【水樹奈々】歌も言葉も、シンプルこ
そがもっとも難しい

昨年11月にリリースしたアルバム『SMASHING ANTHEMS』から約8カ月振り、シングルとしては「Exterminate」以来約1年振りとなる「STARTING NOW!」。進化し続ける水樹奈々の今が、たっぷり詰め込まれた3曲について訊いた。
取材:榑林史章

表題曲の「STARTING NOW!」は今回もたくさんのデモの中から、ひと聴き惚れで選ばれたのですか?

忘れもしません、東京ドームライヴのゲネプロ(最終リハーサル)の日に出会いました。空き時間にデモテープを聴かせていただいていたら、サビのメロディーが頭から離れなくなってしまって。三嶋プロデューサーと“キタね! これだ!”と。その直感を信じて、この曲に決まりました。

夏全開の明るくパワフルな曲調で、9月の甲子園ライヴで弾けている水樹さんの姿が目に浮かびます。歌詞にも《かかってきなさい!!》というフレーズがあって、これはライヴで水樹さんがお客さんを煽る時の言葉ですよね。

この言葉を英語にした“Bring it on!”というタイトルの曲はありましたが、いつか歌詞の中でもフレーズとして使いたいと思っていました。今回、ちょうど言葉数的にもぴったりはまるので、メロディーを聴いてピーンときたんです。ここはみなさんと一緒に、大合唱もしくは絶叫したいです!

歌詞の内容は、応援歌という解釈でいいのでしょうか?

今回はライヴをイメージしたのと同時に、アニメ『この美術部には問題がある!』のオープニングテーマでもあるので、その世界観にも沿うようにと考えて、明るく前向きな応援ソングを目指しました。大人になると仕事が一番とか物事に優劣を付けるようになりますが、学生時代は恋も夢も勉強も全てが同等で、全部に全力だったという印象があります。それら全部を丸ごと応援できる曲にしたいと思ったんです。

《例えば、1つだけ》というフレーズが出てきますが、こういう“もしも”みたいなことは必ず想像しますよね。

私も学生時代、よく想像してました。すごくスタイルが良くなったらクラスの人気者になって、恋も叶うんじゃないかとか。要は妄想です(笑)。でも、妄想することが、原動力になるんじゃないかと思うんです。

歌詞という部分では、ギミック的なものを排除し、シンプルな言葉でストレートに書かれていると感じました。

実は一度歌詞を完成させて、レコーディングしてトラックダウンまで終えていたのですが、三嶋プロデューサーから“歌詞カードを目で追わなくてもいいような、もっと耳からスッと入ってくる言葉を選んでほしい”と言われて、書き直したのがこの歌詞です。シンプルで飾らず、分かりやすい言葉を意識しながら、いかに稚拙な表現にならないようにするかというところで、そのさじ加減がとても難しかったです。誰もが使う言葉で日常的なシーンを切り取っているけれど、歌詞にある場面だけではない、さまざまな想像を膨らませてもらえるものを目指しました。シンプルだからこそ、答えがたくさんある…。言葉のチョイスも歌い方も同じで、たくさんの選択肢から、どれをチョイスするかで世界観がまったく変わってしまいます。歌も言葉もシンプルこそがもっとも難しいのだと、改めて実感した制作でした。

また、カップリングの「アンティフォーナ」はある種の水樹さんの王道の楽曲ですね。ちょうど1年前に発表した「ブランブル」と同じ、iOS/Android版『THE TOWER OF PRINCESS』の新主題歌になっていますが。

歌謡曲っぽい哀愁漂うメロディーラインを中心にしたドラマチックな楽曲構成で、デジタルと生のミクスチャーという部分もある…。私の楽曲の代表的なパターンのひとつとなっています。実際に“これが表題曲だと思っていた”と言われることが多かったです。童話に出てくるお姫様がたくさん登場するゲームなので、女性らしさがテーマのひとつです。ですので、力強くガンガン押すのではなく、出るところは出るけれど引くところは一歩引いて、というバランスを意識して歌いました。

もう1曲の「恋想花火」は、「レイジーシンドローム」と同じ、ヨシダタクミ(phatmans after school)さんの作詞作曲で。和のテイストを感じさせるメロディーで、バラードっぽい柔らかい雰囲気だけれどバンドサウンドという。

ヨシダさんから「レイジーシンドローム」と同時期にいただいたデモの中にあった一曲で、いつかかたちにしたいと温めていました。今回『なか卯』さんのCMソングのオファーをいただいた時に、2009年のアルバム『IMPACT EXCITER』に収録の「夏恋模様」のような曲がいいとリクエストがあって、ハッ!とこの曲のことが浮かぶんです。個性的な構成と歌謡曲テイストのメロディーが浴衣で“うなまぶし”を食べているCMの映像ともぴったりだと思ったので。

よく聴くと、構成がとても変わっていますね。

どこまでが1番で、どこがAメロでどこがBメロ…というものがはっきり分かれていなくて、1曲を通して物語がずっと続いていくような感覚の曲です。歌詞の物語がしっかりしている分、そこに感情を乗せて歌っていくかたちだったので、自然と曲の世界に入り込むことができました。感覚としては台詞を話すような雰囲気に近かったです。ポツポツとしゃべっていたら、いつの間にか歌になっていたようなイメージですね。

水樹さんの曲はキーの高いものが多いですが、これは珍しく低くて、最後だけ高くなるという。

こういう中低音の音域をメインにした楽曲はあまりないので、その面でも新しいチャレンジでしたね。最後だけ転調していきなり高くなるので、そこは感情を大爆発させてます(笑)。

そして、9月22日には長年の夢だった阪神甲子園球場でのライヴが決定しましたね。“LIVE PARK”と名付けられていますが。

昔、甲子園の近くに阪神パークという施設があったそうで、甲子園に縁のあるタイトルにしました。また、前回の『GALAXY』のような華美で設定にこだわったものとはガラリとイメージを変えたいと思って。野外ならではのナチュラルさ、まさに公園のように家族や友だち、恋人…いろんな人が集まって、そこでいつの間にか楽しいことが始まる!というイメージです。みなさん、ぜひ遊びに来てください!
「STARTING NOW!」
    • 「STARTING NOW!」
    • KICM-1690
    • 2016.07.13
    • 1200円
水樹奈々 プロフィール

ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。水樹奈々 オフィシャルHP

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