【Fuki Commune】カッコ良いと思うことしかやっていない

    LIGHT BRINGERのヴォーカリスト、Fukiがソロプロジェクトを始動させた。アニメやゲームのタイアップを中心にしつつも、そのサウンドはやはりメタル! ストロングスタイルやハイトーンなど、彼女の魅力の詰まった1stアルバム『Welcome!』について語ってもらった。
    取材:土内 昇

    LIGHT BRINGERが2014年12月をもって無期限の活動休止となって以来、いよいよ始動ですね。

    そうなんですけど、自分ではそんな感じはないんですよ。去年1年間、Sound Horizonのアルバムに参加させてもらったり、ギタリストの若井 望さんのアルバムに参加して、ライヴにも出させてもらったり、Unlucky Morpheusでも新譜を出したり、ワンマン2デイズを2回やったりしたので、むしろ2015年はむちゃくちゃ充実した活動をしていました。なので、Fuki Communeに対して“新たな一歩”という実感は、実はあんまりないんです。でも、いろんなところにゲストで呼んでもらって歌うんじゃなくて、ソロとしてのアルバムを出してこそ初めて“ソロデビュー!”という感じは、確かにありますね。

    新たにバンドを組むよりも、次はソロでやっていこうと思っていたのですか?

    はい。バンドはずっとやってきたし、Unlucky Morpheusもやってるし、Gacharic SpinのメンバーとのDOLL$BOXXも活動休止しているわけじゃなくて、お互いが忙しいだけなので、これ以上バンドの活動を増やすとスケジュールが大変なことになるということもあって。自分ひとりのソロのほうが身軽だし、フットワークも軽くいろんなことができるということで、ソロでやっていこうと。なので、これまでのバンド活動ではできなかったことをやりたいと思ってます。例えば、アニメソングのタイアップとか。LIGHT BRINGERの頃もできるんだったら、ぜひやりたかったんですけど、結局叶うことはなかったんですよ。Fuki個人としては、アニメソングを歌いたいっていう想いが十代の頃からずっとあったんです。アニメソングのコピーバンドを遊びで組んでいたこともあるし。だから、“アニメソングを歌いたい!”というのがソロで活動する一番大きな願いでした。それでアニメや声優系に強い今の事務所に所属させてもらうことになって、アニソンシンガー的な活動をやっと始動させることができたわけです。でも、メタルも好きでやっていたので、そのことに不満はないんですよ。“せっかくだったら、アニメのタイアップとかやりたい”と思っていた部分が叶った感じですね。

    もともとアニメが好きでしたものね。

    そうなんですよ。だから、今の状況が考えられない…アニメソングのタイアップをいただいて歌っている今の状況を、1年前の今頃は想像できていなかったですからね。テレビで毎週自分の歌声が流れるという、この嬉しさを忘れちゃいけないなって。早くも慣れそうになってますから…。それこそこういうインタビューを初めてしていただいた時って、すごい嬉しかったんですよ。雑誌に自分の写真が載ること、記事が載ること、それが本屋さんに並んでいることってすごい嬉しかったはずなのに、10年ぐらいシンガーとして活動をしてきて、それに慣れてしまっている自分がいる。そんな時にアニメソングのタイアップという新たな嬉しい出来事が加わったので、自分を戒めるわけじゃないですけど、“これはすごいことなんだぞ!”って自分に言い聞かせてます。

    すでにアニメやゲームの楽曲を歌われているのですが、歌ってみてどうですか?

    楽しいですね。何が楽しいって、歌詞を書く時に最初からテーマが決まっていることがすごく楽しくて。TVアニメ『テラフォーマーズ リベンジ』 のエンディング主題歌「Strength」は作詞してないんですけど、例えばTVアニメ『怪盗ジョーカー』シーズン3 エンディング主題歌の「輝く夜へようこそ!」だったら、『怪盗ジョーカー』の資料をいただいて…それも作品のファンには発表されていないような極秘資料だったりするので、そういうものを見ながら歌詞を書かせてもらうことがすごく嬉しくて。だから、“私はこの作品のタイアップをするんだ”って実感しながら歌詞を書いてました。3日くらいで書けましたよ(笑)。

    今までも自分でテーマを決めて歌詞を書いていましたけど、それとはまた違いました?

