【MERRY】このシングルは2017年のME
RRYの所信表明

結生(Gu)曰く、前々作から続く歌モノ三部作の完結編となるニューシングル「傘と雨」。テツ(Ba)も“2017年第一弾に相応しいシングル”と語る、今作についてふたりに訊いた。
取材:土内 昇

個人の幸せや自由を歌った前々シングル「Happy life」があって、不倫をテーマにしつつもその女性の幸せを歌った前シングル「平日の女」があって、今作となるわけですが、今回も何かテーマとなるものはあるのですか?

結生
今回も先に歌詞があって、それに合わせて曲ができていったんですけど、その中で歌詞も変わっていって…全体を通したらひとつなんですけど、ちょこちょことテーマが変わっていったんですよ。
テツ
大きなテーマで言うと厭世的というか、世捨て人的なところがあって。「Happy life」も「平日の女」もそうなんですけど、体制への疑問…当たり前のようにあるシステムに対して、“それってどうなの?”という視線でガラちゃんの歌詞は発信されていると思うんですね。で、彼が今回選んだテーマが世捨て人的なものなんですけど、それを文字にするのにものすごく苦労していたんですよ。
結生
時間の流れとかにもこだわってましたね。

確かに歌詞は世捨て人のようにも思えるのですが、未来を悲観しているわけではないというか、最終的に希望がありますよね。

結生
最初はその希望の部分がなかったんですよ。一番初めは“無関心”や“無感情”がキーワードになってたんですけど、《「人生は美しい」なんて》というところがサビになって、《未来はきっと明るいだろう》で終わるようになって、この曲は変わりましたね。
テツ
最初は感情を全て捨て去ろうとした人間の歌だったんですけど、最後に《未来はきっと明るいだろう》のひと言が入ってきたことで、結生くんが言った通り、この曲の印象はガラッと変わりましたね。ガラちゃんは“明るいはずさ”なのか“明るいだろう”なのかでも悩んでましたけど。

その最後のフレーズなのですが、他の箇所にもある“明るいのだろう”ではなく、“明るいだろう”と言ってるのが意味深だなと。“明るいのだろう”は他人の意見ですけど、“明るいだろう”となると自分の意見ですからね。だから、この曲はそこで救われるというか。ガラくんに何か心境の変化があって、この最後のフレーズが付いたのでしょうかね?

結生
日々変わってましたからね(笑)。“これで完成!”という状態で歌詞を渡されたわけではなくて、8割ぐらいできた状態で曲を作り始めたので、曲作りが進行していく中で歌詞もちょこちょこ変わっていって、これに落ち着いた感じなんですよ。

今回のシングル用として渡されたのは、この歌詞のみなのですか?

結生
これひとつだけですね。この曲は初回生産限定盤のカップリングにアコースティックバージョンが入っているんですけど、実は歌詞がほぼできた時点でガラとふたりでアコースティックで作っていったんですよ。歌詞ができるまではいろいろ模索してたんですけど、ガラとふたりでアコースティックで作ったものが一番しっくりときたんで、もう“これじゃん!”って。そこで歌詞とメロディーが決定したんで、あとは細かいアレンジを加えていったという感じですね。

ガラくんと一緒に弾き語りで作ったことで、落としどころが見えた?

結生
そうですね。昔はガラと一緒にコードと歌だけでメロディーを作ることが多かったんですよ。その時に戻ったというか…お互いに昭和の歌謡曲やフォークというルーツを持っているので、ふたりで弾き語りをした時にピンと来るものがあって、“これは歌謡曲よりもフォークに近いな。じゃあ、バンドのアレンジはこうしようか”ってなって。なので、アコースティックバージョンもシングルに入れたかったし、『白い羊』『黒い羊』(2016年11月7日に東京・品川ステラボールで開催された結成15周年ライヴ。『白い羊』公演はアコースティック形式で、『黒い羊』公演はバンド形式で行なわれた)の両方でやりたかった。

では、世捨て人的な歌詞を最初にもらった時は、どんな曲にしたいと思いました?

