【Suara】曲から浮かび上がる情景に
浸って楽しんでもらいたい

9年振りにTVアニメ『うたわれるもの』シリーズのタイアップを担当しているSuara。シリアスで和のムードに満ちた作品世界に沿った「天かける星」では、暗い夜空で人々を導く星のように、凛とした歌声が煌めいている。
取材:清水素子

昨年10月に6thアルバム『声』、11月にシングル「不安定な神様」、そして今年の1月27日に今回のシングル「天かける星」と、ずいぶんハイペースなリリース展開じゃありません?

TVアニメ『うたわれるもの 偽りの仮面』のタイアップシングルが、前期/後期と2作続いたんですよ。そんな時に前アルバム『花凛』以降のタイアップ曲が溜まっていて、全部入れる必要はないんですけど、ここで出さないと丸々1枚タイアップ曲ばかりになりそうだったので、『うたわれるもの 偽りの仮面』のゲーム版タイアップ曲までを収録して、アルバムを出すことにしたんです。

昨年9月にゲームを発売し、10月からはTVアニメ放映されている『うたわれるもの 偽りの仮面』ですが、確かメジャー1stシングルもTVアニメ『うたわれるもの』のオープニングテーマでしたよね。

そうなんです。デビュー10周年の年に『うたわれるもの』の続編と関われるというのは、すごく大きなことで。もう一度Suaraを知っていただきたいという想いから、“Suara”という言葉が意味する“声”をアルバムタイトルにしたんです。そこで改めて自分の声を見つめ直すきっかけにもなりましたし、ファンの方々からも“郷愁に駆られる”とか“子供の頃を思い出す”という意見をよくいただくので、そういう派手さはないけれど素朴で懐かしい気持ちになるところが、私の声の特徴なのかなと。

確かに自然の似合う声だなとは感じます。街よりも星空が浮かぶというか。その点、古代の日本を思わせる『うたわれるもの』の世界観にぴったりだなと。

『うたわれるもの』の世界は、私の持つ声の雰囲気と一番シンクロ率が高いとはよく言われます。ただ、今回の「天かける星」は5拍子なのが難しくて! なので、リズムを意識しすぎずに、曲のドラマチックな展開や、ダイナミクスを表現することを重視しました。物語も後期に入り、いよいよ戦が始まるイメージがあったので、ちょっとシリアスな気分というか。絶望の時も幸せの時も君がいたからこそ…という歌詞にグッときたので、大事な人を守り抜きたいという誰にでも当てはまる普遍的な感情に焦点を置いて、強く、しっかり芯を出して歌っています。そんな追い詰められた状況の中でも、人間を導いてくれるひと筋の光が“天かける星”ということなんです。

なるほど! 結果、強さと硬質な面が押し出されたのに対し、エンディングテーマであるカップリングの「星降る空仰ぎ見て」は、温かみや柔らかさが際立ちますね。

そうですね。ゆったりとして壮大な曲なんですけど、メロディーはすごく叙情的で懐かしい感じがするので、子供の頃を思い出してもらえるような温かさを伝えられたらいいなと、やさしいトーンで歌いました。この2曲を含む一連の『うたわれるもの 偽りの仮面』の楽曲は、全て同じプロジェクトで制作が行なわれていて、ストリングスをアビーロードスタジオで録音した上でミックスを『アナと雪の女王』の「レット・イット・ゴー」を担当したデヴィッド・バウチャーさんが担当しているんですよ。3曲目の「悲しみの夜明け前」はタイアップではないのでいつもの制作チームで作ったサウンドになっていますが、こちらも『うたわれるもの 偽りの仮面』で流れていそうな和のヘヴィバラードになりましたね。歌詞は叶わない恋の歌で…私自身、そういう歌が一番好きなんです。

叶わない恋の歌が? それはなぜなのですか?

私、歌を通じて“これを世間のみなさまに伝えたい!”とかって大それた想いは全然なくて、曲から浮かぶ情景に浸って楽しんでもらいたいんです。そういう意味で季節感や時間帯っていう情景を一番描きやすいのが恋愛なんですよ。

なるほど。だから、Suaraさんの声って、自然の景色や色合いを感じるのかもしれませんね。

その色合いは意識して書いたり、歌ったりしてます。例えば「悲しみの夜明け前」だったら、朝靄のかかったグレーの中にひとりで佇んでいるとか。「星降る空仰ぎ見て」は鮮やかだけれど深い夜空のブルー、「天かける星」は同じ夜空でも黒に近くて、その中にひとつの星が光っている…という感じですね。

やはり寒色系の情景のほうがお好きですか? 赤とかピンクより。

はい(笑)。太陽と月だったら月、静と動だったら静のほうが好きで、自分が光を放つよりも照らされて浮かび上がるみたいなイメージのほうが好きですね。もちろん自発的にいろいろ行動できたら素敵だなと思うこともあるんですけど、課せられたハードルを越えるとか、期待に応えるっていうところに喜びを感じる想いが年々強くなっていて。だから、私が考えるSuaraを“これだ!”と見せつけるというよりは、スタッフだったり、ファンの方が持つイメージの中で、Suaraを私が演じているという感覚のほうが近いかもしれません。

では、4年振りのバンドライヴとなる5〜6月の東名阪ツアーでは、どんなSuaraを演じてくださるのでしょう?

まずは歌唱自体のクオリティーを上げて、新曲の世界観を最大限に表現していきたですね。アルバム収録曲はロック色が強かったり、アップテンポな曲も多くて、ファンと歌える新たなアンセムとして作った「Dream」も歌いたいと思っているので、さらに盛り上がるライヴになると思います。前にイベントで「不安定な神様」をやった時にも予想以上に沸いたので、そうやってアッパーな曲で煽っていくような面も、これから出していかなきゃいけないんだなと(笑)。もちろんアップテンポな曲だけじゃなく、悲恋の歌だったり、いろんな楽曲を歌うので、ぜひそれぞれの情景を感じに来ていただきたいです。ここ最近ライヴに来てなかった方も久しぶりに来ていただきたいですし、「不安定な神様」からSuaraを知った新しいファンの方々にも来ていただけたら嬉しいですね。
「天かける星」2016年01月27日発売F.I.X. RECORDS/KING RECORDS
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • KICM-93314 1944円
    • ※特製スリーブ仕様
    • 【通常盤】
    • KICM-3314 1296円
Suara プロフィール

スアラ:学生時代からバンド/ユニットを組み、精力的にライヴ活動を行なう。2005年9月に「睡蓮-あまねく花-」でデビュー。TVアニメ『ToHeart2』のエンディングテーマ「トモシビ」、同じくTVアニメ『うたわれるもの』のオープニングテーマ「夢想歌」を歌うなど、その歌声がアニメ・ゲームファンをはじめとする広い層に届き、注目を集める。10年から香港・韓国などでライヴを行ない、韓国や台湾でもCDを発売するなど、ワールドワイドな広がりをみせている。“Suara”とはインドネシア語で“声”を意味する。Suara オフィシャルHP

OKMusic編集部

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