    “こういうテーマで書こう!”って決まるまでが長いんですよ。だから、書き方という意味では、テーマが決まったあとのプロセスは一緒なんですけど、そのテーマが指定されることってこんなに書きやすいんだって(笑)。

    タイアップということは、その曲は自分の曲でもあるけど、アニメの曲になるわけですが、そういう感覚はどうでしたか? 他のアーティストはよくオーダーメイドするような感覚だと言ってますけど。

    なるほど。でも、タイアップがあろうがなかろうが、曲って自分ものじゃないんですよ。バンドのものになるので。ただ、歌詞を書いて、“これでどうですか?”って先方にお渡しして、“ここをこういう表現にしてもらえますか?”って戻ってきて書き直すのは初めてのことでした。今までは全部任せてもらっていたし、“ここは日本語じゃなくて英語にしようか”ぐらいの話し合いはあったんですけど、具体的に“ここの言葉は変えましょう”とクライアントから言われるのは初めてのことで…そういう意味では、オーダーメイドっぽいですね。歌詞はいつもこだわって書いているので、他人から注文されるのは抵抗があると思ってたんですけど、全然そんなことなかったです(笑)。むしろ、心地良かったくらいで。自分のためじゃなくて、他人のために作っていることが実感できたからですかね。

    これからは“Fuki Commune”として始動するわけですが、この“Commune”に込めた想いというのは? “コミュニケート”ということだと思うのですが。

    そうですね。言葉の意味的には名詞と動詞のどっちもあって、名詞だと“共同体”的な意味があって、動詞だと“親しく語り合う”“心を通わせる”“共感する”という意味があるんですけど、もうそのままですね。Fukiひとりでやるのではなくて、Fukiがいろんな人とコラボレーションする、コミューンするっていう意味です。演奏陣が固定していないということが、 ソロの利点なので。

    そして、そのFuki Communeとして完成させたソロ1stアルバム『Welcome!』ですが、どんなビジョンを持って制作に臨みましたか?

    これまでのメタルのリスナーにもカッコ良いと思ってもらえるものにはしたかったですね。今までもメタルをやりつつもポップなものもやってきたんですけど、“Fukiと言えばメタル!”というのは自分自身も思っているし、それが一番の得意分野だってことも分かっているので、そういう曲を必ず入れようと思っていました。

    本作はLIGHT BRINGERのキーボーディストでもあるMaoくんと一緒に作っているわけですけど、そういうことを事前に話し合って?

    そうですね。でも、Maoくん自身のバックボーンはメタルじゃなくて、クラシックなので、Maoくんの得意な曲も書いてほしいってお願いしました。メタルっぽい曲も作りつつ、Maoくんの好きな曲…それはメタルを意識しなくていいって。Maoくんは単純にいい曲が書ける作家でもあるので。だから、一緒にやってる感じですかね。とにかくMaoくんには自由に、たくさん曲を書いてほしかったんです。若井さんと一緒に編曲している曲もあるけど、伸び伸びと書けたんじゃないかな。たぶん、Maoくんのやりたかったこと、書きたかったものも詰まっていると思います。

    バリエーションに富んだ楽曲が収録されてますからね。

    LIGHT BRINGERの頃みたいにメタルバンドという枠がない分、自由度が高かったのはあるでしょうね。でも、LIGHT BRINGERもバリエーションに富んでたから…このアルバム、聴かれてみてどうでしたか?

    いい意味でなのですが、バンドバンドしていないなと思いました。どうしてもLIGHT BRINGERと比べてしまうからだと思うんですけど、楽曲の真ん中に歌があって、演奏もヴォーカルを立てている印象を受けたので。

    なるほどー。他の媒体の方には、逆にバンドっぽいと言われたので、いろんな意見がありますね。確かに、どの曲もアニメソングのタイアップが付いててもおかしくない曲調だったりするし、間奏が短かかったり、プログレ要素がないから…そう言えば、変拍子がほとんどない! それはめっちゃ大きい! そこですかね。

    あー、それかも! あと、バリエーションという部分でも、「青い季節に」のさわやかさは今までにはないですよね。

    今までで一番さわやかに、かわいく歌おうっていうことをめちゃくちゃ意識しました。

    LIGHT BRINGERの頃も「魔法」というさわやかな曲でポップな曲がありましたけど、それ以上ですからね。

    実際「魔法」はリファレンスに使ったというか、当時の歌い方を参考までに聴いてみたんですよ。当時の自分はめちゃくちゃかわいく歌っているつもりだったんですけど、まだ力が入っている…“今の私だったらもっと抜いて歌える”と思ったんですよね。なので、それを参考にしながら、もっと吹っ切って歌ったというか。思い切りやらないと、意外と音源になった時に伝わりづらかったりするので、かわいい曲なら大袈裟なくらいかわいく歌おうとか、カッコ良い曲なら大袈裟なくらいカッコ良く歌おうとか、どの曲も心がけて歌ってましたね。

    「魔法」の時も90年代のJ-POPやアイドルの曲を意識したとか言ってましたしね。

    かわいい恋愛ものだったので、松田聖子さんとかを意識してましたね。でも、今回は全体的に“こういう恋愛モノのアニメだから”とか、“こういうアニメに出てくる主人公のかわいい女の子”みたいなことを意識しながら歌っていました。

    曲に沿って歌った?