結生
一応、そのひとつの歌詞に対して、自分も他のメンバーも何曲か作ってまして…それぞれに捉え方があるから、歌詞はひとつなのに出てくる曲は結構バラエティーに富んでましたね(笑)。その中からこれをみんなで選んだんですよ。最初は“無関心”や“無感情”というキーワードが強かったし、最後の部分もなかったから、ほんとイントロ、Aメロ、Bメロ、サビっていう状態だったので、この曲に決まってから最後に盛り上がる部分とかもできて…それに触発されて最後の部分が付けられたのかな?って感じですね(笑)。

「平日の女」もそうでしたが、歌謡テイストやレトロ感というMERRYのコアな部分が今作でも出ていますよね。

結生
どうしても歌詞を読んじゃうとそういう曲調になっちゃうんですよ。そういう意味では「平日の女」ともつながっているし、シングルとしては今回も歌モノになりましたね。でも、曲的に言うとちょっとノリがあるというか。「平日の女」はバラードだったので。

ちなみにテツさんはどんな曲を作ったのですか?

テツ
やっぱり暗くなりますよね。…いや、この時は明るい曲だった。文字数を絶対に変えないように、忠実にやってるんですけど、それで浮かぶメロディーというのがあって、意外と明るい曲を作っていきましたね。

この曲をバンドアレンジする際、どんなことを意識していました? すごくシンプルですよね。

結生
最近、プロツールスで8割くらいまで作ると、そこから先はスタジオでみんなで音を出して作り込むようにしているんですよ。あと、今回はレコーディングまでに何回かライヴで演る機会があったんで、そこで“ここはこうしたほうがいいな”って決めていったところもありますね。歌を前面に出したい曲なので、どんどん引き算をしていった感じです。あとは、歌がない場所でどれだけ他の楽器を目立たせるかを意識したり。

このままライヴでできそうなくらいですしね。歌がないところにも他の音というか、バンド以外の楽器は鳴っていないし。

結生
5人以外の音はなるべく入れないようにしているんですよ、最近は特に。まさに、そのままライヴできるように。あとは…究極に歌を届けるのってアカペラじゃないですか。俺たち要らなくなっちゃうんですけど(笑)。歌に入った瞬間に一瞬ブレイクするところも、イントロでギターがジャンジャン鳴ってたり、他の楽器も結構うるさいんですけど、そこからアカペラで始まったらカッコ良いかなって。で、2番の《流れる毎日~》というところも歌だけにしたり。やっぱり歌詞がグッと入ってくるので、そういう引き算はすごく意識しましたね。

さっきも話に出ましたが、初回生産限定盤には「傘と雨 -Acoustic version-」が収録されていて。やっぱりアコースティックになると歌の印象も変わりますね。楽曲が持つ無常観が前面に出るというか。

結生
そうですね。歌の聴こえ方も全然変わるし。特にAメロはバンドバージョンだと疾走感があるじゃないですか。でも、アコースティックだとシャッフルビートの気怠い感じになるんで、ブルースっぽいというか。

そして、通常盤には「Happy life -幸福論 Acoustic version-」と「Zombie Paradise ~地獄DISCO mix~」が収録されていて。

結生
ここ最近はライヴの最後に「Happy life」のアコースティックバージョンを演るというのが定番になっているので、この辺りでそろそろ区切りを付けて作品に残そうかと。
テツ
「Happy life」は2016年ずっとアコースティックでやり続けたんですけど、それは間違いではなかったと思いますね。どんなに曲数が少ないイベントでも必ずアコースティックでやってたから、観ているほうからすると違和感があったかもしれないですけど、「Happy life」を一番いいかたちで届けたかったので、最終的にこうやって音源にすることができて良かったです。これでまた次に進めますね。

「Happy life」は2016年のMERRYの主張とも言える曲ですからね。ちなみに“Acoustic version”ではなく、“幸福論 Acoustic version”にしたというのは?

結生
それはガラが“Acoustic version”だと何かつまんないし、MERRYっぽくないからって(笑)。「Zombie Paradise ~地獄DISCO mix~」もですけど、曲の持つキーワードを入れている感じですね。“DISCO mix”というのも最初は“EDM mix”とかにしようってなっていたんですけど、それだとよく分からないってことで、だったら面白いほうがいいって“地獄DISCO mix”に(笑)。

なぜ「Zombie Paradise」をリミックスしようと?

