【ヒステリックパニック】音楽性が合
ったら解散します(笑)
ラウドロックシーンでメキメキと頭角を現してきた名古屋出身の5人組、ヒステリックパニックがついにメジャーデビュー! その1stフルアルバム『オトナとオモチャ』は、ハチャメチャなサウンドの中にロックバンドとして矜持(きょうじ)が垣間見れる快作に仕上がってるぞ。
取材:帆苅智之
1stアルバム『オトナとオモチャ』収録曲はラウドなロックからハイスパートなコア系に展開し、そこからさらにキャッチーなメロディーにつながるといったような、躍動感のあるダイナミズムあふれるサウンドがほとんどですね。
$EIGO
多分“アルバムの中にあんな曲やこんな曲が入っていたら面白いね”という気持ちがあったんだと思います。飽きやすい性分なので(笑)。
アルバム1作にいろいろな楽曲が収録されているというよりは、1曲の中にいろいろなタイプが凝縮されていますよ。
$EIGO
まぁ…飽きないように展開を変えようと(笑)。
Tack朗
僕ら、わりと頭がおかしいので、気が付いたらこんな展開になっちゃったなみたいな…作り上げていく中で“あ、こうなっちゃったんだ? でも、面白いからやってみようよ”という感じで、基本NGも入らず、好きなようにやったらこのアルバムができたという。歌詞の面では若干禁じ手はありますけど…メジャーなんで(笑)。でも、サウンド面ではないんですね。
禁じ手なしでさまざまな要素を持ち寄って、よく1曲にまとめることができるな…と素人考えでは思ってしまいますが。
$EIGO
毎度、完成してみないと分からないというところはありまして…
やっち
最後の最後でやっと“あ、こんな曲だったんだ!?”って分かるという(笑)。
おかっち
みんな、好きなことをやるから、最初のデモの段階と最後の本チャンのトラックは全然違う。録ると決めた日に降りてきたものをそのままポンと出しちゃうんで、(デモとは)全然違うんですよ。デモの意味がないという(笑)。
J-POPと言ってもおかしくないメロディーもあれば、ワールドワイドなパンク、ハードコア、ファンクとかもあって、サウンド面は本当にバラエティー豊か。これはそれぞれのバックボーンを素直にぶつけているということでしょうか?
$EIGO
聴いてきた音楽がそれぞれ違うんですよね。例えば、やっちの聴いてきた音楽を、ともに紹介すると“何、それ?”ってことになる…そういうことがメンバーそれぞれによくあるんです。
Tack朗
音楽性の違いで結成したようなバンドです(笑)。
普通は逆ですけどね(笑)。
Tack朗
でも、ヒスパニはそこから始まってるんですよ。
$EIGO
音楽性が合ったら解散します(笑)。合わないからこそ、バラエティーに富んでいると受け取っていただけたんだと思います。
やっち
曲作りの時、昔好きだったアーティストを挙げて“○○のあの曲みたいな感じでお願い”みたいなことを言っても、だいたい伝わらない(苦笑)。なので、“じゃあ、好きにやって”という。
各パートが自らのバックボーンを素直にぶつけ合って、それぞれをスポイルしないという感じですね。歌詞に目を転じると、1曲目「メジャーデビューしました」に《売れたああい モテたああああい 印税で生活したあああああああい》とありますが、これもまた素直な気持ちをぶつけたという解釈でいいんでしょうか?
とも
だいぶ前からメジャーで音源を出す時の1曲目はこういうタイプだなという頭があって。僕、そんなにパンクを通ってきたわけじゃないですけど、これはアティチュード的にはパンクなのかな? メジャーデビューしたことに対する自分なりの皮肉もありつつ…という。
ロックミュージシャンたるものこのくらいの姿勢は示しておきたいという感じですか?
とも
根底にあるのは“面白いことをやりたい”なんですよ。ヒスパニはオケが完全に出来上がって歌詞を乗せるんですけど、オケがカッコ良いとまともな歌詞を乗せたくなくて。やっぱりダサさがないとウチじゃないかなと。「メジャーデビューしました」は$EIGOがすっげぇカッコ良いのを作ってきたので、もうノリで書こうと思って、想いを率直に出したらこうなりました(笑)。
「スイーツダンス」「ラウド日本昔ばなし」「MISSION 5」辺りの歌詞も同様のノリでしょうか? ストレートに真面目なメッセージを乗せるのではなく…という。
とも
そうですね。2010年以降は歌詞に《大丈夫》という言葉がすごく増えていると聞いていて、実際“励ましソング”というか、ポジティブなものが多い気がするんですけど、僕、結構ひねくれているんで、そういうの聴くと“何が大丈夫だよ!”って思っちゃうんですよ。“しょうもな”って。特に伝えたいものもなかったので…例えば、「ラウド日本昔ばなし」なんかは“日本昔ばなしをシャウトしたら面白いんじゃない?”という発想からです(笑)。
今言われた“何が大丈夫だよ!”って思うというのは、「あいのかち」の歌詞とも共通しますね。この楽曲はこのアルバムでもっとも物議を醸す内容だと思うのですが。
とも
最近の曲って、何か問題提議があって、それに対して背中を押すというか、“大丈夫だよ! 君ならできるよ!”という感じのものが多いですけど、“音楽で人は救われない”というのが僕の持論でして…“そんな安っぽいメッセージで元気になれるくらいなら誰も苦労しねぇな”と思うんです。無責任なポジティブさを出さないという自分の中でのルールがあるんですね。
「あいのかち」には《「辛いのはお前だけじゃない」と 吐き捨てるだけのお前なんかに何が分かる?》という、ものすごく強烈なフレーズがありますが、こういった内容はともさんにとってはリアルな言葉であり、みなさんの同世代のリスナーの中には共感する人たちも多いのでしょうか?
とも
多いでしょうし、自分たちよりも若い子にはさらに多いと思います。そういう部分で共感をもらえたりすることもありますんで。
“励ましソング”が現在のメインストリームだとすると、そこへのカウンターである「あいのかち」は十分にロックだと思いますよ。
$EIGO
こんなことは他の誰もやれないんじゃないですか? “やらない”ではなくて、“やれない”と思います。
- 『オトナとオモチャ』
- VICL-64366
- 2015.07.15
- 2376円
ヒステリックパニック:超絶ハイトーンのTack朗×凶悪スクリームのとも×極上コーラスの$EIGOのトリプルヴォーカルが織りなす唯一無二のハーモニーは中毒性抜群。ラウド、エモ、ハードコア、メタル、J-POPと、ジャンルの垣根を気軽に飛び超えながら音を紡ぐ、通称“ヒスパニ”が新たに生み出す、これが最新式のエクストリームなJ-POP。2015年4月にシングル「うそつき。」でメジャーデビューを果たした。ヒステリックパニック オフィシャルHP