【水樹奈々】テーマは“解放と融合”
! 近藤奈々と水樹奈々が今ひとつに

“ジャパニーズソウル=演歌”の魂は私
の中に宿っている

経験が歌の表現力につながるのは、他の音楽ジャンルも同じだと思いますが、演歌やジャズはそれが占める割り合いが、より大きいというわけですね。

想像だけでは補えないものがありますし、でも、こういう恋愛をしたからこういう歌が歌えるという単純なものでもないと思うんです。さまざまな人との出会いも含めて、いろんな経験が表現につながっていく…、それはほんのちょっとしたニュアンスの部分なんですけど、それによって聴いた時の印象が大きく異なるんです。私はまだまだひよっこですが、この年代でなければ表現できないものも、きっとあるはずだと思って今回チャレンジしてみました。

そのニュアンスというのは、具体的に言うと?

例えば、「アンビバレンス」の1番のBメロラスト。1番では譜面通り伸ばしているのですが、2番では短く切っていて。《ため息消せないまま 夜空を見上げた》という歌詞を見て、その心情では音を長く伸ばせないと感じたんです。今だからこそ、いろいろな歌い方にトライできるのですが、経験がなかった幼い自分では、そんな発想は生まれなかったし、きっちり譜面通り歌うことに集中していたと思います。

そうやって自分で考えてアレンジしていけるのが、ジャズを歌う時の醍醐味でもあるでしょうね。

はい! なので、レコーディングはすごく楽しかったです。歌うたびに表情が変わるので、テイク選びには悩みました。収録されているのは、4回歌った中での3回目のテイク。いい緊張感がありながら感情も乗っていて…。感情を乗せると言っても、こう思ってます!とコッテリ乗せるばかりではなく、あえて隠すことで浮き彫りになる切なさというか…。やっぱりこれも大人にならないと分からなかったことです。歌詞は終わりを迎えた恋を歌っているのですが、大人のいい女は、涙をこらえて去っていく男性を見送り、きっと姿が見えなくなったところで泣く。だから、気持ちを押し付けるのではなく、あえて堪えて伝えたいと思ったんです。その感情を歌詞だけでなく、歌声からも感じてもらえたら嬉しいです。

ニュアンスと言えば「エゴアイディール」では、ところどころにフェイクを入れているのが印象的でした。

レコーディング現場で、感情が高ぶって入れたくなってしまって(笑)。ディレクターさんが“ぜひ使いましょう”と言ってくださったんです。今までは、ここにフェイクを入れましょう!という段取りがあって入れていたのですが、ライヴ以外で思わず自分から出てしまったのは今回が初めてでした。自分の作曲だったからこそというのもあったと思いますけど、やはり自分の心が解放されていたんだなと実感しました。

今後がどうなっていくか楽しみですね。

いずれはピアノを弾きながら歌ってみたいです。いつかライヴで披露したい!

あと、「The NEW STAR」はソウルやファンクのイメージですね。

これもアルバムだからこそチャレンジできた曲です。“ジャパニーズソウル=演歌”の魂は私の中に宿っているので(笑)、それをどう融合させるかがポイントでした。ソウルの節回しは独特ですが、単にそれをなぞるのではなく、私なりのニュアンスで歌えたらと。新しい融合が生まれ、私らしいソウルになったと思います。

らしさという点では、「熱情のマリア」が、実に水樹さんらしい歌謡曲テイストの楽曲ですね。

曲を聴いた瞬間、昭和歌謡だとイメージが浮かびました。例えば中森明菜さんや山口百恵さんが歌っていたような、ちょっと大人でセクシーな曲にしたいと思い、いつもより一歩先へと踏み込んだ言葉で、大人の女性像を描きたいと思って作詞しました。愛に振り回されながらも愛に生きる女の性みたいな感じです(笑)。私が書く歌詞は、一人称が“僕”で中性的なものが多いのですが、この曲では“私”や“あなた”という主語だけでなく、語尾に“○○だわ”や“○○でしょう”など女性らしい言い回しを使い、より艶っぽさを強調しています。ドキッとする言葉を選んだことで、より大胆に歌うことができました。女性の妖艶さを意識した曲は「純潔パラドックス」や「悦楽カメリア」、「夢幻」などありましたが、それらのどれとも違ったものになったと思います。

では、最後に“SMASHING ANTHEMS”というタイトルに込めた想いを教えてください。

今回はいろいろな含みを持たせるのではなく、同じ想いを共有していただけるようにと、直球なものにしました。歌いたくてたまらない、届けたくてたまらない素晴らしい楽曲に出会えたという気持ちを込めて、“素晴らしい賛歌たち”という意味です。

ジャケット写真も、今回のテーマである“解放と融合”に沿っているそうですが。

はい。東洋と西洋の文化や歴史あるものと新しさが融合した街で、ライヴでまだお邪魔していないところ…という発想から、神戸で撮影しました。初回盤は『うろこの家』という異人館で、通常盤は六甲ケーブルで撮影しています。あと、甲子園でのライヴが実現できたらいいなという密かな夢もあるので、初回盤のフォトブックでは甲子園で撮った写真も入っています(笑)。
『SMASHING ANTHEMS』2015年11月11日発売KING RECORDS
    • 【初回限定盤(BD付)】
    • KICS-93297 3888円
    • ※初回限定盤特典:特製BOX+アイビーデジパック仕様+スペシャルフォトブック
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • KICS-93298 3888円
    • ※初回限定盤特典:特製BOX+アイビーデジパック仕様+スペシャルフォトブック
    • 【通常盤】
    • KICS-3297 3024円
水樹奈々 プロフィール

ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。水樹奈々 オフィシャルHP

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