結生
4つ打ちだし、MERRYの中では一番ダンスビートを感じる曲ということで。ミラーボールがある会場では必ず回している、MEERYの中では他にない位置付けの曲だったから、これをEDMが作れる人にお願いして完全にEDM化したら面白くなるんじゃないかって。ネロはDJをする時に流すでしょうね(笑)。
テツ
これはもう遊び心でしかないですよね(笑)。自分の想像を超えた音がいっぱい入っていてすごく新鮮だったので、家で聴く時も、外で聴く時も大きい音で聴きたいですね。ネロさんがDJで回している時、それを聴いてみたい…クラブとかの大きなスピーカーで聴いてみたいですね。それこそ会話ができないくらいの音量で。

“Zombie Paradise”とあるから、さらにアッパーなダンスチューンになっているかと思ったのですが、意外にミディアムで(笑)。でも、怪しさが増した感じがあって、徐々に高揚感が煽れていくという。

結生
そうそう。意外に凝ってますよね。ガラの声にオートチューンがかかっている感じとか新鮮だったし。

そんな今回のシングルですが、どんな作品が作れた実感がありますか?

結生
つながっているわけではないんですけど、俺の中では「Happy life」「平日の女」「傘と雨」というのは三部作的な位置付けにありますね。言ってしまえば、どれもMERRYの中では歌モノの部類に入るんですけど、それを連発したのはガラから出てくる歌詞が呼んでいたからで。なので、歌モノ三部作ということで、俺の中ではこれで完結できたから、もう次を見てますね。
テツ
このシングルは2017年のMERRYの所信表明みたいなものだと思っていて…パッと歌詞を見ると無気力で暗い奴に思えるかもしれないけど、実はすごく強い心を持っている。ここまでぶれないで物事を考えられるのか?って思うと、俺には無理ですからね。で、その人が最後に“未来は明るい”と言ってるんだから、MERRYの未来も明るいと思うし、その気持ちを持って次の音源制作に臨みたいし、5月の野音のステージに立ちたいと思います。2017年第一弾に相応しいシングルですね。

2017年第一弾であり、結成15周年を経ての第一弾でもありますしね。そして、まず2月には『MANY MERRY-HOLIC』が控えていますが。

結生
これは「傘と雨」の発売と連動したものなんですけど、たまには企画色の強いツアーもいいかなって。

“性別&1時間限定”だったり、“Morning Live”だったり、フリーライヴもありますしね。

結生
“Morning Live”は未知ですね(笑)。その日はライヴを朝と夜にやるんですけど…どうなるんだろう? フリーライヴも「傘と雨」にかけて、その日のワンマンライヴの前に“もしも雨が降ったら”っていう条件付きですからね。こういう時って意外と降らないんですよ。2月だし(笑)。まぁ、いろいろ挑戦するツアーですね。
テツ
『MANY MERRY-HOLIC』は自分たちの遊び心が全開ですね。これまでもMERRYにしかできない企画だったり、いろいろ変なことを楽しんでやってきたので、“またこういうことをやるの!?”って思ってもらえればいいかなって(笑)。

そして、5月には野音が。

結生
そうですね。これもう決まった時から、ここに向けてやっているというか。年明けから次に向けての制作もしているんですけど、シングル3枚の次のMERRYを見せられればなって思っています。

“羊達の主張”とサブタイトルにありますしね。

結生
見せないと嘘になってしまう(笑)。
テツ
この野音は“日比谷デモクラティック”なので、騒ぎに来てくださいという感じですね。ガラちゃんが “「千代田線デモクラシー」を日比谷で響かせたい”ってよく言ってるんですけど、その通りだなって。狼煙を上げるじゃないですけど、そういう一日になると思います。
「傘と雨」2017年02月01日発売FIREWALL DIV.
    • 【初回生産限定盤A(DVD付)】
    • SFCD-0203~4 2500円
    • 【初回生産限定盤B(DVD付)】
    • SFCD-0205~6 1944円
    • 【通常盤】
    • SFCD-0207 1300円
MERRY プロフィール

メリー:2001年10月、現メンバーによって結成される。哀愁とヘヴィネスの融合による唯一無二の“レトロック”を掲げ、進化&深化を繰り返しながら、独自のスタンスで活動。昭和歌謡的な叙情旋律や欧米発のロックなどをさまざまに融合させた個性的な世界観で、結成時よりメインストリームとアンダーグラウンド双方の特性を活かしながら規格外のロックバンドであり続けている。MERRY オフィシャルHP
MERRY オフィシャルTwitter
MERRY オフィシャルYouTube
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OKMusic編集部

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