【水樹奈々】新しい遺伝子を生み出す
    新第三紀!

    2016年9月に女性ソロアーティストとして初の阪神甲子園ライヴを行なった水樹奈々。12枚目となるニューアルバム『NEOGENE CREATION』は、彼女の新たな一面が垣間見れる、実に新鮮な一枚となった。
    取材:榑林史章

    日常にスポットを当て、シンプルに削ぎ
    落とした

    バラードで始まり、バラードで終わる。いつになく、バラードが多いアルバムだなという印象でした。

    私にしては珍しく、今回はバラードが3曲も入っています。直感的に自分が今、かたちにしたいと思う曲を選んでいった結果、自然とシンプルに削ぎ落とした曲やバラードが多くなりました。

    今回も大量のデモの中から?

    はい。実は、もともとこの時期にアルバムを出す予定はなかったのですが…7月のシングル「STARTING NOW!」のために集めていたデモが、個性的で素敵な楽曲がすごく多くて、三嶋章夫プロデューサーと“今、これをかたちにしたい”“来年まで待ち切れない”となり、このタイミングでアルバムを急遽出すことになりました。おかげで今までで一番制作期間が長く取れる作品になったのですが、考えてみれば前作のアルバムからシングルを1枚しか出してないので、その分新曲が増え、結果的にはいつもと変わらないくらいのバタバタの作業になってしまいました(笑)。でも、やはり使える時間はギリギリまで使った上で、“これだ!”というものを作りたいし、スポーツと同じでアディショナルタイムで何が起きるか分からないし…ホイッスルが鳴るまでが試合ですから(笑)。おかげで、今までにないアルバムになりました。

    ラブソングが多い気がしました。

    これも私の作品では珍しいことで、今回は日常にスポットを当てて書いた曲が多くなりました。シングルが1曲だったこともあって、純粋に曲を聴いて感じたイメージや見えた情景を大切にしていこうと思ったんです。それで“こういう主人公でこういうメッセージを届けたい”など、作詞家さんに明確なイメージをお伝えして書いていただきました。

    とはいえ、今回のアルバムのタイトルは“NEOGENE CREATION”と、非日常な雰囲気なのですが。

    “NEOGENE”は地質学の言葉で“新第三紀”という意味です。東京ドームで行なった『LIVE GALAXY』では、これまでの活動を7年ごとに区切り、1日目(第一期)を“GENESIS”、2日目(第二期)を“FRONTIER”と名付けて公演したことから、今は水樹奈々の第三期だ!と。そこで、この言葉に強く惹かれて。また、“NEO”は“新しい”、 “GENE”は“遺伝子”と捉えることもでき、“新しい遺伝子を創造する新第三紀”という意味で付けました。今回は個性的な曲が集まったので、楽曲のテーマをあまり限定しないアルバムタイトルのほうが、縛られず自由に作れると思ったんです。

    全体的に最先端もありつつですが、80年代や90年代の少し懐かしいテイストがそこかしこに感じられました。

    無意識レベルでそういう曲を選んだ部分もありますし、あえてそこを強調している曲もあります。私の音楽のベースになっているのが演歌と歌謡曲なので、80年代~90年代のテイストはこれまでも随所に出てきていました。あの時代に流行った音楽は、今でも歌詞を見なくても歌えるキャッチーさがあり、個性的なものが多かったと思います。そこに今の新しいアレンジを加えたり、若い世代の作曲家さんや編曲家さんたちが表現することで、同じ歌謡曲調でも違った解釈になって、とても面白い曲が生まれていて。今回たくさんの曲を提供してくださったヨシダタクミさんがまさにそうで、彼は24歳なんですよ。20代の方が表現する80年代や90年代の世界観には、私たちのようなリアルタイムの世代では見つけられなかった新しいものがたくさんあって、その両者を融合させることですごく面白いものになったんです。また、それをライヴで表現する時は、私よりずっと上の世代であるバックバンドのチェリーボーイズの熟練の技が加わることで、より深みを増したものになっていくと思うんです。関わる方の世代間がどんどん広がっていることが、曲作りの幅につながっているような気がします。

    世代が地層のように積み重なっているわけですね。

    “NEOGENE”は地質学の言葉なので、まさしく!です。

    今までに見たことのない水樹さんがたくさん感じられるアルバムなのですが、「Please Download」ではオートチューンを使って声を加工していますね。声で仕事をしているだけに、声を加工することに抵抗はなかったですか?

    きっと今までの私ならトライしなかったと思います。でも、この曲を聴いた時、声も楽器や音素材のひとつとして考えて作ったら面白いんじゃないかと直感してチャレンジしました。スタッフさんからは、頭の英語の部分や追っかけで入るコーラスが、“初音ミクならぬ、奈々音ミクだね”と言っていただいたり(笑)。オートチューンなどを使って声をひっくり返すような効果を与えることを“ケロる”と呼ぶのですが、効果的にケロらせるためにはビブラートをきっちり半音下げで規則的にするとか、音をなるべくしゃくらないようにして、しゃくる時は“滑らかに”ではなく、“階段状に”などさまざまなポイントがあって。上手く使いこなすには、通常の歌唱法とは違った技術が必要だと感じました。

    OKMusic編集部

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