter〜」は自分の幼少期の頃の話なので、時空を旅しているというか。なので、“時計仕掛けの旅”がキーワードなのかのと思っていました。

そうやってめちゃくちゃ好意的に聴いていただいて、こっち的にはラッキー!って(笑)。意図したのは2曲目と8曲目のリンクだけだったんですけど、そういうふうに感じていただけたのなら良かったです。

では、そんな歌詞を歌うヴォーカル入れはどうでしたか?

激しいものと激しくないものの差がすごくあるので、曲に寄り添うような歌い方をしました。激しい曲は激しく、ポップ調のものはやさしく…そのやさしさの中でも同じものにならないように気を使って。「魔法」は小さな女の子が主人公なので可愛いさや幼さを意識しながらやさしく歌いましたね。それに歌い方が似ているのが、「名もなき友 〜Lost in winter〜」と「monument」で。どう「魔法」と違うやさしさを出すかってところで、「名もなき友 〜Lost in winter〜」は幽霊側の視点で歌っていて、これも男の子なので幼いんですけど、女々しさを出さないようにして。語尾を跳ね上げると女っぽくなるんですよ。なので、「魔法」は語尾を跳ね上げて女の子っぽく、可愛く歌ったんですね。「Gothel」も魔女なので語尾を跳ね上げるんですけど、妖艶さも醸し出して。で、「名もなき友 〜Lost in winter〜」は可愛くならないようにしつつ、やさしさを失わないようにしたんですけど…結構、難しかったです(笑)。「monument」はバラードなんですけど、切なさを出しすぎるとあざとくなってしまう気がしたので、なるべく感情を入れないようにしました。「陽炎」のライヴバージョンをボーナストラックと見れば、アルバムの最後を飾る曲になるので、切ないだけで終わりたくなかったんですよ。曲調的にも最後に向かって盛り上がっていくので、その力強さも出しつつっていう。自分の中では、この3曲の差別化はすごく考えましたね。

「Dicer」は?

この曲が一番地声に近いんですよ。喋っている声に。なので、「Dicer」はレコーディングがめちゃくちゃ早かったです。作曲者であるJaY&Maoが言ってたんですけど、アメリカンな感じの曲、洋楽っぽい曲を作りたいって。で、出来上がったものもアメリカンなロックンロールだったんで、メロディーに日本語を乗せるのが難しくて、“ここは英語にしよう”って決めて歌詞を書いたんですね。そんな雰囲気に合う歌い方っていうことで、外人になった気持ちで歌いました(笑)。

パンチが効いているというか、ワイルドというか、荒んでますよね(笑)。

あ、荒んでますね(笑)。台詞を喋るような歌い方というか、80年代のミュージカルドラマのワンシーンを意識してましたね。言われたような、荒んだ感じになればいいなってのは思ってました。今までのLIGHT BRINGERにはない曲調だし、今までにない歌い方に挑戦してみたら、意外とあっさりと終わったという感じです(笑)。

「ICARUS」はFuki節が全開だし、いろいろなアプローチに挑戦したという感じですね。だから、丸くなったわけじゃないですけど、メタルヴォーカルだけじゃなく、豊潤さも得た感じがします。

おー、それは嬉しい。ありがとうございます。だから、めちゃくちゃ歌ってて楽しかったです。「ICARUS」みたいなメタルっぽい歌い方が好きだし、一番得意なんですけど、いろんな歌い方に挑戦できて幸せでした。

いろいろな意味で、バンドを深化させたアルバムになりましたね。

そうだと嬉しいですね。もっとメタルっぽい曲が入ってると思ってたのに!って肩すかしを食らうリスナーもいると思うんですよ。それでも“いい!”って思ってもらえるか、がっかりされるかっていうのは…とはいえ、激しさが減っただけで、クオリティーが下がっているわけではないと、自分たちでは思ってるんですよ。だから、“LIGHT BRINGERってこういうアルバムも作れるんだ!”っていう発見がありましたね。私はこのアルバムが今までの中で一番好きです。

リリース後にはツアーが控えているわけですが、今回のアルバムの曲がレパートリーに入ってくるとライヴの印象も変わるでしょうね。

そうでしょうね。難しい曲がいっぱいあるから頑張らないと(笑)。アルバムの発売が11月5日で、ツアーが8日から始まるんで、めちゃくちゃ近いんですよね。なので、お客さんも頑張って曲を覚えてもらわないといけないという。

ヴォーカル的には?

難しいだろうなって思ってます。いろんな歌い方をしているので、どこまで再現可能なのかって。「魔法」は大丈夫だけど、「名もなき友 〜Lost in winter〜」は難しそう。「Dicer」は超簡単です(笑)。でも、どの曲もライヴでやるのが楽しみです。いろんな歌い方をするのは楽しいし。

曲ごとの気持ち的なモードチェンジが大変そうですけどね(笑)。

そうですね。間にうまくMCをはさんでいかないと(笑)。
『monument』2014年11月05日発売NEXUS/KING RECORDS
    • 【初回限定プレス盤(DVD付)】
    • KICS-93060 3600円
    • 【通常盤】
    • KICS-3060 3086円
LIGHT BRINGER プロフィール

ライトブリンガー:2005年4月結成。Fukiのキュートなルックスと確かな歌唱力、メロディアスでテクニカルなメタルサウンドで注目を集める。11年11月にシングル「noah」でメジャー進出を果たし、デビューアルバム『genesis』を引っ提げての東名阪ワンマンツアーは追加公演も含めて全会場ソールドアウトに! その後、メンバーチェンジを経て、新体制で2枚のアルバムを完成させるも、14年11月1日に年内をもって無期限の活動休止を発表した。LIGHT BRINGER オフィシャルHP

OKMusic編集部

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