【FOLKS】北海道の冬が生み出したオ
リジナルサウンド
北海道恵庭市在住のFOLKS。彼らが地元の冬の息吹を音に封じ込めて完成させたのが、2ndミニアルバム『SNOWTOWN』。多彩な音色、メロディー、ハーモニーが、リスナーのイマジネーションを心地良く刺激する一枚だ。制作の背景に関して岩井郁人(Vo&Gu)が語ってくれた。
取材:田中 大
北海道の冬をテーマにした一枚ですね。
はい。「冬の向日葵」が北海道の冬をテーマにしているんですけど、この曲は僕らが最初に出したインディーズ盤の頃からあったんです。それをそろそろ出したいなと考えた時、“この曲を含めた一枚はどういうものがいいだろう?”と。そこで出てきたのが、“自分たちが生まれ育って、音楽を発信している町をテーマにする”っていうことでした。ありのままの僕らの景色を切り取ると“冬”って欠かせないですし、必然的にこういうものになるんですよ。東京に来ると刺激的ですし、エネルギーももらうんですけど、それを自分たちなりのフィルターを通して表現すると、どことなく柔らかい音になる感じもあるんですよね。
ネットの発達によって、地元に根差しながら発信できるようになっているのも、今の音楽シーンの面白さですよね。
どこに住んでいてもいろいろインプットできるようになっていますし、高価な機材があるスタジオを使わなくても音楽が作れるようになっていますからね。そういう中、ミュージシャンは何を問われるのかというと、イマジネーション。そして、土着性みたいな部分も大事になっているんだと思います。でも、僕らは奇抜なものとしては見られたくなくて。メロディーとか歌を入口とすることによって、いろんな人に届くものにしたいと思っています。
「CARVE OUT」やラブリーサマーちゃんがゲストヴォーカルで参加している「CAPITAL MORNING」のようなダンサブルなサウンドの曲も、幅広いリスナーに心地良さを噛み締めてもらえるんじゃないでしょうか。
去年はライヴの機会も多くて、夏フェスとかにも出させていただいたので、そこで得たものもいろいろあるんです。今回、それを自分たちなりのアプローチでかたちにした部分もあります。「CAPITAL MORNING」は、アフロビートを取り入れています。このリズムって南方のリズムだと思うんですけど、ワクワク感みたいなものがあるんですよね。そういうテイストを、遠距離恋愛をしていている人が好きな人に会いに行くワクワク感と重ねています。そこにさらに冬っぽいキラキラした音も入れながら作った曲ですね。
FOLKSの音楽ってメロディーやハーモニーはもちろん、鳴っている音色にもすごく深い雰囲気がありますよね。
例えばギターと歌だけで伝わる曲っていうのもあると思うんです。でも、音自体にもメッセージとか感情が宿ると僕は思っていて。音色にも無限の可能性があるんですよね。最近、楽器じゃないものを楽器に見立てることもやっているんですよ。例えば、自分の鼓動を録ってキックドラムの音にしてみたり。あと、雪を踏みしめる音をイコライザーで調整したり、自分の声を加工してベースの音にしたり。今回、「Northern Lights」っていうインスト曲で環境音を入れたのも、そういうアプローチです。地元のトンネル内でハンドクラップした音を録って、それを音楽に活かすこととかいろいろ考えています。
面白そうですね。
いろんなアイデアが膨らみますよ。音の波形を解析するソフトがあるんですけど、それを今回のアルバムのリバーブの音に使ってみたりもしているんですよ。リバーブってその土地の雰囲気、土着性、アイデンティティーを出すのにつながると思うので。
お気に入りのトンネルとかあるのですか?
あります(笑)。材質とかも重要なんですよ。だから、“FOLKSの音と言えばこの劇場!”っていうような、自分たちの理想の音が鳴る空間が欲しいっていうような夢も持っています(笑)。
なるほど(笑)。
今回、「冬の向日葵」と「それぞれの日々へ」をプロデュースしていただいた砂原良徳さんからも音作りに関していろいろ教えてもらいました。砂原さんも北海道のご出身なので、僕らの曲を聴いて“あの場所の感じだよね?”とかイメージを共有しながらプロデュースしていただけました。
「冬の向日葵」って、タイトルも北海道的ですよ。
そうかもしれないですね。北海道って四季がすごくはっきりしているから、色のイメージもすごく強いんですよ。冬は白と青、春はピンク、秋は黄色…というような感じで。そういう部分も今回出ていると思います。
サウンドに関しては「UNIVAS」が新鮮でした。トライバルなビートが印象的です。
ベースや鳴っているコードは、自分の声を加工したサンプルを使っています。まさに実験する中で生まれた曲ですね。実験する中で生まれた新しいものが、曲につながることがよくあるんですよ。音の研究、大好きなんです。趣味と言ってもいいくらいなので(笑)。
(笑)。「キャスカ」は岩井兄弟(郁人、豪利)のツインヴォーカルですね。
これはメンバーの小林禄与の作詞作曲なんですけど、彼の色が出ていると思います。歌っていても楽しい曲ですよ。FOLKSが感じてきたことを反映している曲なので、“僕らの歌にしたい”っていうのがあったんです。だから、ツインで歌ったり、最後のほうはメンバーみんなのコーラスも入ったものになっています。
今後に関して抱いているビジョンは何かありますか?
フルアルバムを作りたいなということは思っています。自分たちの町、見ている景色のイメージを音に変換していくっていうのをさらに極めたいです。
5月にはツアーが控えていますが。
デビューしてからいろんなことを体験してきたし、バンドとしてもすごく前向きなモードなので、そういうものも出せたらいいなと思っています。
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