    今までも曲に沿おうとしていたんですけど、今回が一番理想的な感じにできたと思いますね。大袈裟にやらないと伝わらないということが分かったので。

    打ち込みがベースのバラード「朝な朝な」(あさなさな)や和テイストの強い「狂い咲け雪月華」の歌い方は新鮮だったのでは?

    新しいですよね。どちらの曲もFuki名義でタイアップをしたゲームの曲になるんですけど、歌入れの時にヴォーカルディレクションの方がいて、ゲームの主題歌になることを前提に“もうちょっとこういう歌い方をしてください”って具体的な指示をいただきながら歌ったんですよ。そういう経験がそれまでなかった…もう好き放題に歌わせてもらっていたから、さっきの歌詞のリメイクと同じで、“こうしてください”って指示されるのがすごく楽しかったんです。自分で考えたんじゃなくて、他人から支持されて歌ったからこその表情が出ているんだと思います。自分ひとりで歌入れしていたらこうならなかった、っていうところですね。

    そういう曲もあれば、「I'll never let you down!」のようなど真ん中のメタルナンバーもあって。

    この曲が一番カッコ良くて、好きですね。曲順も私とMaoくんとで決めた…10曲目の「未来」というダークなバラードは“暗くて入れるところに迷うよね”とか、11曲目の「Sail on my love」は“これは絶対に最後だよね”って話し合いながら決めていったんですけど、「I'll never let you down!」は青山英樹さんのドラムはすごいし、長谷川淳さんのベースと私の歌声の絡みもいいし、最後のほうに入ってくるオルガンも超カッコ良いから、この曲は後半よりも前のほうに入れて、ガツンとインパクトを出そうということで4曲に入れました。ほんと、超カッコ良い曲で…自分で言っちゃうくらい、超お気に入りです。

    めっちゃカッコ良いですよ。この曲はこの楽器陣だからこその曲ですよね。

    そうですね。他のミュージシャンが弾いていたらこうはなってなかっただろうし、それぞれの個性が出てますよね。デモとはだいぶ違うんですよ、ドラムパターンとか、ベースのフレーズとか。アドリブ的な要素が強い曲ですね。私の歌い方も結構遊んでいます。そういう意味では、ライヴっぽいかも。

    ヴォーカルの溜めの部分というか、“ん〜”って力を入れてるところがめちゃくちゃカッコ良かったです!

    “こういうのをやってみよう!”って歌入れの時にやってみたら面白かったので、入れようってなりました(笑)。

    さっきダークなバラードと言われた「未来」もアルバムの聴かせどころですね。

    そうですね。ここまでダークで、3拍子のドラマチックな曲って初めて歌ったし…すごく難しかったですよ。歌いづらいというか、ノリづらいテンポ感なので。この曲は手塚治虫さんの漫画の『火の鳥』がテーマなんです。

    それで歴史の目撃者者みたいな歌詞なのですね。

    まさに! 『火の鳥』ってそういう漫画だし、それの“未来編”がテーマになっているので、タイトルも“未来”なんです。

    なるほど。では、本作のレコーディング自体はどうでしたか? バンドメンバーは名うてのミュージシャンが勢揃いしているわけですが。

    ギターとキーボードは宅録だったので、ドラムとベースの録りに立ち会ったんですけど、超カッコ良かったです! 去年の10月にMaoくん、岩井さん、長谷川さん、青山さんという面子でFukiとしてライヴをやったんですけど、その時がリズム隊の初顔合わせだったんですね。その時も長谷川さんは“青山くんってすげー!”って言ってたし、今回のレコーディングでも“やっぱり青山くんってすごいね!”って長谷川さんがしきりに言っていたのが印象的でした。実際、青山さんはドラミングがすごく正確だし、アレンジもアドリブも臨機応変でできるし、とにかく出来上がったものがめちゃくちゃカッコ良いんですよ。で、私のレコーディングの時は、Maoくんの曲はMaoくんがディレクションしてくれて…その時も基本的にはLIGHT BRINGERの頃とは変わらず、私が好きに歌わせてもらって、カッコ良ければオッケー!で。まぁ、特に目新しいことはなく、いつも通りに歌えましたね。周りのスタッフ陣もずっとお世話になっている人ばかりだったので。

    まさに渾身のアルバムができたという感じですね。

    でも、ひとりのリスナーとして、純粋にゼロからこのアルバムを聴けないんですよね。新鮮さがない…作っている過程で何度も聴いているので。実は作っている段階では、入れようと思っていたメタルやハードロックの要素はあんまり入れられなかったかなって思ってたんです。デモは打ち込みだったし、“これ、リスナーはメタルを感じるかな?”って不安があったんです。

