【Ken Yokoyama】人生、一度しかない
から何でもやらなきゃもったいない!

前作『BEST WISHES』から約3年、6枚目のアルバムとなる『SENTIMENTAL TRASH』がリリースされた。新機軸と言える、“ロックンロール”に真正面から向き合った今作。横山健の生き様を鳴らす、魂のロックンロールに心震わせろ!
取材:フジジュン

“いつかやらなきゃいけない”の“いつ
か”が今きてる

『SENTIMENTAL TRASH』を聴いて、これまでのアルバムともまったく感触の異なる新しいサウンドに驚きました。

そうですね。まず、音楽的に幅を広げられることができたと思っていて…僕も45歳になるんですけど、メンバーもそれなりの歳なもんで。エルヴィス・プレスリーとか、チャック・ベリーとか、昔のロックンロールを小ちゃい頃から聴いてたんですけど、そういったものを今までは相当味付けしなければ、自分の作品に投影できなかったんです。だから、この歳にならないとできなかった味付けで、そういうものを楽曲に落とし込むことができたのが大きくて。歌詞の世界観は『BEST WISHES』の延長線上にあると思うんですが。『BEST WISHES』は2011年の震災を受けて考えを変えられたり、気付かされることが多くて…どういうことを歌いたいのか、歌うべきなのか、というところから入らなきゃいけなかったんですけど、あれから4年、癒えない傷もありますが、だいぶ癒えてきた部分もあって、次のフェイズにも向かわなきゃいけないといった、前向きなところもしっかり歌詞にできたと思います。起きてしまったことは仕方なくて、もう昔には戻れない。そこで自分の力で前に進める人もいるんですけど、“しょうがないよ、次に向かおうよ”と寄り添う必要がある人もいて。

“男だったらメソメソすんな、前を向いて進め”と歌っている「Boys Don’t Cry」とか、まさにそうですよね。こんな時代ですけど、こういう真っ直ぐなメッセージをしっかり受け止めてくれる若い子もきっと多いと思います。

うん、若い世代には特に歌詞を読んでほしいですね。

そこで健さんは最近、『ミュージックステーション』に出演されたり、今まで聴いてくれてたファン層以外の人にも知ってもらうため、誤解や勘違いにビビらず矢面に立つことをされていますが、何か心変わりがあったのですか?

いくつか要因があるんですけど、まずは個人的な話で、自分が歳を取ってきて、“思ったことをやらないと、いつ終わっちゃうか分からないよ”と思うようになってきたんですよね。死んだ後、何を思うか? …死んだら何も思えないかもしれないけど、もし自分を俯瞰することができたら、“あの時、肩肘張らずにやっとけば良かったと思うかな?”とか、そういうことがリアルに想像できるようになってきたんです。そう考えた時、“人生、一度きりしかないんだから、何でもやらなきゃもったいないだろ!”と思ってしまって。“いつかやらなきゃいけない時がくる”の“いつか”が、今きてる感じです(笑)。

僕も今年40歳になって、《本当に大切なことしか気にしない》と歌う「I Don’t Care」の歌詞に励まされました。

何かアクションを起こす時は必ずそれを叩く人が出てきて、僕も叩かれると人並みには傷付きますけど、15年もやってるとだんだん慣れてきちゃって(笑)。糸井重里さんが“何か物事をやろうとしたら、一緒に右側を走ってくれる人が出てくる。でも、それと同時に左側には同じ速度で悪口を言う人が走っている。だったら、右側を向いて走らなきゃダメなんだ”と書いてて、その通りだなと思ったし、左を見て怒ってるエネルギーももったいないなと思うんです。

『ミュージックステーション』に出演した時は、SNS等でも賞賛の嵐でしたよ。今、戦後70年で戦争を経験して語れる人がどんどん減っているように、僕はパンクやロックンロールの本当のカッコ良さを語れる人もどんどん減っている気がしていて。誤解も恐れず矢面に立って、“ロックってカッコ良いんだぜ”と証明してくれる健さんの存在が本当に嬉しいです。

ありがとうございます。僕も自分でもロックが小ちゃいものになっているかもしれないから、あえてTVで演奏することで“ロックってカッコ良いよ”“バンドってカッコ良いよ”ってことを分かってもらいたいと思って出たんですけど。僕の全体のストーリーを見てくれてる人が多かったのが、すごく嬉しかったですね。あと、“終わった後の表情が良かった”と言われることが多くて。そこからも何か読み取ろうとしてくれてることに、すごい希望が生まれましたね。僕が20年かけて発信してきたことが、ちゃんと伝わってるんだと思いましたし。単純に“ギターって、こんなにカッコ良いんだ”と思ってくれる子がいたら、最高に嬉しいですよね。徒労に終わるかもしれないし、カッコ悪いと思われるかもしれないけど、自分がそう思った以上は矢面に立って、“お前もこうなれるぜ!”って言いたいんです。僕ね、特別な人間じゃないんです。考えだって至ってノーマルだし、ギターだって上手くはない…これは謙遜じゃなくて。でも、ある一定のところを超えたらそんなの分かんなくて、結局、人はその気持ちに惹かれると思うんです。そこを信じて、子供たちには“俺みたくなれよ!”と言ってあげたいんです。

素晴らしいです! そんな健さんがロックンロールと向き合うことで、またギターキッズとしての興味や探究心をくすぐられて、今作の完成に至ったというのも面白いですよね。

そうですね。2年くらい前に弾くギターをエレキギターとアコースティックギターの中間の“箱モノ”と呼ばれるギターに代えたんですが、それがめちゃくちゃ楽しくて。生鳴りがすごいんですよ! もう高校生の時に戻ったみたいに、早くギターを弾きに家に帰りたいくらいの気持ちが出てきてしまって、その自分が作品に投影されましたね。

OKMusic編集部

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