L→R ジュリエッタ霧島(電気ベース)、マリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)、イザベル=ケメ鴨川(電気ギター)、ファビエンヌ猪苗代(ドラムス)

L→R ジュリエッタ霧島(電気ベース)、マリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)、イザベル=ケメ鴨川(電気ギター)、ファビエンヌ猪苗代(ドラムス)

【キノコホテル】女性メンバーだけの
バンドは増えましたけど、違和感のあ
る存在でい続けたいですね

約2年振りとなるニューアルバム『マリアンヌの革命』には音楽的な洗練とより深いサイケデリアが横溢。毒気やエロティシズムと同時に、人間としての本音や本質が突き付けられる快作についてマリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)に訊く。
取材:石角友香

今回のアルバムはモダンなサウンドプロダクションに心の中で快哉を上げてしまいました。

自分としても久しぶりにきちんと仕事をしたなという、やり遂げた感はありますね。

必要以上のものが鳴っていないというか、それが曲の良さや演奏のセンスを際立たせている感じがすごくしたんです。

口を挟んでくるプロデューサーがいるわけでもなく(笑)、4人とあとはエンジニアさんにアドバイスをいただいたりしつつ作り上げたものなので、その空気感が出ているかというのは自分の中で重要な線引きであって。あまりやりすぎてしまって私がソロでやっているような雰囲気になってしまうのも違うというのは、考慮して作ったというのはありますね。

早い段階でできていた曲はどの辺りになりますか?

昨年の春頃、イギリスツアーをやったんですけど、おそらく「遠雷」という曲はその直前に…別にイギリスを意識したとかまったくそういうのはないんですけど(笑)、なんとなく作って。

ニュー・オーダーやキュアーのような質感を感じましたよ。

ほー、そのような感想は初めて聞きました。この人(マネージャー)はヴェルベッツ(ヴェルベット・アンダーグラウンド)とか言ってくれるんですけど。気に入ったら何でもヴェルベッツって言うんですけどね(笑)。

ところで、キノコホテルはバンドシーンの中でどういう存在なのかって考えることはありますか?

あんまり今のシーンにおいて語るほどの存在でもないと思うので…ただ、今、女性だけのグループって非常に増えて。さらにその中でキノコホテルのように自分たちで作って演奏して、自分たちで完結してるグループもいれば、アイドルだけどバンド、バンドだけどアイドルとか多様化してると思います。でも、やっぱりキノコホテルに似ているグループっていないんですよね。なので、そういう意味ではガールズシーンの中でもちょっと浮いた、違和感のある存在でい続けられたら楽しいんじゃないかと思っていますけれども。

そのイメージはありつつ、どんどん洗練されていっているというのが、今作の印象だったのですが。

確かに。過去は自分がほんとはこういうことをそろそろ出していきたいんだけれども、どういったタイミングで、どう出していったらいいのか?ということをひとりで悩んでいた時期というのもあったんですが、ここにきてメンバーそれぞれの演奏力の向上であったり、私が作ってきたデモとかネタに対する拾い方が3人それぞれだいぶこなれてきて。プレイヤーとしての信頼感も強くなってきたというのもあるのかな。なので、自分で枠を作って止まっても面白くないですし、聴いてる方も面白くないと思うので、そういう枠を取っ払っていきたいと。ジャンルで語られたくないような欲求も強くなってきたので、そういうのが前作から出始めて、今回さらに進化してるという実感はありますけどね。

確かに付いているイメージは未だに強いですね。

GSだ、歌謡曲だって、そういう触れ込みにしないでくださいってレーベルの方にもお願いした上でデビューしたんですけど、どうしてもそういうイメージが付いて、そういうもので語られれば語られるほど、“ちきしょう、次からはそんなこと言わせねぇぞ”みたいな気分になっていて。なので、わりとキノコホテルがだんだんニューウェイヴとかパンキッシュな要素が強くなってきたとか言われますけども、それは音楽的にパンキッシュというより、やはりこうやって世に出て、世間に揉まれていろいろな人に好き勝手なことを言われていくうちに、自分の心境の変化というか、自分の本性というか、そういったのがどんどん剥き出しになってきてるということなんでしょうね。

歌詞もさらに深みを増していますね。「籠の中のアラステア」は一瞬、背徳的な感じもするけど、人間の中の筋というか、曖昧な人に対する糾弾なのかな?という内容で。

いろいろどうとも取れるような歌詞で、今おっしゃっていただいたのもある種正解だとも思うんですよね。例えば、はっきりしない人に対して、それを“どうなんだ、今、この場ではっきりしなさい”って言う場面、すごく多いので(笑)。ま、そういったメッセージでもあり、何かのプレイなのかな?とか、さまざまなとらえ方をしていただいていいんじゃないかなと思います。

「赤の牢獄」は大人ならではの行間のある歌詞ですね。

舞台になっているのは自分の行き着けのお店のとある風景のインスピレーションで。この曲の構想を練っている時にお店がなくなってしまうと聞いたので、なんか残しておきたいなと思ったんです。お酒を飲みながら男女が思い思いの遊びに興じたり、ちょっと背徳的なおしゃべりをしたり、というちょっと特殊な趣味をお持ちの方が集まるお店だったんですけれども。ま、そこで夜毎繰り広げられる乱痴気騒ぎというか、享楽的であとに何も残らない感じが楽しかったんですよね。で、それってすごく音楽的だなと思って。

音楽も似ているというのは、きっとマリアンヌさんの美意識なのでは? 音楽で何かができるという人、多いじゃないですか。

多いですね。“音楽で世界を変える”とか。私はああいうのは鼻で笑っちゃうタイプですね。音楽自体に何か力があるとは自分は思わないですね。

そして、タイトルに“革命”を冠したことの理由は?

外に向けたものというよりは、自分自身ですかね。2年ほど制作期間が空いて、その間は遊んでばっかいたんですけど、ちょっと今度こそちゃんと“あんた、勝負に出なさいよ”って自分に言い聞かせるつもりで作っていったというか、タイトルも含めて考えていったところはあります。
『マリアンヌの革命』2016年07月27日発売KING RECORDS
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • KICS-93394 3500円
    • 【通常盤】
    • KICS-3394 2900円
キノコホテル プロフィール

全ての楽曲を手がける鬼才・マリアンヌ東雲を中心に創業された謎めいた女性だけの音楽集団。2010年2月にアルバム『マリアンヌの憂鬱』でデビューする。キュート&クールなルックスと強烈なキャラクター、楽曲のクオリティーや実演会(ライヴ)での爆発力は唯一無二。パンク/ニューウェイヴ、60'sロックンロール、プログレ、ラテンなど、さまざまなサウンドを昇華した濃厚な音楽性で、老若男女、メジャー/アンダーグラウンドを超えて幅広く浸透しており、その中毒性は高く、“いつか視た幻”のような既聴感を憶える“ありそうでなかった音楽”を提供し続けている。キノコホテル オフィシャルHP

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