写真左上より時計回り、SEELA(Ba)、kyo(Vo)、CIPHER(Gu)、Tetsu(Dr)

    写真左上より時計回り、SEELA(Ba)、kyo(Vo)、CIPHER(Gu)、Tetsu(Dr)

    【D'ERLANGER】すごいアルバムを作れないわけがない

    最新作が最高傑作ーー。当然のように“再結成10周年”を冠に持つニューアルバム『J'aime La Vie』もそれを強く実感させられた。しかし、そこには再結成バンドがゆえの闘い続けてきた葛藤もあるようで、それと対峙して生まれた作品だからこその熱量を放っていると言える。
    取材:土内 昇

    再結成10周年は分かっていたので、ここでいっとかんとあかん!

    前作『Spectacular Nite -狂おしい夜について-』はデビュー25周年で、今作は再結成10周年ということなのですが、やっぱりデビュー25周年と再結成10周年というのは意識的に違いますか?

    kyo
    デビュー25周年だったのは事実なんですけども、デビューして1年経たずに解散しているし、17年も活動をしていない期間があるので、どこか“25周年って言っていいの?”みたいなのもあったりしたんですよ。でも、今回は“再結成10周年”と胸を張って言えるので、そういう意味では全然意識は違いますね。
    Tetsu
    CRAZEというバンドが10周年で解散した時は、あっと言う間だったりしたんだけども、このD’ERLANGERの10周年というのはもっとあっと言う間ですね。本当に“気付けば10年”で、10年の中には自分たちでマネジメントをやり出したこの5年間というのもあったりするし。もちろん、いつもと変わらず音を出してやってるんだけども、やっぱり自分たちでやるという意識の中だといろんなことも変わってくるし…そこは思ったことを音にするバンドなので、絶対音にも影響が出てるだろうし。いろんなバンドがいる中で、あんまり“再結成10周年”って聞かないじゃないですか。でも、別に無理してやってたわけじゃないし、そこを目標にやってたわけでもない。D’ERLANGERのヒストリーも、メンバー個人個人のヒストリーもご存知だと思うんですけど、多分いろんな遠回りをしていると思うんですよ。だけど、大事なのは今で。今こうやってやれているっていうのが素晴らしいと思いますね。
    SEELA
    やっぱり25周年の時というのは間が空いたりしていたので…今、Tetsuも言ったように、10周年で間がなく続いたというのも自分にとっては初めてだし、すごく早い感覚もあるし、思い返せば濃厚な10年だったとも思うし。でも、やっぱり“気が付けば10年”というのが一番ですね。ある意味マイペースでやってきて、気が付いたら10年やっていたという感じです。

    10年は早かった?

    CIPHER
    10年が早いかどうかというよりは、同じガンクビで10年もやったことがなくて、自分的前人未到を歩んでいるところの先端にいるので、それが心地良いですね。

    今回のアルバムには“再結成10周年”という冠が付いてますけど、D’ERLANGERのことだから、10周年だからこういうアルバムにしようとか、こういうテーマでやろうというわけではなく、今の自分たちが作りたいものを作ったという感じですか?

    kyo
    今回はアルバムのタイトルが先にあったんですよ。僕は言葉を乗せる上で“J'aime La Vie”(ジェムラヴィ)と10周年というところは照らし合わせて意識した部分はありましたね。このアルバムのタイトルはCIPHERからのアイデアだったんですけども、再結成10周年というタイミングでCIPHERがこのタイトルと出会ったことにドラマを感じますし、そういったものを表現できたらいいなというのは意識しました。

    CIPHERさんはなぜこのタイトルを?

    CIPHER
    僕の知っているフランス語の中に“C'est la vie”(セラヴィ)という言葉があったんです。認識としては “こんな人生だよ”っていう意味合いなんですけど、どうも“C'est la vie”というのはネガティブな解釈らしいんですよ。で、毎夜飲んでいるお店で親友とそんな話をしていたら、“俺の友達でフランスに留学中の奴がおる”と。“だったら、ええ言い方があるか訊いてみて!”と言って返ってきたのがこれなんですよ。それをいただいたわけです(笑)。要は“Je t'aime”(ジュテーム)という単語の絡みなんでしょうね。“自分を愛している”みたいな。

    このタイトルを付ける時には、ある程度CIPHERさんの中に今回のアルバムの楽曲の構想とかはあったのですか?