    いやいや、がっつりメタルしてますよ。

    ありがとうございます。そうやって媒体の方とかに言ってもらえているので、安心しています。だから、すごく感想を聞きたいアルバムですね。今までは作っている段階と、出来上がったものにギャップがなかったというか。それはバンドだったからだと思うんですね。でも、今回はかなり手探りなところがあったし、曲調もああしようこうしようって話し合いをすごくしていたから、どんなサウンドのアルバムになるかイメージできなかったんです。とりあえず今は“ちゃんとロックなアルバムになったらしい”という感じなので、リスナーのみなさんの感想を教えてほしいですね。『怪盗ジョーカー』で初めて知った人が手にとるかもしれないし、きっと人によって違うと思うんです。アニメソングとかに親しんでいるリスナーはめちゃくちゃロックだと思うけど、メタルのリスナーはそうは思わないかもしれない曲もあるかもって。自分たちはカッコ良いと思うことしかやっていないので、サウンドには自信を持ってますけど。

    さっきも言いましたけど、浜田麻里さんのトータル・サウンド・ディレクターをやってる若井さんがギターを弾いていて、GERARDでベースを弾いているベテランの長谷川さんがいて、BABYMETALの青山さんがドラムで…っていう面子を見ただけで、超絶テクのメタルサウンドになっていることは想像できますよ。

    そっか! 当たり前に接している人たちなので、“この人が弾くからメタルになる”という一般の方の感覚がなかったです。確かに、“名前を見ただけでメタルバンドじゃん!”ってなりますよね。

    GERARDをやっている人が普通のベースは弾かんでしょ!ってね。

    バックボーンが分かっているとそうなりますよね。

    でも、それに負けていないヴォーカルがすごい! Fukiというヴォーカリストのストロングスタイルからかわいい歌声まで、この一枚で聴けるし。

    ありがとうございます! これまでも声の振り幅を出してきたつもりだったんですけど、今までの中で一番その差が大きいアルバムですね。一曲一曲のカラーの違いもあるんですけど、そこを散漫ととるか、バリエーションとしてとるかも人によって違うと思うんですけど、全部いい曲でカッコ良いと思ってます。

    このアルバムが世に出て、いよいよFuki Communeとしての活動がスタートするわけですが、Fuki Communeではどんなことをやってきたいと思っていますか?

    Fuki Communeは“Fukiが歌っている”こと以外は全て自由なので、アニソンのアーティストがやっているようなカラオケを流してステージに立つということもできちゃうんですよ。地方でのライヴもやりやすくなると思うんで、そういうことをどんどんやっていきたいですね。ライヴをいっぱいやりたいんですよ。あと…もう2ndアルバムを作りたいと思ってます(笑)。ワンマンライヴが控えていますけど、まだアルバム1枚しかないから、曲数的にも足りなかったりするので。

    そのワンマンライヴ『Fuki Commune Oneman Live ~Fuki Fes.~』は、“Fuki Fes.”とサブタイトルを掲げていますが、どんなライヴになりそうですか?

    サポートメンバーは青山英樹さんがBABYMETALで忙しいので、下田武男さんに変わる以外はアルバムと同じです。曲的には“Fuki Fes.”というくらいなので、Fukiの過去曲のセルフカバーをやりたいと思ってます。曲数が足りない分、カバー的なものだったり、Maoくんとふたりでアコースティックとかもやりたいと思っています。Fukiが主役のライヴになるので、“ソロアーティストFuki”を楽しんでいただけるように心がけたいなと思ってます。
    『Welcome!』2016年06月22日発売ビクターエンタテインメント
      • 【初回生産限定盤(DVD付)】
      • VIZL-976 3888円
      • 【通常盤】
      • VICL-64585 3240円
    Fuki Commune プロフィール

    フキ・コミューン:2014年12月に無期限活動休止となったLIGHT BRINGERの紅一点ヴォーカリスト、Fukiのソロプロジェクト。“Fukiとその仲間たちがひとつの共同体を形成するイメージ”がプロジェクト名の由来。日本の若手ヘヴィメタル界でも群を抜いた声量と、突き抜けるハイトーンヴォイスには定評がある。また、天外冬黄(テンゲフユキ)名義でUnlucky Morpheusにも所属し、コミックマーケット等でのファンとの交流を08年より続けている。Fuki Commune オフィシャルHP

    LIGHT BRINGER プロフィール

    ライトブリンガー:2005年4月結成。Fukiのキュートなルックスと確かな歌唱力、メロディアスでテクニカルなメタルサウンドで注目を集める。11年11月にシングル「noah」でメジャー進出を果たし、デビューアルバム『genesis』を引っ提げての東名阪ワンマンツアーは追加公演も含めて全会場ソールドアウトに! その後、メンバーチェンジを経て、新体制で2枚のアルバムを完成させるも、14年11月1日に年内をもって無期限の活動休止を発表した。LIGHT BRINGER オフィシャルHP

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