【LOVE PSYCHEDELICO】ベスト盤ツア
ーのゾクゾクが詰まった記録
デビュー15周年のアニバーサリーツアーを高橋幸宏(YMO他)ら豪華メンバーと実施するなど、2015年は話題が多かったLOVE PSYCHEDELICO。そして年の瀬、さらにライヴ盤と新曲がリリースされるという嬉しいニュースが舞い込んできた。
取材:田山雄士
2015年はライヴをかなりやりましたね。
KUMI
そうですね。11月末に香港、台湾にも行ってきて、やっとひと息付いてる。T-SQUAREのドラムの坂東慧くんとか、ギターは元東京事変の長岡(亮介)くんやMellowheadの深沼(元昭)くんとか、新しい出会いが多くて楽しかったな。あ、佐野(元春)さんとも対バンでご一緒させてもらってね。
NAOKI
そうだね、佐野さんとライヴできたのも今年の大きな出来事でしたね。
そして、15周年の締め括りが5月30日(土)の昭和女子大学人見記念講堂での公演を収めたライヴアルバムになります。
KUMI
ライヴだからねぇ。本当にその日の記録。ベストを選んだとかではなく、脚色もないし。
NAOKI
ライヴ盤っていうのはいつでも出せるものではないし、(高橋)幸宏さんとツアーを回れるなんてこともなかなかない中、作品にしてもらえるのはありがたいですね。“今回のツアーではライヴ盤を出したい”とか、ミュージシャンは事前に考えないじゃないですか。いい演奏をするのが第一だから。それを記録してくれる人、かたちにしたいと思ってくれるスタッフがいて成り立っている。なので、僕らに盤への気負いはないです。
WOWOWでのオンエアもありましたよね?
KUMI
そうそう。でも、撮影した時点ではテレビ以外は特に決まってなかったの。ツアーのあとで話が進んで、リリースがちゃんと決まったのは秋くらい。
NAOKI
完全生産限定盤は書籍仕様で、初のBlu-rayが付いているんです。作品にするなら、映像はオンエアとはまったく違う新しいものにしようと、音も最初からミックスし直して、編集もし直しました。
KUMI
自分たちの演奏はね、振り返っても良い悪いの判断はしづらいんですよ。“いや〜、この日は素晴らしかった!”みたいには思わない。もちろん、作品化されるのは嬉しい。でも、自画自賛はないよね?
NAOKI
うん。逆に“これはマズかったな〜”っていうライヴはやってないし、やっぱりこの日の出来事なんだよね。僕とKUMIだけじゃなくて、バンドメンバーの想いやステージ上でのコミュニケーションも含めた記録。
その平熱感がとてもデリコらしくて、楽曲のフレッシュさや誠実さにつながってる気がします。
KUMI
あははは! そうかのかな? ま、これはツアー序盤だから、まだバンドの初々しさがありますね。探り合うような緊張感。
NAOKI
いい緊張なんですよ。例えば、幸宏さんのカウントひとつ取っても。その意味でピークを迎えた日の演奏かもしれない。ファイナルとかのビールを飲み干すようなライヴとは違う、たまらないゾクゾク感。それが伝わるミックスにしてます。全員の音がすごくよく聴こえて、こんなにヴォーカルのアコギがデカいミックスは珍しいと思う。
幸宏さんとのツアーはどうでした?
KUMI
もう、日々感じるものが多くて。バンドメンバーもみんな、演奏中は幸宏さんの音しか聴いてなかったんじゃないかな(笑)。そのくらいグッときてた。本当にカッコ良くて、言葉にならない音楽の深い情報がたくさん伝わってくるんだよね。でも、普段は飄々としてて、音楽論みたいなことは全然言わない。
NAOKI
演奏中に感じるんだよね。昔の人が太古の記憶を蘇らせるために鯨を食べる話じゃないけど、幸宏さんと1曲プレイするだけで、ロックもカントリーもエレクトロも全てを引っ括めた深みが悟れるような。そんなのステージ上で味わったことなかったから、びっくりしました。
特に印象深い曲はありますか?
KUMI
「Calling You」のビートなんかは、“これぞ幸宏さん!”だよね。
その点では「GRAPEFRUITS」も最高でした。ベスト盤『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I&II』には未収録だけど、セットリストにあって嬉しかった曲です。
KUMI
あ、本当に? 「This way」もだけど、幸宏さんが好きだったの。
NAOKI
“「GRAPEFRUITS」はやったほうがいいよ!”って言われたね。「This way」のビートはチャーリー・ワッツみたいな快感。そう言えば、ツアー前に“俺はこのバンドでチャーリー・ワッツになる”って断言してた。
KUMI
“ロックのドラマーになり切る”ってね。ドラマーとしてツアーを回るのは28年振りだそうで、こんなに歌わずに叩くのも久しぶりだって。おかげでどんどん腕が太くなっていって、“服が着れない〜”って(笑)。
NAOKI
プロレスラーばりのムキムキだよね。1980年代の矢野顕子さんのツアー以来だったらしいよ。
聴きどころ、観どころが多いですよね。前半は代表曲を中心に「It's You」のようなすごくライヴ映えする曲もあるし、後半は特にデリコのヒストリーを思わせる感動的な流れがありました。
NAOKI
このセットリストはね、どの時代の曲もやりつつ、このバンドが一番活きることを考えた結果です。
最後に、同じく15周年を迎えた渋谷マークシティとクリスマスコラボした配信曲「Merry Xmas To You」についても聞かせてください。
KUMI
これも秋に決まって、11月に作ったんですよ。
NAOKI
できたてホヤホヤ。綿密な準備をするよりも配信の時代らしくスッと届けて、クリスマスシーズンに聴いてほしいなって。ジングルのわりに、完成してみたら3分!
KUMI
いつもと一緒で、曲を作る時の気分で仕上げたの。マークシティさん側も驚いてたっぽいけど、特に時間制限なかったし、素敵だからOKよね(笑)。渋谷のイメージでもっと浮き立ったのを考えてみたものの、最終的にはしっとりとの中間みたいなシンプルな出来栄えになりました。ジャケットも私がささっと描いて、出しちゃうっていう。
NAOKI
時間ない中でこんなにちゃんとしたの描いてくれて驚いたよ。今年はグッズ含めて直筆が多かった(笑)。ライヴ盤のジャケも僕の手書きだしね。そんなところも楽しんでもらえれば。
- 「Merry Xmas To You」
- 2015.12.09
- 150円
- 『15th ANNIVERSARY TOUR -THE BEST- LIVE』
- 【完全生産限定盤(Blu-ray付)】
- VIZL-892
- 2015.12.23
- 7344円
1997年結成。00年1月、TOWER RECORD新宿店・渋谷店・名古屋近鉄パッセ店・大阪丸ビル店・下北沢ハイラインレコードの5店舗にて、2曲入り100 円カセットを数量限定発売。同年4月にシングル「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」でデビューすると、01年に発表した1stアルバム『THE GREATEST HITS』が200 万枚、02年発表の2nd アルバム『LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA』が100万枚を超える驚異的なセールスを記録。NAOKIの卓越したギターテクニックとKUMIのヴォーカルスタイルは、印象的なリフ、日本語と英語が自由に行き交う歌詞により、独自の音楽スタイルを確立している。LOVE PSYCHEDELICO オフィシャルHP