    CIPHER
    あるかないかと言えば、なかったですね。もっとぼやけていて、かたちにしたのが今年に入ってからなので。でも、再結成10周年というのは分かっていたから、そこは林修先生ですよ。“いつやるの? 今でしょ!”やから(笑)。ここでいっとかんとあかん!というのはありましたね。

    そして、完成したアルバムは当然のように最高傑作になってますね。ファンの共通認識としてあるD’ERLANGER像のど真ん中だと思うし、特に今作は歌モノというか、サウンドが歌に寄っているなと。メロディーの強い楽曲が揃ったのは自然な流れで?

    CIPHER
    自然というか…いや、めっちゃしんどいですよ。常にそこに対しては強い意思を持ってるんですよ。それは再結成してからずっとなんですけど、過去の「LA VIE EN ROSE」や「MOON AND THE MEMORIES」だったりというものを超えていかないといけない。再結成後のアルバム『LAZZARO』ももちろんですけど、やっぱり曲で勝負ですからね。カッコ良い音を投げてなんぼなんで。でもね、そこに対しては日々負けている気しかしなくて。なんぼやっても負けて、負けて、負けて…悔しい想いというのが、10年ずっとあるんですよ。経験値を積めばいろんなことが利口になってくるんですけど、ちゃんと音、メロディー、それを奏でるハートというところで俺は勝負したいんですよ。勝負したいというか、そこで生きていたいから、小手先でどうのっていうのはできませんもん。
    kyo
    CIPHERのそういう想いの強さっていうのは、作品を重ねるごとにどんどん強く感じるというか。ここ3作に関しては歌のジャッジとかにも顔を突き合わせて付き合ってくれているんですけど、それはそういう想いがあるからだと感じていて。一枚に対する集中力がこれ以上はないというのはすごく伝わりますね。“そういうふうに生きていたい”というのがしっくりくるんだけども、そういった重みや強さというのは録っている時にまず感じますし、出来上がった時にもっと感じるんですよ。

    そんなCIPHERさんから曲が上がってきた時に、そこに今のモードというか、今のD’ERLANGERが目指しているものを感じたり?

    Tetsu
    作曲についてはCIPHERに任せてあるし…CRAZEの時は自分も曲を作ってましたけど、D’ERLANGERに関してはそれがいいんだと思うんですよ。彼の生き方が俺は好きだから。彼が締め切りの中でもがいてもがいて出してきたのがこれ。これがアルバムに入るからどうにかしよう。よし、みんなで取り掛かろう! 明日にはレコーディングだけど…みたいな感じで(笑)。それも引っくるめてD’ERLANGERのストーリーだから。時間に余裕があって、いろいろ曲も選べてっていうのがいいわけじゃない。間に合うのかどうかギリギリというのもD’ERLANGERのストーリーだし、逆にそうじゃないと調子が狂う部分もあったりするわけですよ。
    SEELA
    時間があれば当然いっぱい考えてしまうじゃないですか。その瞬間にパッと出てきたのはその時だけのものやから、それがいつもD’ERLANGERの色になるんかなと思いますね。
    Tetsu
    デモはギターを付けながら歌っているだけの世界だから、解釈によってはパンクにもできるし、ヘヴィメタルにもバラードにもできる…という中で、プリプロを行なってできたものですからね。それにD’ERLANGERってデジタルに長けている者がいないんですよ。コンピューターも使うことは使うけど、機械で音を作るっていうのはないから、ジャムで始まるわけなんです。それがいいんじゃないかな?

    それによってその時のD’ERLANGERの色が必然的に出るということですね。では、印象的な曲についてうかがっていきたいと思います。オープニングを飾るSE「Kilmister=Old NO.7」は最初に何かイメージがあったりするのですか?

