【AK-69】Def Jamって刀抜かせてもら
えて気合いが入っている

今年、自身の事務所を立ち上げたAK-69が、なんとヒップホップの名門レーベルDef Jam Recordingsと契約を果たした。新たな挑戦に挑んでいく彼の想い、両A面ニューシングル「With You ~10年、20年経っても~/ KINGPIN」について語ってもらった。
取材:土屋恵介

まずは、この度Def Jam Recordingsと契約した経緯について聞かせてください。

自分的にメジャーに行くってことは考えてなかったんです。厳密に言うと、昔はメジャーに行けるまでのアーティストじゃなかった。だから、インディーズでやり始めて破竹の快進撃を見せることがカッコ良いんじゃないかってところにこだわってやってきたんです。ただ、これ以上攻めるには、新しい何かが必要だなって想いも正直あったんです。自分の事務所を立ち上げたあと、この話をいただいて…やっぱりDef Jamっていうのが大きかったですね。自分が関われるとは思ってもないくらい大きなものだったので。

Def Jamはヒップホップの代表格のレーベルですしね。

Def Jamは特別なんです。B-BOYにとっての金看板なので。あと、以前に仲間のTOKONA-Xってラッパーが、Def Jam Japanと契約して、そのあと志半ばで亡くなってしまって。そういう意味でも、今、自分がサインすることで日本でDef Jamのレーベルが復活する…それは紛れもなく自分にしかできないことだし、今までやってきたピースに当てはまるものだったので、それでサインさせてもらいました。

自分の歩んできた道と、自分のルーツにあるレーベル、いろいろなタイミングが合致したって感じですね。

そうですね。あと、Def Jamも最初はインディペンデントで始まって、ブルックリンからストリートな音楽を届け続けて大きくなった。そうしたレーベルの成り立ちもカッコ良いなと思えるし。いろんなものが合致したんです。自分の事務所を立ち上げて、そこにプラスしてDef Jamって刀を抜かしてもらえて、プレッシャーはありますが、そういうネガティブが俺の燃料になるので、今すごく気合いが入ってます。

では、両A面ニューシングルの話にいきましょう。「With You ~10年、20年経っても~」は、変わらない愛情を前半はリズムなしのピアノがメインのトラックで歌うバラードという。

これはDef Jamが決まる前から作ってた曲なんです。俺はいつもトラック先行で曲を作るんですが、この曲は初めて先に歌とリリックが降りてきたんです。意気消沈してる時期に、ホテルでシャワーを浴びてたら、いきなりふっと降りてきたんですよ。これもさっきの話とつながるんですが、トコナメ(TOKONA-X)がDef Jam Japanと契約して、まだ大したことない時の俺を、1stシングル「Let Me Know Ya...」で、シンガーの名義のKalassy Nikoffで客演に呼んでくれたんです。レコーディングですげー緊張していた俺をあいつがフォローしてくれたのが思い出に残ってますね。あと、その曲は女の子に歌いかけてる歌で、俺の中での相手は今の奥さんだったんです。10何年経って、今、また奥さんに対する想いが沸いてきた歌をDef Jamからリリースできることが運命だと思うんです。

いろんなドラマがつながってる曲なのですね。

そうなんですよ。Def Jamの話がきて、この曲を完成させて収録できたことも、何か運命を感じましたね。

リアルに生々しく歌詞が刺さってきました。しかも、ラッパーAK-69とシンガー名義のKalassy Nikoffの、ラップと歌の違いが明確に伝わる曲でもありますし。

それこそがまさに、俺のスタイルなんです。96年に音楽を始めた頃から、サビを歌ってバースをラップするっていうのはやってたので。でも、これまでで一番歌らしい歌になりましたね。レコーディングも自然体で、チャンネルが合った瞬間にバーッと録れたんです。

ある意味、不思議な力を持った曲ですね。

だからこそ、みんなに伝わるんじゃないかなと思ってます。

そして、「KINGPIN」は今までの夢を描いてきた頃から今の想いを凝縮したファットなビートのナンバーで。

これはDef Jamで一発目ってことで、改めて、B-BOYとして自分のキャリアが始まったことを全部思い返したからこそできた曲です。ヒップホップのファンの人たちって、俺はある意味成功者だから、自分らとは関係ない遠い人みたいに感じている人もいると思うんです。でも、そうじゃねぇんだよって。俺はもともと音楽の才能があってどこかの事務所に売ってもらったタイプでもないし、地元の名古屋で名前売って、どんどん地方に出て行って、いいライヴしてまた呼んでもらって、噂を広めてもらって…っていうのを繰り返して、ここまで来た男なんです。だから、今でも名古屋の街を背負ってるし、街に座り込んで朝まで夢語ってたあの時から、俺の今の立ち位置って延長線上につながってるんです。Def Jamって刀を抜かせてもらった今だからこそ、お前らと一緒なんだよっていうのを改めて言いたかった。

自分の以前の姿と現在の姿がリアルに描写されていますしね。

前回の「Flying B」では、“地べたから来た男”だと言ったけど、今回はその“地べた”の時の俺をクローズアップしたんです。海外のPVの世界に憧れて、レコード漁っていろんなアーティストに刺激を受けてた、夢を描いていた当時の視線を入れつつ、その想いのままここまで来たっていうのを歌っています。

AK-69さんの楽曲は、ご自身のことを歌いながらも、人を鼓舞する力があるのですが、それを意識して曲作りされているのか、それとも自然とそうなっているのかを聞かせてください。

あんま意識しては作ってないです。ただ、一貫して自分がこうしてやれたんだからお前らもできるだろうって言いたいっていうのはあります。俺は才能があるタイプじゃない、想いが強いタイプのアーティストなんです。ひとつのことを想い続けることが、どれだけ現実の力に変わって結果につながるのかってことは、俺が特別な人間じゃなかったからこそ歌で伝えたい。それが自然と入っていくんだと思います。そうした想いの強さは、これからもリアルなメッセージとしてずっと伝えていきたいと思ってます。
「With You ~10年、20年経っても~ / KINGPIN」2016年07月06日発売Flying B Entertainment
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • UICV-9182 1620円
    • 【通常盤】
    • UICV-5053 1080円
AK-69 プロフィール

エーケーシックスティーナイン:唯一無二のラップと歌の二刀流の先駆者としてアーティスト活動をスタート。マスメディアに一切見向きもされない名古屋時代に全国のクラブで年間180本のライブをこなし、ライブを見たファンの評価のみでインディーズながらアルバム2作でゴールドディスク、オリコンDVDチャート1位を獲得。その後、渡米しニューヨークのNo.1 HIP HOPラジオ局と名高い“HOT97”に日本人として初のインタビューを受け、同局主催イベントへのライブにも出演。そして、アメリカの伝説的なHIP HOPレーベル「Def Jam Recordings」との契約を果たすまでに至った。己の生き様から生まれる“言霊”が男女問わず競争社会で戦っているトップアスリートや経営者にも共感を生み、高級自動車メーカー、高級時計ブランド、スポーツチームなどさまざまな企業のアンバサダーも務めている。AK-69 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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