【中島卓偉】感動とともにメロディー
と言葉があふれた

自身の息子に捧げる曲として誕生した18thシングル「我が子に捧げる PUNK SONG」。衝動的で激しさマックスのパンクチューンであり、同時にこの曲は中島卓偉の最上級のラブソングでもある。
取材:山本弘子

「我が子に捧げる PUNK SONG」を聴いた時は卓偉くんが父親だったという事実以上に驚きました。攻撃的でどパンクで、背中押しまくりの曲なので、いったいどんな時にこの曲が生まれたのだろう?と。

作った段階から息子に向けた曲ではあったんですが、最初はよく聴いたらそういうふうにとらえられる内容になったらいいなぐらいに思っていたんですね。そうしたらスタッフ陣からの評判が良くて“勢いがある曲だから、もっと歌詞を突き詰めてみようか”っていうことになったので、心を決めて“我が子に捧げる PUNK SONG”というタイトルにしたんです。詞を書き直している最中にも“俺は何を歌いたくて、何を伝えたいんだろう?”と自問自答して、行き着いたのがこの曲ですね。結果、自分らしい曲に仕上がったと思います。賛同してくれた周囲にも感謝してるし、こんなに激しい曲で子供にメッセージしてる奴はいないだろうって(笑)。

(笑)。実際、我が子を見てどんな気持ちになったのでしょうか?

自分は母親がいない家庭で厳格な父親に育てられて、暴力もあったし、学校でも虐められていて、少年時代に楽しかった記憶がまるでないんですよ。そんな中、ビートルズとパンクだけが救いだったけど、その音楽をやることに反対していたオヤジに勘当されて15歳で家を飛び出した。何とか今までやってきたけど、子供が産まれた瞬間に自分の人生にパッと色が付いた感覚を覚えたんです。ずっと色がパキッとしてないなという想いはあったけど、その時に初めて今まで灰色だったんだなと分かった。

振り返ってみたら、いつも曇り空のような心境で日々を過ごしていた?

そうですね。だから、アメリカよりもロンドンの雲が多いどんよりした雰囲気が好きだったんだと思う。それが自分の音楽のカラーやブランドになって活動してきたけど、あの時は目の前に絵の具のパレットが広がっていて、何色を足してもいいんだと思えたんですよね。年齢を重ねていくと映画を観ても音楽を聴いても、10代の頃のような感動は薄れていく。でも、この曲を最初に書いた時はコードがメジャーだとかマイナーだとか何も意識せずに、メロディーと言葉が感動と同時にあふれ出してきたんです。テンポは速いですけど、これぐらいのスピードじゃないと叫んでいる感が出なかった。自分の中に今もある初期衝動であり、パンクスピリッツを表現した曲だと思います。

歌詞も“産まれてきてくれてありがとう”というよりも、早くもゲキを飛ばしていますよね。向かい風が強くても自分の生きる人生を愛して挑み続けろって。

俺が15歳で上京してすぐに父親は亡くなったので、オヤジとは何も分かり合えないままでしたけど、自分が大人になって父親になる中、“俺はきっとオヤジにこう言われたかったんだろうな”という想いがあったんですよね。

《きみの思うがままに 魂の叫ぶがままに 自分が愛す人生を生きろ》と言ってほしかった?

言ってほしかったですね。夢があったからやってはこれましたけど、家族の愛の後ろ盾がない環境で育ってきたから自分は突っ張るしかない人生だったし、反骨精神をパワーにしてきて大人になるのに時間がかかった。でも、子孫を残すことをリレーとして考えるなら、俺はオヤジからバトンをもらったと思うんですね。今度は自分が息子にバトンを渡したというところで、俺が言ってほしかった言葉、言いたい言葉を歌詞にしたんです。

なるほど。かなり心境の変化があったのですね。

大人になって気付いたのは愛や家族、自分の帰る場所がある人のほうが全然パワーがあるんだなってことなんですよ。この曲を通じて気付けたのかもしれないですね。自分が結婚して子供がいることを解禁して良かったなと思ったことは、家庭を持っている古くからの男友達から“お前もようやく男になったな”とか“感動した”って言われたことですね。強くなれるなと思いました。

中島卓偉にとって、かなりでかい曲ですね。

ターニングポイントになる曲なのは間違いないですね。これと同じような曲を書いてくれってリクエストされても応えられないですけど(笑)。

それぐらい自分の奥底から沸き上がってきた曲だけに。サウンド感がデジタル色が強くてスピーディーなのも、歌に熱量があってこその絶妙なバランスですよね。

嬉しいです。この曲、生演奏だったらハードコアになっちゃいますよね(笑)。デジタルチックでスクエアなビートに、いい意味で揺れる歌が乗っているという。

後半のコーラスワークがライヴを想像させるし。

盛り上がる曲になるといいですね。

カップリングにはライヴで披露している曲が収録されていますね。「たられば」やアンジュルムへの提供曲のセルフカバー「上手く言えない」は近年、卓偉くんが追求しているブラックミュージック色が強くグルーブが気持ち良いです。

ライヴに行きたくなるようなアッパーな「超えてみせろ」と中島卓偉として新しいテイストの曲も入れているのは自分にとって挑戦でもありますね。

5月からは全国ツアー『THE SINGLES COLLECTION vol.1』もスタートしますね。

今回が18枚目のシングルなので、シングルだけで構成するライヴがあっても面白いかなと。今は30代最後になるであろうアルバムを作っています。18年続けてきても、まだまだやりたいことが山積みなので。

曲の通り“挑み続ける”人生ですね。

そうですね(笑)。
「我が子に捧げる PUNK SONG」
    • 「我が子に捧げる PUNK SONG」
    • EPCE-7302
    • 2017.03.08
    • 1500円
中島卓偉 プロフィール

ナカジマタクイ:1999年10月21日、シングル「トライアングル」 でデビュー。ソロでありながらロックやパンク、バンドにこだわったサウンドメイクといった楽曲のみならず、ファッションひとつからも随所に施されたブリティッシュテイストは、UKロックへの敬意を感じさせる。06年、アーティスト表記をTAKUIから本名の中島卓偉に改めた。14年にはデビュー15周年を迎え、15年4月8日に通算15作目となるニューアルバム『煉瓦の家』をリリースした。中島卓偉 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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