    CIPHER
    最後ですね。

    アルバムの全体の色みたいなのを感じて?

    CIPHER
    いや、好きにやってますね。レコーディングが終わって最後とはいえ、わりと思い付きのままというか。

    そこをMIYAKO(都啓一:key/Rayflower、SOPHIA)さんとディスカッションしながら作り上げていく?

    CIPHER
    そうですね。俺のわがままをカチャカチャやってくれる(笑)。

    そこから2曲目「Harlem Queen Complex」と3曲目「Harlem Queen Romance」と入っていくのですが、これは最初から組曲のイメージだったのですか?

    CIPHER
    そうです。
    SEELA
    この2〜3曲目は自分の中でも曲として斬新というか。“こっちのほうに突入するのか!?”みたいなのがありましたね。
    Tetsu
    おそらくね、プリプロのスタジオで1回か2回やって、それでレコーディングしたんですよ。これが一番スタジオの即席感がありますね。細かいところを決めないで、このまま雑な感じでいこうって思ってレコーディングスタジオに持ち込んだんで。何もないところでドラムを叩くのに適当感はまずいんですけど、はちゃめちゃな感じでいくのがいいかなと思った曲です。
    SEELA
    ベースも音を少なくして、ふわ〜っとした感じになったらええなと思ってましたね。

    ヴォーカル的には囁くような「Harlem Queen Complex」からいきなりテンションの高い「Harlem Queen Romance」へと、歌の世界観はまったく変わりますよね。

    kyo
    「Harlem Queen Complex」のほうはオクターブが下で暗黒の呪文みたいになるんですが、最終的に歌を録る時にそういうかたちに落ち着いたんですね。仮歌の時はオクターブが上だったんですけど、録る時にオクターブ下でって…僕のイメージで言うと、内に秘めているものがモワモワっときて、「Harlem Queen Romance」でボン!と弾けるという。

    CIPHERさんは「Harlem Queen Complex」は不穏な世界で、「Harlem Queen Romance」はそれを弾けさせるようなイメージをしながら作っていったのですか?

    CIPHER
    …どうやったか覚えてない(笑)。
    kyo
    それもD’ERLANGERなんですよね(笑)。例えば、メロディーに対するアプローチをCIPHERとやっていくと、いろんな手法が見つかったりして、そこでイメージも膨らむんですよ。わりと現場作業で最初のイメージから変わっていくものもあったりもして、そこが難しいけど面白いです。そういう意味では、歌入れをしているふたりしか知らないオーケーテイクがあったりするんですよ。出来上がるまでどういったかたちになるか分からないから、それをワクワクしながら作ってるというか。本当に現場作業が多いですね。歌詞がその場で変わることもよくあるし。言葉の持っているリズムや語感の響きというところで変わっていったりするんですよ。
    CIPHER
    “こういう段取りでやろう”とかいうのはもとから糞食らえで、その時のパッションでやってますね。不意に降りてきたら、してやったり感があるもんな。自分でもよう分からへんけど、そういうものが見つかったりするから。そのたびに、負けっぱなしの日々の中でも勝った感がありますね。

    じゃあ、今回のレコーディングはかなり勝ったのでは?

    kyo
    ありがとうございます(笑)。
    CIPHER
    めっちゃ売れますかね?(笑) だるまの目入れなあかんしな。

    だるま?

    kyo
    高崎のレコーディングスタジオで録音したんですけど、そこでだるまをもらったんですよ。
    CIPHER
    向こうはだるまが有名なので、ヒット祈願ってことでいただいて。もう…売れまっせ!(笑)

    「LOVE is GHOST」ですが、この世界を作っているのもkyoさんの声質かなと。

    kyo
    今回CIPHERがこだわってくれたのは、声のトーンなんですよ。キーの中でもパッと明るいトーンになったり、暗くなったりというのをすごくこだわってくれて。曲のイメージにトーンを合わせるというのは、今までの作品の中で一番詰めてやった部分ですね。

    まさに「バライロノセカイ-Le monde de la rose-」や「Everlasting Rose」は、このトーンだからこそ曲が生きるというのはありますね。

    kyo
    やっぱり歌を録る時、自分の中で理解をしようとするから戸惑う部分もあったりするんですけど、そこはCIPHERがジャッジしてくれるので、“なるほど、この曲のこの世界観やこの言葉に合っているトーンだな”っていうのをすごく感じますね。
    CIPHER
    メロディーを紡ぎますけど、kyoちゃんが歌うっていうことを意識してますからね。だから、歌入れの時に“これ!”というものを言ってあげるんですよ。メロディーだけで言うと音符なんですけど、kyoちゃんの声でこのメロディーやから“これや!”というのがあって。それを求めてるんです。そういうのって歌うkyoちゃんにしてみれば、すごい難しいと思う…“そこ違う! そこは白!”って言えたらええねんけど、そんな簡単な話じゃないから。戸惑う部分があるってkyoちゃんが話してましたけど、俺の中には絶対的なトーンがあるので、そこはしっかりと話しましたよ。

    今回はメロディーがすごく強く感じたのは、よりkyoさんの声を意識していたからですかね?

    CIPHER
    いや、これは毎回なんですよ。上手いこと言うとしたら、これが10年目の“今”です。俺は『LAZZARO』の時からそういうつもりでいたし、俺らはそんな中で10年悔しい想いをしたり、負けん気せんかった日もあったりして…まぁ、そんな中を歩んできた10年なので、別に今に始まったわけじゃないし、今できることをやったということでしかないというかね。

    そういう意味では、前作の『Spectacular Nite -狂おしい夜について-』があったから、今回はこういう作品になったと?

    kyo
    本当にその通りだと思います。『LAZZARO』と『J'aime La Vie』は入れ替わることは絶対にないです。復活の時にこのアルバムにはならなかったし、復活の時には『LAZZARO』だったから、今のD’ERLANGERがあると思いますね。
    CIPHER
    当たり前のリアルやな。復活の時が『LAZZARO』だったから『the price of being a rose in loneliness』が生まれて、『Spectacular Nite -狂おしい夜について-』から『J'aime La Vie』に来たっていうのも本当に必然。当たり前のように歩んできてるから。だから、これは今の音です。その順番が入れ替わったら完成しなかった曲があるかもしれない。それは思いますね。

    そこに「MOON AND THE MEMORIES」などの過去の楽曲に負けたくないという想いがあるから、どんどんメロディーへのこだわりも強くなっていっているのでしょうね。

    CIPHER
    だから、こういう再結成というのは厄介なんですよ。これはみんなにちゃんと認識してほしいんですけど、俺らは再結成のやり出しですからね。他にもいろいろ出てきたけど、みんな後乗せサクサクですから(笑)。
    kyo
    いや、でも本当にそうだよ。今を生きる再結成をしているのは僕たちしかいないと思っているんですよ。

    コンスタントにアルバムも出して、ちゃんとツアーも回ってますからね。

    CIPHER
    でもね、新しいものを出したって、結局は『LA VIE EN ROSE』(1989年2月発表のインディーズ1stアルバム)や『BASILISK』(1990年3月発表のメジャーデビューアルバム)には叶わないと思ってる。ノスタルジーも含めた心境っていうのは分かってやってますから。だからこそ、それに向かって勝負を挑んでいる…俺らはずっと自分らに喧嘩を売ってるんですよ。そんな10年ですよ。

    確かに『LA VIE EN ROSE』や『BASILISK』への思い入れは強いし、そこにノスタルジーもありますけど、D’ERLANGERはちゃんと最新作が最高傑作になっていますよ。

    CIPHER
    …本音ですか?

    前にkyoさんにインタビューした時も、D’ERLANGERってライヴを観ると“今が一番カッコ良い”と思わされるし、セットリストに「LA VIE EN ROSE」とかの昔の代表曲的が入ってなくても満足するという話をさせてもらいましたしね。なので、本音です(笑)。

    CIPHER
    嬉しいです(笑)。
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